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転職で人材紹介会社をうまく利用するコツ

最終回(第3回) 人材紹介会社を利用した転職事例

テクノブレーン
キャリアコンサルタント
八子(やこ)秀康
2005/1/28

人材紹介会社を活用する際のポイント

 これまで、人材紹介会社の基本的な仕組みや業態、そのビジネスモデルについて説明してきました。今回はそれらを踏まえたうえで、人材紹介会社をうまく活用するコツは何かを、成功例や失敗例の中から理解していただければと思います。

 人材紹介会社を有効に活用する場合の人材側の大きなポイントは以下の通りと考えます。

  • 自身のキャリアやビジョンについて親身に相談に乗ってくれる
  • スムーズで丁寧にフォローしてくれる
  • 豊富な情報を可能な限り密に提供してくれる

 転職活動のすべてに自分で対応できる強い自信と時間がある方は別ですが、一般的にIT業界の方々は、時間がない→情報収集の機会が少ない/あるいは情報が多すぎて何をどのようにしたらよいか分からないという「環境」にあることが多いのではないでしょうか。

 転職は人生における重要な意義を持った分岐点です。リスクを軽減させる上でも活用できるものは積極的に活用なさった方が得だとも思います。では今回は筆者が担当した具体的な事例を含めて説明します。

成功事例から学ぶ

●多忙なエンジニアの成功ケース

 Aさんは28歳、大手システムインテグレータ(SIer)勤務のSEです。このAさんはとにかく忙しい。初めてお目にかかる際には、平日夜で面談のアポを頂いていましたが、急なキャンセルなどもあり結局、別の土曜日にお目に掛かりました。残業も多く、自分の時間がないAさんでしたが、筆者はAさんの活動期間(約2カ月)で6回ほど直接お目に掛かり、以下のアドバイスをさせていただきました。

(1)意向を確認
(2)職務経歴書の作成サポート
(3)ケース別キャリアビジョンの提案
(4)案件提案(情報提供)
(5)面接の都度の事前面接情報提供および面接の練習
(6)企業のアドバイス
(7)退職活動についてのアドバイス
(8)そのほか

 そもそもAさんは忙しい中で漠然とキャリアアップを考えていた状況で筆者と会い、考えを具現化しての活動開始でした。ご転職後にAさんは、「忙しい自分に各種サポートをしていただき、非常に助かった」とコメントなさっています。

 このように非常に忙しい方でも、丁寧にサポートしてくれる人材紹介会社を利用することで転職に成功する場合もあるのです。

●転職活動に失敗後、人材紹介会社を利用して成功したケース

 Bさんは35歳、中堅SIerでプロジェクト・リーダー職としてご活躍なさっており、現職を続けながらの転職を決意して単独で転職活動を開始、10社近く応募するも1次面接で不合格だったそうです。

 その後、あるきっかけで弊社を知り、縁あって筆者が担当させていただきました。初めての面談の際に、「いやぁ、なかなか決まりません。どうしたらよいでしょうか?」と開口一番。

 いろいろとお聞きすると、

(1)自分自身を正確に理解していない
(2)自分自身を適切に(うまく)表現できない

という2点に問題点があるように思いました。

 そこでいつものように職務経歴書の作り直しからお手伝いさせていただきました。職務経歴書は自分を知る意味でとても重要です。「自分の専門が何で、できることを前提に何がしたいか」を的確に考えるためにも職務経歴書の作成は意義があるのではないかと思います。その後、面接のアドバイスや面接練習を何度も繰り返しサポートさせていただきました。

 面接の練習では、「もしあなたが採用担当だったらどうですか?」ということを十分理解していただいたうえで面接のシナリオ作成のお手伝いをしました。「どのような質問が想定されて、どのように返答するか」を個条書きにし、実際の面接のように予行演習をしました。そして演習終了後に「どうしたらもっと良くなるか」を一緒に考え、シナリオを幾度も修正……。その結果、Bさんは希望レベルの会社に転職できました。

  次にDさんの例を紹介します。Dさんは29歳のSEです。過去に一度F社へ転職したいとの考えからご自身でF社に応募しましたが、書類審査で不合格となりました。その1年後に人材紹介会社の存在を知り、弊社をご利用いただき見事入社なさいました。このケースは、上記に同じく職務経歴書の内容によるものだったようです。

 実際F社人事担当者さまからは「1年前の職務経歴書と1年後の新しい職務経歴書は雲泥の差がありました。それに人材紹介会社経由での応募の場合は、さまざまなことを整備していただいたうえで書類審査に応募いただくので、こちらも自信をもって現場担当者に推薦できます」とのコメントをいただきました。

 一度不合格になった企業でも人材紹介会社を経由することにより、時期や状況に応じて逆転採用される場合もあるのです。

失敗事例に学ぶ

●サポートがラフな人材紹介会社を利用して失敗したケース

 Cさんは30歳、以前は外資系ソフトウェア会社に勤務しており、英語も堪能な方です。あるきっかけで、とある人材紹介会社からスカウト電話を受け、転職活動における紹介会社との連絡をすべて電話と電子メールだけで対応し、P社に転職されました。その後、さまざまな条件面などで入社前の前提と大幅な違いがあり、P社から退職を余儀なくされたのです。

 Cさんは、「いまの時代、SE職であれば転職は簡単」との認識で「案件さえ紹介してくれたら自分で転職を完結できる」との自信から転職をされましたが、転職時の条件面詳細を確認されず「何とかなる」との思い込みで入社、入社後に前提条件との違いが表面化して転職を決意されました。

 その際、弊社にアクセスして筆者が担当、サポートさせていただくことになりました。Cさんはその後Q社への転職に成功し、現在もQ社でご活躍中です。

●最後に――「IT技術者失業の危機」

 2005年1月4日の日経産業新聞に、「IT技術者失業の危機」という見出しの記事が掲載されました。

 ほとんどのSEの方は「そんな危機なんて」と思っているのではないでしょうか。IT業界に限らず企業の経営は世界経済の流れの中で「弱肉強食」的な競争原理にさらされ、ITバブル終えん後、明らかに企業は自社人材に対して「量より質」に考え方を移行し、IT業界ではオフショア市場への発注が大幅に増えてきています。

 これらのことから、中途採用の「人/エンジニアを見る目」はおのずと厳しくなってきています。

 そして成長している企業ほど優秀な人材を強く求めています。一方で、中途採用の現場は、1〜3回の面接でその人材の技術スキルとヒューマンスキルを判断し、合否判定をしなければなりません。ある意味、企業にとっても求職者にとってもリスキーなことであり、あっという間の機会なのです。その数少ないチャンスをモノにするためにも転職の専門家である人材紹介会社のご利用をお勧めします。

 私たちも求職者の人生における重要な岐路でのサポートであることを十分認識し、倫理を持ってレベルの高い情報とサポート・サービスの提供をお約束したいと思います。

 転職の方法はいろいろあります。しかし、常に職務で多忙な方や、専門家の意見やアドバイスを聞いてみたいという方は、ぜひ気軽に人材紹介会社をご利用ください。

 私たちも常に皆さんに見られているという意識を持ちながら自己研さんに励んで「一層質の高いキャリアコンサルタント」になることを心掛けていきたいと考えます。

筆者プロフィール
八子(やこ)秀康●大手金融機関、ドイツ系ソフトウェアベンダなどを経て、現職(テクノブレーン キャリアコンサルタント)。キャリアプランからライフプランまで幅広いアドバイスを行う。特にITコンサルタント職や大手システムインテグレータへの転職支援の実績は豊富という。


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