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人材紹介会社のコンサルタントが語る
第21回 “書類選考NG”にもめげないモチベーションアップ法

ワークス・アンド・アソシエイツ
石丸隆範
2004/6/23

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

内定から3カ月がすぎ、希望のポジションが消失……

 学校卒業後の新卒での4月一斉入社と違って、中途入社のタイミングというのは年間を通してさまざまにあります。

 年度末で円満に退職手続きを済ませての4月入社もありますが、夏・冬のボーナス支給後を見定めてからというケースもあります。中途採用活動を行う企業からすると、採用プロセスが進み、内定・オファーを出して納得いただければ、すぐ来週にでも入社してほしいというのが本音です。

 そういう意味では、人と企業のベストタイミングは双方が納得しあえる時期が重要です。例えば内定をもらってから3カ月が経過したため、そのポジションが埋まってしまったというケースも多々あります。

 そのベストタイミングで転職し、希望どおりの転職をするには、いくつか心掛けておくべきポイントがあります。例えば、「なぜいま転職しなければならないのか?」「本当に転職したいのか?」ということなどです。転職理由は人によってさまざまですし、その切迫度合い、転職に対する“温度”も違います。

 ただ、キャリアアップのために転職したいのなら、そのモチベーションを維持し続ける必要があります。その点を転職事例で紹介したいと思います。

転職時の「不安や焦り」とどう対応するか

 転職とはこれまで数年間、あるいは10年以上働いて実績を出し、評価を得た会社(コミュニティ)から別の会社へ移り、そこで新たに信頼を獲得し、実績も挙げなければなりません。それは大変な「不安や焦り」を伴うものです。

 ただ不安や焦りだけではなく、現職では経験できない仕事に携われる、またはスキルが身に付く、といったメリットがあります。さらなる自己成長にもつながるという意味では大きな期待感もあるはずです。

 そういった不安と期待を感じながら転職活動を続けるには、これまで自分が経験して身に付けてきたスキルを再度棚卸しし、それに足りないものは何か、身に付けたいものは何かを具体的に認識し、不安と焦りの中でも揺るがない軸を持つことが大切です。

 また、自分の経験したことが他社でどう評価されるのか、希望するワンステップ高い仕事を任せてもらえるのか、などを確認しておく必要があります。実際の書類選考や面接では、採用企業が上記のことを主眼に職務経歴書に目を通し、面接でも質問してきます。

 企業は面接で「これまでどんな仕事、プロジェクトで、どんなスキルを身に付けてきたか?」「どんな役割をこなしてきたか?」「今後、より責任の重い役割を任せられるのか?」などを確認してきます。

 企業としては即戦力で活躍してもらいたいのは当然ですが、経験以上に、より責任の重い役割を中途採用者に任せようという場合には大きなリスクを伴います。そのため、慎重にならざるを得ないのです。

外資系ネットワークインテグレータの内定獲得

 先日、相談に来た方で志望企業の内定を見事勝ち取ったケースを紹介します。

<Case>
矢吹賢吾さん(仮名:31歳)・国公立大理系卒業

 大学では土木工学を専攻し、卒業後は公務員として市役所・県庁の土木課に7年勤務していました。公共事業などの廃止、削減で将来に不安を抱き、まったく畑違いのIT、特にネットワークの技術者を目指しました。未経験採用をしており、クライアント企業で派遣社員として働ける会社に入社。主にネットワーク・サーバの安定稼働や維持、サポートやトラブルシューティングを担当していました。

 業界経験が短いので、独学で勉強して大手ネットワークベンダの公認資格を次々と取得。より上流工程での仕事(ネットワーク設計・構築)を目指していたのです。

 本人の希望は、「直接エンドユーザーと交渉してネットワークのデザイン・設計・構築、将来的にはそのようなプロジェクトのマネジメントをできるようになる」というものでした。

