人材紹介会社のコンサルタントが語る
第22回 ボーナス時期の転職で注意すること
キャリアデザインセンター
野村健次
2004/7/23
求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。 |
■ボーナス退社につきまとう“大きな悩み”
例年ボーナスが支給される時期に皆さんが悩む点。それが「ボーナスをもらってから辞めるか」、それとも「ボーナスをもらわずに辞めるか」という点でではないでしょうか。
実際、転職先は何とか決まったものの、入社時期の調整に悩む方は多いようです。ただ、転職先がほぼ決まり、内定書をもらう時点になってからアレコレ悩んでも、なかなかうまくいかないことが多いようです。あらかじめ計画を立てて転職活動を始めることをお勧めしています(本当のところをいえば、重要な転職をする時期にボーナスのことなどはあまり気にしてほしくないのですが……)。
また、ボーナス支給時には応募者だけでなく、企業の人事担当者も、ボーナスに関して悩みを持つことがあるようです。例えばボーナスの支給日などについて……。そのため、転職先の人事担当者と、入社時期を交渉することは難しいことといえます。以下、事例を基に紹介します。
■ボーナスをあきらめざるを得ない状況に……
ボーナス退社に関することで、一番、起こり得ることは以下のような事態です。
<Case1>
内定をもらった新しい会社からは、「できるだけ早く入社してください」といわれ、その要望を受け入れるために、現職でのボーナス支給を目前にしてあきらめなければいけないという状況です。
このような事態が起こる原因としては、皆さんが“受け入れ側の意思”を理解していないことにあるといえるでしょう。確かに応募者の選考は、書類選考や面接などを含めると、意外に時間がかかるものです。そのため、応募者は「これだけ採用プロセスに時間がかかったのだから、入社時期も考慮してくれるだろう」と思いがちです。
しかし、企業は内定を出すと決めたら「すぐにでも来てほしい」というのが本音です。応募者にしてみれば、「あと数日待てばボーナスをもらえるのに……」というときなどは、泣けてくることでしょう。そんなときに心から納得して、次の仕事に全力を注ぐためには、どのような心構えが求められるのでしょうか。
■「なぜ、すぐに入社してほしいのか」を質問する
そのようなときは、先方の人事担当者に「いますぐ入社してほしい」という理由を思いきって、聞いてみるといいのではないでしょうか。
「これからスタートするプロジェクトメンバーになってほしい」「同じ時期に入社する人がいるので一緒にスタートしてほしい」……などの事情を説明してもらえると思います。自分1人でアレコレ悩んでいないで、率直に理由を聞いてみた方が、転職先の事情も詳しく知ることができ、結果的にプラスのことが多いといえます。
こうした理由から、私どもがボーナス時期の転職をサポートする場合、事前に「先方が希望する入社時期の理由」などをヒアリングし、応募者にお伝えするようにしています。
転職して新天地に移れば、ボーナスには替えられないような「良い経験・良いキャリアステージ」が待っているかもしれません。できるならば、良いスタートを切る方が、転職後にもいい影響を与えるのではないでしょうか。
■ボーナスをもらってから転職する方法とは?
そうはいっても、「それでもボーナスをもらってから転職したい」という方は、特にスケジューリングを重視して転職活動を行う必要があります。数社に応募してから、最終的に転職先を選ぶような場合、各社によって選考にかかる時間はまちまちです。そして(応募者にとって都合良く)内定が出そろうというのも難しい。情報収集の時間も含めて、次の会社への入社希望時期の半年くらい前には、転職活動を始めるといいでしょう。
さて、次に起こり得ることは、新しく入った会社でのボーナスについてです。以下、ご説明します。
<Case2>
まずは、初回のボーナスは出ないこともあるので、この点を必ず確認しましょう。ボーナスの支給月は6月と12月の会社が多いですね。その評価の対象の期間は企業によって違うとは思いますが、よくあるケースとしては以下のとおりです。
・6月ボーナスの評価対象期間……前年10月〜3月
・12月ボーナスの評価対象期間……4月〜9月
つまり中途入社の場合は、入社後最初のボーナスは満額支給されないことが一般的です。例えば上記の条件で、60万円のボーナスが12月に支給される場合、
・5月入社……6分の5カ月分で50万円の支給
・6月入社……6分の4カ月分で40万円の支給
内定書には「理論年収」が書いてあっても、実際の年収は上記の理由により理論年収より少ないことがあるので注意しましょう。転職した初年度の年収がダウンしてしまうことが多いのはこのためです。
■ボーナス転職で心掛けておくべきこと
上記のように、ボーナスの評価対象期間を考えると、少し無理してでも早めに入社した場合、転職先の会社では、いくらかボーナスで得をすることもあり得ます。
ボーナス時期の転職についての結論は以下の2通りになります。
(1)自分の会社のボーナス時期を想定し、あらかじめ計画的に転職活動を行う
どれくらいの期間がかかるかなど、前もって人材紹介会社などを通じて確認しましょう。もし内定を獲得したら、皆さんが思っているほど次の会社は悠長には待ってくれないものです。
(2)ボーナスへの思いは断ち切り、あくまでも次の会社重視で突き進む
ボーナスに対する未練を次の会社に見られてしまうのは、あまりカッコイイものではありません。次の会社に入社時期の理由を聞き、それに納得して新天地で頑張りましょう。
筆者プロフィール |
野村 健次(のむら・けんじ)●1972年生まれ、広島県出身。大学卒業後、大手住宅メーカーにて個人向け営業を4年担当。その後転職した大手化学製品メーカーで法人営業を1年経験した後、(株)キャリアデザインセンターへ転職。「自分自身、悩みの連続だった」という転職経験を生かし、人材紹介事業部にて営業とキャリアカウンセリングを担当。ソフトウェア・IT系ベンダなどを中心としたIT業界を得意とする。@ITジョブエージェントを通じて@IT読者の転職支援も行っている。 |
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