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ITエンジニアの転職現場から

人材紹介会社のコンサルタントが語る
ITエンジニアの転職現場から

第23回 転職は十分な情報と知識を持って決断を

リーベル 代表取締役
石川隆夫
2004/8/20

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

転職すべきか迷ったとき

 「転職をすべきか、いまの会社にとどまるべきか」。多くの方がこのような悩みを抱えているのではないでしょうか。実はこうした悩みの解決にそれほどの決断力は必要ではありません。むしろ必要なのは次のような情報です。

  • 何のために転職するのか。それは本当の理由か。自分をごまかしていないか。
  • 転職で目的とすることが達成できるのか。その確度は。
  • 転職で失うものはないか。リスクとしてどのようなことが考えられるのか。その最大のリスクが現実化したとしても、それを受け入れる覚悟はあるか。

 上記のことを真剣に考えれば、答えは自ずと表れます。私たちはこのような相談では、転職者の真の目的、心情を聞くのです。そして私たちの持っている企業情報、市場環境情報、そして経験を基にしたアドバイスなどを提供し、一緒に考えます。転職するかどうかの決断は、最終的に本人がするものです。その際に、転職した方が良いと思ったときは、それを実行する勇気が必要です。転職しない方が良いと思ったときは、現実の世界を受け入れる気持ちが必要です。

 しかし情報が少ないと、転職の可否を判断できなかったり、判断を誤ることがあったりするのです。

 典型的な例として、次のような例を挙げておきましょう。大企業に勤めていた30歳の方が、会社の仕事の進め方に対して不満があって、ベンチャー企業にあこがれて転職。しかし、転職して5カ月もすると前職とのあまりの違いにあぜんとして、とても長くいられないと、再度転職活動を開始したのです。

 この方は、前職の良い部分を見ず(気付かず)に転職し、転職後に初めて前職の良さと失ったことの大きさに気が付いたのです。これは大企業にいたためにベンチャーの社風、厳しさをあらかじめ理解することができなかったこと、ベンチャー企業などに関する情報収集が不十分であったことが原因です。

情報・知識不足による現実との乖離(かいり)

 「コンサルタントを目指したい、そのために転職したい」。エンジニアの転職理由としてよく挙げられることが多いものです。しかし、現実として不可能な夢やプランを持つ方が多いようなのです。その理由として、次のようなことが挙げられます。

  • コンサルタントの仕事を正しく理解していない。コンサルタントという言葉の響きでしか仕事を理解していない。
  • コンサルティングファームがコンサルタントに求める経験や知識・能力を具体的に理解していない。
  • 業界や市場を理解していない。

 例えばさまざまな開発を経験し、その積み重ねが多くなるとコンサルタントになれると考える誤解。これは知識の浅い方ほど多いようです。コンサルティングという仕事で、実際にビジネスが成り立っている(お金を頂いている)会社は意外と少ないのです。それがきちんとできているのは、コンサルティングファームと呼ばれる会社を中心としたほんの一握りです。その会社のコンサルタントになる道はかなりの狭き門です。

 また、中小企業を相手に将来はコンサルタントを、と考えている方も多いのですが、これは私見ですがビジネスとしては難しいと考えています。今回はその理由に触れませんが、いずれ違う機会にお話ししたいと思います。

 ここでの問題も結局、転職を希望される方が、コンサルタントという仕事、業界に関する情報の質と量をあまり持っていない(少ない)ことに行き着きます。そのため、コンサルタントに関して正しい理解をしていない方が多いわけです。

変えられること、変えられないこと――それを理解する

 転職を考える際に重要なことは、決断や判断をするに十分な情報・知識の収集です。

 業界を知り、転職市場を知り、そして自分を知る。そして、問題解決の方法として行動を起こすときには、自分が変えられること、変えられないことを正確に理解し、転職によって変えられると思ったときには勇気をもって挑戦することです。転職でも変えられないと思うのであれば、悩まずに受け入れる努力をすることです。例えば、現在の会社の人間関係が原因で転職を考えても、転職先に同じような状況がないとは限りません。このような場合は転職では解決できないと考えるべきです。対策は転職ではなく、それを受け入れたうえで、別の解決方法を考えるべきです。

 転職は人生の決断の中でも大きな転機です。迷ったり、悩むのも重要ですが、それだけでは一歩も進みません。まずはできるだけ業界、転職市場を理解しましょう。しかも、ミクロ的に見るのではなく俯瞰(ふかん)的に全体を見ることができるように情報収集しましょう。エージェントの利用も1つの方法です。


筆者プロフィール
石川隆夫(いしかわ たかお)●1949年福島県生まれ。東芝入社後、コンピュータおよびその関連機器の設計・開発を経て、本社のコンピュータ・ネットワークの商品企画、海外事業の立ち上げ、マーケティング、広告、広報などを担当。幅広い業務経験と業界各社・動向の深い知識が強み。2000年にリーベルを設立、現在に至る。@ITジョブエージェントを通じて@IT読者の転職支援も行っている。





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