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ITエンジニアの転職現場から

人材紹介会社のコンサルタントが語る
ITエンジニアの転職現場から

第24回(最終回) 「こんなはずでは……」と後悔しない転職を

アデコ
山内宗和
2004/9/22

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

転職にはリスクが……。だから不安

 転職にはリスクがつきものです。そのために、転職を考えてもちゅうちょしてしまう人が多いのではないでしょうか。でも安心してください。そんな心配を解消できる、簡単な方法があるのです。それは、内定後に面談の機会をつくることです。そこで疑問点やあいまいな点などを確認し、転職のリスクを下げるのです。今回はそんなお話をさせていただきます。

 転職して2〜3カ月したころ、再度転職をしたいと考える人に会うことが多いのです。一番転職のリスクを痛感する場面ですが、そういった、いわゆる“転職失敗組”の方と話をしていると、ある傾向があることに気が付きます。

転職で失敗した人の共通の傾向

 それは多くの方が、「入社した会社にだまされた」「面接の内容と実際の仕事が著しく違っていた」「聞いていた条件、待遇とは違っていた」という発言をしていることです。もちろん、中には本当にひどいケースもあります。が、多くの場合は採用する会社が悪意を持っているわけではありません。ほとんどは誤解であるケースなのです。そのため、入社前に防ぐことができるケースが多いように思います。そんな失敗をしないためにはどうしたらよいのでしょうか。それがわれわれのようなエージェントを利用して、内定後の面談を活用することなのです。

(1)求人の職種は、必ずしもその求人の仕事内容を表しているわけではない

 求人情報を見ると、必ず職種欄という項目があります。例えば「ITコンサルタント」、などと表記されています。応募者はITコンサルタントという表記を見て、「コンサルタントへのキャリアアップを考えていたので、この求人に合格すればコンサルタントになれるに違いない」と思って応募されるのだと思います。もちろん応募者にとってこの行為は正しいことです。しかしその言葉を信用し、鵜呑(うの)みにしてしまうとそこに落とし穴があるのです。

 企業側の立場から考えてみたいと思います。例えばAという会社が、より上流の仕事を受注できるような体制を整えようとして中途採用を実施することになりました。A社の理想はSEレベルというよりはもう少し上流のコンサルテーションを行える人材を採用して、その事業部を立ち上げることになりました。この場合、求人の職種欄の表記は「ITコンサルタント」になるでしょう。

 また、幅広く上流工程の経験があるエンジニアを採用するために、「ITコンサルタント」と「アプリケーションエンジニア」という求人を同時に出すケースがあります。外から見ると2つの職種で募集をしているようですが、採用側は広く応募者を集めるためのキャッチコピーとして使用しているのです。ということは、この職種に応募したとしても、応募者が考えているようなITコンサルタントという仕事ができないケースも考えられるのです。

 つまり、求人の職種は集客用のキャッチコピーであって、必ずしも仕事の実態を表すものではないのです。

 こういった状況を防ぐには、冒頭に申し上げました内定後の面談を有効的に活用することが一番の方法です。例えば、ITコンサルタントになることを望んでいる転職希望者の場合です。

  • 自分の配属先と組織上での位置付け、配属先が背負っているミッションと、配属先の人数構成などはどうなっているのか
  • その会社にとってITコンサルタントという職種は、どういった仕事を行う職種だと定義しているのか
  • そもそもその会社にはITコンサルタントと呼ばれる人は存在するのか
  • ITコンサルタントを必要とする仕事を受注できているのか(会社の売上高と従業員数を確認できれば大体の想像をつけることはできます)

 こうしたことは面接では聞きにくいからこそ、内定後の面談で確認する必要があるのです。

(2)「会社のイメージ=自分の仕事内容」になるとは限らない

 「大規模案件の経験を積みたい」というスキルアップを考えて、転職活動を始めたBさん。いままでBさんは中規模以下の設計・構築業務しか経験がありません。転職相談でエージェントに行くと、担当のコンサルタントから「大規模案件に強い」会社だと紹介され、ある独立系大手ネットワークインテグレータに応募しました。

 経験不足を心配していたのですが、非常に好意的な面接が繰り返され、結果は見事に合格。これで自分の希望がかなうと浮かれてしまったBさんは、その会社が「大規模案件に強い」ので、自分もそうした仕事ができると思い込んで入社を決めました。

 ところが……。入社して配属されたのは、中小企業を専門に担当する部隊。転職の目的がまったく果たせない状況になってしまい、「だまされた」と感じる結果となってしまったのです。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。

