第1回 人材紹介会社の基本を理解しよう
テクノブレーン
キャリアコンサルタント
八子(やこ)秀康
2004/12/1
■人材紹介会社を知っていますか?
「料金はいくらですか?」。これは筆者が初めて人材紹介会社を利用したときにその担当者(コンサルタント)にした質問です。同じ質問を、人材紹介会社に勤めるようになってから私は何度となく受けています。実際には、人材紹介会社は転職を希望する方から料金はいただいていません。
ITエンジニアにとって転職は当たり前の時代です。転職市場は拡大し、人材紹介会社を利用する方も増えています。しかし、意外に人材紹介会社については、先ほど述べたような基本的なことも知らないITエンジニアは多いようです。
そこで本連載では、人材紹介会社とは何かを紹介し、それをどう利用すればいいのかについて解説したいと思います。
■人材を採用する制度に変化
人材紹介会社を語る前に、現在の転職市場について説明しましょう。次の表のとおり、年々人材の流動化は激しくなっていることが分かります(図1)。
図1 労働の異動が年々活発化していることが分かる(厚生労働省Webサイトの「雇用政策の課題と当面の展開」」より引用)。2002〜2006年は今後の推計 |
さて、筆者は現在40歳です。ちょうどバブル期に大学を卒業し、「一生一企業に勤めて部長くらいまでにはなりたい」と思って大企業に入社し、「寄らば大樹時代」をおう歌しました。つまり、新卒時に入社した企業によって人生が決まるという時代だったように思います。そしてそこからは、競争はあるとはいえ、基本的には年功序列制度によって年々給与が上がる、といった時代でした。
しかし、バブルの崩壊とともにこうした時代は終わりつつあります。企業は年功序列よりも実力主義、成果主義へとかじを切ったのです。
これは、現在の企業が置かれている環境に大いに関係があります。十数年前と比べて企業は明らかにスピード(Agility)を求められています。企業が新たに事業を起こし、育てるには5年程度かかりますが、事業や企業を買収すれば、新規事業は理論的にはすぐ立ち上げることが可能です。これは人材の場合も同じことです。企業が求めているのは即戦力あるいはなるべく早く戦力として事業に貢献できる人材です。事業部でいえば事業や企業の吸収で、人材でいえば中途採用なのです。
■現在の人材採用におけるプロセス
企業は自社のWebサイトなどでの公募や、マス媒体(新聞、雑誌、転職サイト)などへの求人広告で人材を募集します。企業の人事部門の方々は、日本中のさまざまな人材からのアプローチに対応しなければなりません。企業が「オープン系でJava開発の経験がある業務アプリケーションSEが至急ほしい」と希望して広告を出しても、コンピュータの操作経験のない人材からもアプローチを受ける場合があります。その方々は自社の社会的意義も考慮し丁寧に対応しなければなりません。人事部門の方々の労力は計り知れないものがあります。そのため、求人企業から「採用活動の効率化」というニーズが生まれます。そこで人材紹介会社の出番です。人材を採用するプロセスは一般的には以下のとおりです。ほかのプロセスで対応する企業もありますので、下記はあくまで一般的な例です。
- 求人広告などに対してアプローチのあった人材を、企業人事部で書類審査する
- 人事部門がOKであれば、現場に職務経歴書を照会
- 現場が会ってみたいと返答すれば、スケジュールを調整し面接をセッティング
- 人事部門あるいは現場による1次面接
- 判定を下し、判定結果を人材に通知
- OKであれば次の面接スケジュールの調整
- 現場あるいは人事部門の次回面接
- 判定を下し、判定結果を人材に通知
上記のプロセスの中では、(1)の書類審査がかなり大変なのです。先ほど述べたように、企業が求める人材だけが応募してくるとは限りません。その結果、企業が希望する、あるいはそれに類似する人材が、多くの応募者の中に埋もれてしまい、なかなか見つからないことがあります。また、採用に時間と労力が掛かり過ぎることもあります。
■人材紹介会社を利用する場合のプロセス
求人企業から見ると、人材紹介会社は企業に人材を紹介する、つまり上記プロセスの(1)と(2)を代行するような役割が期待されているのです。ほかにも特殊なスペックの人材募集や緊急の人材の募集などにも人材紹介会社を利用した方が効率がいい場合があります。
では、求職者が人材紹介会社を利用する理由、メリットは何でしょうか。結論は的確な情報の提供を人材紹介会社から受け、転職活動をスムーズに進行させられることではないでしょうか。そもそもIT系のエンジニアやその関連の職務を遂行なさっている方々の悩みの1つに「忙しくて自分の時間がなかなかなない」ことが挙げられます。そんな中でいろいろな背景や理由で転職を希望する方は読者の中でも多いと思います。しかも情報化の流れはますます速まり、あふれる大量の情報の中で的確な情報提供を受けることはかなり難しいと考えられます。弊社は「スカウト型人材紹介会社」ですので(人材紹介会社の業態については次回に論じます)、「自身の市場価値」について興味を持っている転職意思の低い方にもお目にかかりますが、そのような方々が最も興味のある事柄には「転職市場動向について」が挙げられます。求人は景気動向や技術動向に左右されます。従って常に流動的です。以下は弊社における人材の皆さまへのフォローのプロセスです。人材紹介会社によって違いもありますが、下記はあくまで弊社:テクノブレーン社の場合です。
- 人材の方々と面談し、情報提供しながら職務詳細や志向・希望を伺って、キャリアビジョンについてアドバイス
- 職務経歴書の作成についてお手伝いやアドバイス
- 案件の提案・説明・情報提供
- 書類審査の代行
- 結果の通知と、面接スケジュールの調整・仲介
- 面接事前情報提供
- 結果の通知と次回面接への対応アドバイス・情報提供
- ご判断のための情報提供
- そのほか
このように、転職活動はそう簡単ではありません。人材にとっては人生を左右する大きなイベントであり、また企業も重大な決断をしなければなりません。そこで人材紹介会社を利用し、さまざまなサポートサービスを受けることで「的確な活動による効率化」のメリットを享受いただけるわけです。
お忙しい方やプロの意見を聞いてみたい方、さまざまなサポートサービスを受け、適切な転職活動をしたい方は、ぜひ人材紹介会社をご活用ください。
次回は人材紹介会社のビジネスモデルや業態の違い、人材紹介会社を選ぶポイントを解説する予定です。
筆者プロフィール |
八子(やこ)秀康●大手金融機関、ドイツ系ソフトウェアベンダなどを経て、現職(テクノブレーン キャリアコンサルタント)。キャリアプランからライフプランまで幅広いアドバイスを行う。特にITコンサルタント職や大手システムインテグレータへの転職支援の実績は豊富という。 |
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