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人材紹介会社のコンサルタントが語る
第19回 転職後に成功する人、失敗する人

テクノブレーン
八子秀康
2004/4/28

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

 毎年たくさんのエンジニアが何らかの理由で転職しています。さまざまな情報誌などで表題のようなテーマで紹介されているものもあります。今回は「転職した人のその後を追跡する」ことで、「どのような人が転職後に成功し、どのような人が転職後に失敗したのか」を私なりの経験則から分析し、これから転職なさる人の参考になればと思います。

 まず「転職はあくまで新しいスタート。決して転職はゴールでない」ことを念頭に置いてください。

ヒューマンスキルは技術スキルより大切!?

(1)転職後に成功した人
 森山雄次氏(仮名・35歳)は、大学卒業後に約8年間中小のシステムインテグレータ(SIer)でSE/プロジェクトリーダーとして活躍していました。「もっと上流工程を経験してキャリアアップしたい」ために、約4年前に転職し、現在は大手SIerでプロジェクトマネージャとして活躍しています。

 第一印象はさわやかな笑顔と謙虚な物腰を持つ人でした。技術経験や数々のプロジェクトにおける修羅場を潜り抜けてきた経験はもとより、部下や後輩、あるいはクライアントからも間違いなく好かれている人物だと思いました。

 森山氏に「プロジェクトでのトラブルをどのようにクリアしてきたか」を質問した際の回答は、「ち密なコミュニケーションを粘り強く行うこと。それにはまず相手の話を詳しく聞き、次にこちらの意向を資料を基に詳しく説明すること。お互い人間だから誠意を持って話せば、必ず伝わるのではないか」というものです。そして、「できることとできないことを明確に説明する。時には息抜きも大切であるが、常に努力すること」と話していました。

 SEの仕事はクライアントにサービスを提供する面があり、時には「泥臭い」作業を伴います。森山氏はクライアントにも社内のプロジェクトメンバーにも同じように丁寧に接することを心掛けているそうです。「しかめ面をしている人やプライドが高く横柄な態度を取る人は損をしている」と笑っていました。「職場や顧客との関係においてトラブルが絶えないときもあるが、何事も継続してあきらめず謙虚に対応することで、必ず良い結果に結び付く」という信念の持ち主です。

 ある企業の人事採用担当者は、ヒューマンスキルについてこう説明しています。「技術は経験すればすぐ身に付くが、ヒューマンスキルを身に付けるには数倍の努力が必要になる。面接時の第一印象で採用か否かの30%を決めてしまうこともある」。

 謙虚な姿勢は仕事や転職で効果を発揮することが多いのです。すぐには無理でもヒューマンスキルを備えた人物を目指して、日々努力することは可能なのではないでしょうか。そういう私自身も常に心掛けていますが……。

(2)転職後に失敗した人
 三浦敏則氏(仮名・32歳)は、大学卒業後に約6年間大手SIerでSE、プロジェクトリーダーとして活躍し、「もっと自由な社風で、ダイレクトに勤務先に貢献していることを実感しながら仕事をしたい」という思いから、3年ほど前にベンチャー企業に転職しました。

 その1年後にほかのベンチャーに再転職しています。そもそも三浦氏は「組織が未成熟のベンチャーで、いままでの大手企業での経験を生かして急成長させたい」という考えから、ベンチャーへ転職したのです。

 しかし、現実は非常に厳しく、「すべてが整っている大企業」とは違って、「すべてを自分で対応する」ことに疲れているようでした。三浦氏は転職先のベンチャーで働き始めたときから、「以前勤めていた大手SIerではこんなことはしなかった」「前の勤務先の大手SIerならこうするね」などの発言を繰り返し、その結果として社内の反感を買う一方、自分でも疎外感を感じてその後再び転職することになったのです。

 これでは一体何のためにベンチャーへ転職したのか分かりません。新しい勤務先では、ある程度はその企業文化や仕事の進め方を受け入れ、会社になじむことが必要ではないでしょうか。

年収アップか年収ダウンか

(1)転職後に成功した人
 安田健氏(仮名・30歳)は、5年間中堅のソフトハウスでSEとして活躍していました。もともとの年収が低く、結婚後子どもが生まれたことを契機に、「もう少し年収をアップさせたい」という理由で同業他社へ転職しました。3年がたち、順調に成果を出して着々と年収はアップしています。

 安田氏は転職時に「目先の収入の大幅アップよりも、まずは収入アップできる技術を身に付けたい」と考え、わずかな年収アップで転職したそうです。目先の収入アップではなく、「収入アップできるようになるためにはどうすればよいか」という視点です。

 転職後に一生懸命に努力し社内でもメキメキと頭角を表し、転職後3年で転職時の年収を50%程度上回っています。転職時に大幅な年収アップを狙わず、まずは年収アップできるだけの技術力を身に付ける。その視点で会社を選んだことが、現在の年収に結び付いているわけです。

(2)転職後に失敗した人
 今川高志氏(仮名・28歳)は、大学卒業後にベンチャーで3年間働き、その後大手SIerに転職しました。転職時の企業からのオファーは前職の年収を50%程度上回り、即答で入社しました。一般的にはこのようなケースを「ステップアップ転職」といいます。

 しかし、今川氏の転職先での評判は芳しくなく、ローパフォーマーのらく印を押され、転職後2年目には大幅に年収がダウンしました。ベンチャーからネームバリューのある大手SIerに好条件で転職できたことに満足し、いままでのような努力を怠ってしまったのです。そして、入社から3年後、中堅SIerに転職したということです……。

 キャリアは人の歴史そのものです。キャリアに良しあしはありません。しかし、(自明のことかもしれませんが)謙虚な姿勢で努力し続ければ、間違いなくポジションや収入は後からついてきます。

 その結果、有意義なキャリアが形成され、仕事にも満足できるのではないでしょうか。転職に限らず、その人が成功するかどうかは、技術力だけではなくヒューマンスキルが非常に重要です。いい意味での協調性と忍耐力が良い結果をもたらします。自由や個人主義的な風潮が横行する昨今ではありますが、成功している方々の例を見ると、日ごろからヒューマンスキルに磨きをかけることも大切ではないかと思います。そして、転職はゴールではなく新たなるスタートと考えてください。


筆者プロフィール
八子 秀康(やこ・ひでやす)●大手金融機関、ドイツ系ソフトウェアベンダなどを経て、現職でスカウトを展開中。人材の方々と直接会うことに重きをおいて活動。キャリアプランからライフプランまでのアドバイスを行い、特にITコンサルタント職や大手SIerへの実績を持つ。@ITジョブエージェントを通じて@IT読者の転職支援も行っている。




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