 実はその会社は、今後も売り上げを成長させていくためには、いままで弱かった中小企業の開拓が必須条件であると判断し、水面下で中小企業を専門とする部隊を立ち上げる準備をしていました。そんなときに必要なスキルを兼ね備えたBさんが応募してきたので、これ幸いとBさんを採用しました。

 つまり会社側は、最初から新しい部隊での採用を考えていたのです。では、なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。それはお互いの思い込みが原因なのです。新規の部署を立ち上げるなどといったような場合、それは極秘事項であり、対外的に話をできないケースがあります。そこで会社側ははっきりといえないので、面接でにおわすような発言しかできませんでした。しかしBさんは、「大規模案件」に携われるものと思い込んでいたため、そういった会社からのサインを見逃してしまったのです。

 つまり、会社がいままで主力としている事業内容に沿った仕事に、必ずしも自分が就けるということではないのです。

 こうした事態になるのを防ぐにも、内定後の面談を有効に活用することが一番の方法です。

  • あこがれの会社から内定が出ても舞い上がらず、仕事内容をしっかりと確認してから決めること
  • 経験者採用なのだから、会社側は必ずいままでの経験を評価して採用をしているはず。自分のどの経験が買われたのか、何をやることを期待されているのかを必ず確認すること
  • 自分の配属先、その配属先のミッションが何なのかを確かめること

などといったことを確認する必要があります。

(3)「面接官の印象=会社の社風」とは限らない

 自由闊達(かったつ)な、明るい雰囲気の会社に入りたいという希望でベンチャー企業を中心に応募していたCさん。面接官の印象がとても良かったので、仕事内容に少し不満を感じていたものの、この面接官の下で働きたいと強く思うようになり、入社を決意しました。

 しかし、入社してみたら、その面接官の下には、創業以来エンジニアの部隊を仕切っている、超ワンマンなリーダーが存在していました。そうです。彼の希望している環境とはまったくかけ離れた雰囲気だったのです。そうなると、妥協した仕事内容への不満が、どうしても我慢できなくなりました。そして今回の転職活動では何も希望をかなえることができなかったと悔やむ結果となってしまったのです。

 なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。面接官は役職の高い人が多いので、実際に一緒に仕事をする人ではないケースが圧倒的です。つまりCさんは仕事の環境がどうなるのかをまったく確認することもなく、勝手にその面接官の下で仕事ができるものだと思い込んでいたのです。

 こういった状況を防ぐにも内定後の面談を有効に活用することが一番の方法です。この場合は特に面接では質問できない内容ですから、内定後でしか確認できません。

  • 会社の組織図を確認し、本当に面接官の下で働くことができるのか確認すること
  • 同僚や直属の先輩、つまり一緒に仕事をする人たちに会って、話をする機会をつくってもらうこと。ある程度の社風は感じられると思います

 内定を取ったら転職活動が一段落ではなく、内定後が本当に自分の確認したいことを聞くことができる段階であるのです。

内定をもらった後が勝負

 いままでお話ししたことは、面接ではあまりしつこく質問をしない方がよい内容もかなり含まれています。質問にはやはりタイミングがあります。面接はまだ選考途中ですので、心証を悪くするような質問は控えた方がよいでしょう。

 しかし「内定」となれば、その対象であるあなたに対して、むげな態度を取るはずがありません。面接という限られた時間の中では聞けなかったこともあるでしょう。そういったものすべてを確認する場を設定するのです。確認内容によっては、先方の人事の方だけで足りるケースもあれば、現場の人と話をする必要があるケースもあります。

 何を悩んでいて、何が入社する決断をするうえでのネックになっているのか。入社するかもしれない会社に対してはなかなかいいにくいことですので、エージェントを利用して自分の悩みを伝えてもらい、その悩みを解決するための面談を設けるのです。この最後の詰めこそが、私が考える、入社後「こんなはずじゃなかった」という失敗を防ぐ最大の方法です。頼りになるエージェントであれば、最後の詰めをどのように進めたらよいのか、きっとよい方策を考えてくれるものと思います。内定後の面談がいかに重要であるのか、ご理解いただけたと思います。


筆者プロフィール
山内宗和(やまうちむねかず)●某一部上場企業で営業職を経験した後、商品企画部にて、新商品開発やパッケージデザイン、広告宣伝戦略、知的財産権(商標)管理、製販調整などを経験。その後キャリアコンサルタントという仕事に興味を持ち、技術者に特化したスカウト型の人材紹介会社のスカウトコンサルタントとしてこの世界に入った。





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