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転職で人材紹介会社をうまく利用するコツ

第2回 人材紹介会社のビジネスモデルを知る

テクノブレーン
キャリアコンサルタント
八子(やこ)秀康
2005/1/7

人材紹介会社の区分

 前回(「第1回 人材紹介会社の基本を理解しよう」)は、人材紹介会社の存在意義と背景について説明しました。今回は人材紹介会社のビジネスモデル――仕組みや業態の違いについて説明いたします。人材紹介会社を有効活用いただくためのアドバイスになればと思います。転職は人生での重要な分岐点です。人材紹介会社について理解していただき、大切な転職のパートナー選びに活用してください。

 人材紹介会社は大きく分けて登録型とスカウト型の2種類あります。

(1)登録型:案件のマッチング

 登録型は、主に転職を希望している人材(求職者)の方が、自らの情報(履歴書や職務経歴書)を人材紹介会社に登録して、その結果から最も適した求人案件の斡旋(あっせん)を受けるタイプです。最近ではWebサイトで登録を行うことが一般的です。その後、キャリアコンサルタントと会い、求人案件を紹介してもらいます。どちらかというと、すぐに転職したいという方に向いています。

(2)スカウト型:ヘッドハンティング

 企業から求人要件を受け、要件に見合った人材を探し、人材の方にキャリアコンサルティングを織り交ぜて、転職のサポートをするタイプです。スカウト型は、多忙なために転職活動の準備が不足しそうな方、コンサルタントからの密なサポートを受けたい方に向いているかもしれません。

 ほかにも「アウトプレースメント」という、リストラを行う企業の依頼を受けて転職の支援をするタイプ(一般的には個人が登録を行うことはできません)もありますが、今回は除外して解説します。

 明確に上記区分に分けることができない企業も多々ありますが、まずはその人材紹介会社を研究してみてください。いずれにしても読者の志向に応じ、選択なさることをお勧めします。

人材紹介会社はどこから利益を得るのか

 前回、人材紹介会社の担当者(コンサルタント)に「料金はいくらですか?」という質問を私が行ったという体験談を紹介しました。いまでもこの質問はよく受けるのですが、この質問に次いでよく聞かれるのが、「人材紹介会社はどうやって利益を得ているのですか?」という質問です。

 結論を先に述べると、それは企業(求人企業)からの収入で利益を得ているのです。人材は「候補者:Candidate」であり、企業(求人要件を出す側)は「顧客:Client」です。

 さらにいえば、人材紹介会社は一般に成功報酬で利益を得ているのです。つまり、人材よりFee(料金)を頂くのではなく、「人材がその人材紹介会社を通して求人企業に応募し、その企業に入社した後に、人材紹介会社はその企業から人材が実際に入社したこと=成功報酬という形で料金を受け取る」のです。従って、人材からは一切お金は頂きません。

 また、よく勘違いされる方がいるのですが、人材紹介会社に登録したからといって、転職の確約(Commitment)を人材紹介会社がするわけではありません。

 なお、ここで誤解してほしくないのは、求人企業から収入を得ているからといって、求人企業ばかりを見て仕事をしているわけではなく、そうした企業に転職するよう人材に無理強いをしているわけでもないということです。

 もし、人材紹介会社が求人企業からの成功報酬を得たくて、人材の方をどんどん入社させたとしましょう。その結果、もしかしたら人材紹介会社の収入は一時は増えるかもしれません。しかし長期的には、入社した人材から「こんなはずではなかった」「やりたいことができなかった」と思われて退社してしまう可能性が高くなりますし、求人企業からは「当社には合わない人材だった」などといわれます。いずれにしても人材紹介会社の評判は落ちてしまい、求人企業からも仕事がこなくなる可能性が高く、人材からの登録も、口コミなどによって減ってしまいます。

 人材紹介会社のビジネスモデルには、そのほか、企業から前金を頂いたうえで、本格的なサーチ(想定される人材を綿密に探すこと)を行い、探し出した人材を企業へ紹介することもあります。

人材紹介会社と人材コンサルタントを選ぶポイント

(1)紹介会社を選ぶポイント

 当たり前のことですが、あなたにとって「信頼できる会社かどうか」だと思います。現在、法律などの規制緩和により、人材紹介会社の社数は年々目を見張る勢いで増えています(表1)。

表1 有料職業紹介事業の許可事業所数と対前年度伸び率。社団法人全国民営職業紹介事業協会のWebページより引用

 そこで、下記項目をぜひ確認いただき、人材紹介会社の選別に活用してください。

  • 国の認可をきちんと受けている企業かどうか(具体的にはその人材紹介会社のWebサイトには、「厚生労働大臣許可番号」などの番号が記されているはず)
  • 企業としてのホームページなどの、「一般(マス)向けの企業/事業紹介」が整備されているか
  • 守秘義務順守などの確約をしている企業かどうか
  • 一般論として「一企業として」信頼できる企業かどうか

 人材紹介会社は、転職を考えている皆さんのサポートを行うに当たって、履歴書や職務経歴書などのプライバシー情報を預かるので、信頼できる企業かどうかは最低限の選択のポイントです。実際に人材紹介会社を利用するかどうかはまず置いておいて、その人材紹介会社を訪問するのもよい方法だと思います。

(2)どのような人材コンサルタントが良いのか

 初めて利用する人材紹介会社で、「良いコンサルタントが誰かを選別し指名すること」は非常に難しいことです。これとは逆に、「担当したコンサルタントをベースに、その人材紹介会社で良いか、悪いか」を判断する方法もあるのではないかと思います。人生の大切な分岐点における活動ですから、担当コンサルタントの優劣も大切なポイントです。

 下記も一般論ですが、人材コンサルタントとして必要不可欠ではないかと考えられる項目を列挙してみました。

  • 人材の方々の考えや志向を十分聞いたうえで、キャリアプランを提言できる、あるいはライフプランに応じたキャリアプランを具体的に提案できるコンサルタント
  • 業界や技術動向、かつ経済の動向などをよく理解しているコンサルタント
  • 案件を十分理解しており、求人背景や要件を分かりやすく説明できるコンサルタント
  • あおりたてるのではなく、多少耳の痛いアドバイスや客観的なアドバイスもできるコンサルタント

 ほかには、熱意・礼節のあるコンサルタントであることは当たり前です。

 筆者は毎年400人程度のエンジニアとお目に掛かっていますが、常に心掛けていることがあります。それは、「われわれは常に人材の方々に見られているということを意識して、誠意を持って丁寧に対応すること」です。

 人材コンサルタントですから、当然人材の方をさまざまな観点からある意味観察します。その一方でわれわれも「選択される、観察される立場」であることを認識しています。弊社では人材の方々をどのように具体的にサポートすればよいかなどを人材コンサルタントとしての「人物スキル」と「技術的スキル」の両方から「方法論」を確立し、常に人材コンサルタントとして向上すべく社内啓もうしています。

 さまざまな意味で「情報過多」な現代ですが、冒頭で記述しましたように、「人生の分岐点における大切なパートナー」を選択するのに本連載を活用していただければと思います。

 次回は、人材紹介会社の活用法、そして成功例・失敗例を紹介する予定です。

筆者プロフィール
八子(やこ)秀康●大手金融機関、ドイツ系ソフトウェアベンダなどを経て、現職(テクノブレーン キャリアコンサルタント)。キャリアプランからライフプランまで幅広いアドバイスを行う。特にITコンサルタント職や大手システムインテグレータへの転職支援の実績は豊富という。

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