 大手のネットワークインテグレータに10社以上応募しました。年齢と経験とのバランスを考えると、書類選考で断られるケースがほとんど。書類選考で落とされたのは、エンジニアとして経験不足という理由からでした。特に設計や構築領域でのプロジェクトのアサイン経験が短かったからです。

 1社だけ外資系の大手ネットワークインテグレータから内定を獲得できたが、1点気になるところはその会社での職務内容。サポートやトラブルシューティングが中心だったからです。

転職後の短期間で高い評価を得る

 サポートやトラブルシューティングの業務は、前職で3年ほど経験していました。より上流工程でのネットワークの設計・構築、またできればリーダー的ポジションでの転職を考えていた矢吹さんにとっては、即座にそのオファーをなかなか許諾することはできませんでした。

 そこで、当初の目標、希望職務に携われる企業に、これまでの職務経験(サポート・トラブルシューティング)で入社し、そして転職後に実績を出して社内で活躍のフィールドを広げることを考えたのです。

 内定を受けてから悩んだ末に転職を決めました。その理由は、「入社後のパフォーマンス次第で、より上流工程、かつ責任あるプロジェクトにも携われる」という条件を提示されたからです。(どの企業でも同じと思いますが)高いパフォーマンスを挙げられる人材には新しいチャンス、本人の希望する職務が与えられやすいものです。矢吹さんのケースは、その典型といえるでしょう。

 矢吹さんもそのことを十分に理解し、転職後の短期間で高いパフォーマンスを挙げ、社内でも高評価を勝ち得ました。現在も職務のフィールドを広げるために、日々エンジニアとして奮闘中とのことです。

転職のモチベーションを下げる「3つの要因」

 私は約3カ月間、矢吹さんの転職活動をサポートしました。いろいろな企業で「経験不足」を指摘されましたが、これまで経験した業務で実績を出し、社内でのステップアップを目指していく姿勢が、今回の矢吹さんの転職の成功につながったと感じています。

 「希望する企業への入社する」という目標達成へ向けて、どのようにモチベーションを維持するのか、を体感でき、サポーターとしても大変意義ある経験ができました。

 今回のケースでは、さまざま理由によって、矢吹さんは転職活動を続けるモチベーションが下がりそうになりました。具体的にいえば、以下の3つです。転職活動のプロセスでよくあることなので、思い当たる方もいるのではないでしょうか。

(1)志望企業から書類選考の段階でNG
(2)これまでの経験と企業が求める経験とのギャップ
(3)内定企業の評価(希望とは違う職務で内定をもらった)

 こうしたケースに遭遇したら、その都度、自己認識を客観的に行い、志望する企業、職務、ポジション・待遇などがかけ離れていないか、すべての希望を転職と同時に満たそうとしていないかを考えてみましょう。

 すべての希望を一気に解消できるような「2ステップ」「3ステップ」アップの転職は、逆に自分に負担をかけてしまい、モチベーションをダウンさせる結果を引き起こしかねないのです。ましてや、高い目標を掲げたばかりに、入社後に自信を失ったり、仕事へのモチベーションを下がったりすることもあり得るのです。

 転職で解消すべき優先課題の整理や将来的な目標として2ステップ、3ステップアップするために、現在の自分にとって、何がワンステップアップなのか……。それを再認識することによって、転職活動にも前向きに臨めるようになるのではないでしょうか。


筆者プロフィール
石丸 隆範(いしまる・たかのり)●1970年生まれ。大学卒業後求人広告代理店に入社。約6年間勤務したのち大手外資系コンサルティング会社のキャリアコンサルティングサービスの立ち上げに参画。2002年9月のワークス・アンド・アソシエイツ設立当初より、コンサルティングファーム、IT業界、事業会社での企画部門を中心に紹介事業に従事。プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー認定キャリア・コンサルタントの資格を持つ。@ITジョブエージェントを通じて@IT読者の転職支援も行っている。





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