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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.18<2003年6月版
脱“エンジニア”という道はありか

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2003/7/1

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

IT企業が減少している

 国土交通省が1999年から半年に1度調査している「ソフト系IT産業の実態調査」の最新結果(2003年3月調査)が先日発表された。それによると、ソフト系IT産業(ソフトウェア業、情報処理サービス、ネット関連サービス)の事業所数が調査開始以来、初めて減少に転じたという。原因は開業数が大きく落ち込み、廃業数を上回ったためだ(図1)。

図1 ソフト系IT事業所の開業・廃業数(国土交通省調べ)

 各種調査によると、2003年は企業のIT投資が復活し、またアウトソーシング需要が高まるため、IT業界の業績は前年比プラスになると予測されているが、いまだ現場にその実感はない。ある大手システムインテグレータ(SIer)のエンジニアは「昨年に比べ新規開発案件は減っています。いまは改修案件ばかりです」という。中堅のシステム開発会社のあるエンジニアは「いままでは見向きもしなかったような小規模の開発案件を大手SIerが獲得に動いています」と、苦笑交じりに話してくれた。

 大型の新規案件が減っている分、大手SIerは小規模な案件獲得にも乗り出し、そのしわ寄せが中堅以下のシステム会社にきて、冒頭の調査結果のような事業所数の現象につながっているのだろう。

求人トレンドはマイナスか横ばい

 このようなIT業界の動向を反映してか、ITエンジニアの求人件数は下降傾向にある。キャリア実現研究室の記事「最新DATAで見る『IT系エンジニア』求人動向 6月版」によると、ITエンジニアの求人件数は対前月比75%になっている。

 求人広告件数の傾向と人材紹介会社に依頼される求人件数の傾向には若干の違いがある。求人企業からすると、求人広告は出稿する分費用が発生するが、人材紹介の場合には、採用しない限り費用が発生しない。そのため人材紹介会社に依頼される件数の方が求人広告件数よりも多いと考えられる。

 実際、複数の人材紹介会社によると、4、5月の求人動向は横ばいとの回答が多かった。「ITエンジニアの求人は下降傾向というわけではありません。開発経験をしっかりと積んでいるエンジニアのニーズは依然高いといえます」(某人材紹介会社)

 多くの企業にとって、6月は来年度入社の新卒採用がひと段落する時期。人事担当者は新卒採用活動から中途採用活動にシフトする。「6月になって、人材紹介会社向けの説明会が多くなりました」(某人材紹介会社)。人材紹介会社向けの説明会とは、求人企業が、採用したい人材について取引のある人材紹介会社を集めて説明するもの。多くの場合、実際に採用したい部門のマネージャクラスが直接説明をするという。説明会が多く開催される=人材紹介会社への求人件数が増える、と6月以降は予想される。

エンジニアは営業職として優遇されるか

 「いまIT企業の募集としては、エンジニアよりも営業職が多いですね」(某人材紹介会社)。今回のヒアリングで多く聞いたのは、この言葉だ。特にソフトウェア業は大手企業から中小企業まで一様に営業職の募集が多いという。

 ソフトウェア業の営業職ではさぞかしエンジニア経験者は優遇されるのではないかと思い、質問したところ、そうでもないらしい。「ソリューション営業職だとしても、エンジニア経験があれば“尚可”といった程度です。つまり必要条件ではなく、十分条件ですね」と、テクノブレーンの能勢賢太郎氏は、エンジニア経験者のニーズについて教えてくれた。

 その理由について、キャリアデザインセンターの平岡健氏は「営業職では、技術的な知識よりも、まずは売るためのスキルが重要だからでしょう。もちろん技術的な知識があるに越したことはありません。そこで営業職にとってエンジニアの経験は、十分条件であって、必要条件ではないのです」と述べる。

 エンジニア経験者が営業職に就くことのデメリットを教えてくれた人材紹介会社もある。「エンジニアを経験した営業職の方は、あきらめが早すぎることがあります。例えば、システム開発案件を持ち掛けられたときに、その案件の技術的な課題を発見するのはさすがに早いのですが、担当チームの開発力では困難なことが予想されると、“ウチでは難しいですね”と、お客さまにいってしまうのです。営業ならば“前向きに検討させてください、しかし、いくつか課題があるので、その解決策を検討した後にご提案いたします”と答えるなど、案件を獲得する姿勢を見せなければなりません」

職種転換を狙うなら、マーケティング

 このように、ソフトウェア業の営業職だからといって、エンジニア経験が優遇されるわけではないようだ。では、エンジニア経験が重要視される職種はないのだろうか? 前出の平岡氏は「ソフトウェアベンダのプロダクトマーケティング担当者の求人で、エンジニア経験者と指定されることがあります」と話す。

 プロダクトマーケティング(またはプロダクトマネージャ)の場合、開発チームとの折衝やセミナーでの製品プレゼンテーション、販売パートナーの開発会社技術チームへの説明など、技術的な知識と経験がないと務まらないケースが多い。そのため、エンジニア経験を必須とする場合がある。確かに、筆者の周囲にもエンジニア経験のあるマーケティング担当者が複数いる。

 エンジニアから営業職やマーケティング職など、エンジニア以外の職種に転換する場合の注意点について、テクノブレーンの能勢賢太郎氏がアドバイスしてくれた。

「転職希望の方の中には、エンジニアが嫌になったので、職種を変えて転職したいという方がいます。しかし、それでは長続きしません。職種転換する場合には、いままで蓄えてきたスキルが通用せず、“イチから勉強し直す”心構えがなければ、必ずといっていいほど失敗します」

 さらに同氏によると、職種転換は32歳くらいまでに行うのが望ましいという。これから先のキャリアを検討している方々は、エンジニア以外の選択肢も視野に入れてみてはいかがだろうか。

■取材協力企業(50音順)
キャリアデザインセンター
テクノブレーン
パソナテック
リーディング・エッジ社
リーベル
筆者の担当している@ITジョブエージェントは、キャリアやスキルを登録することによって人材紹介会社の無料のキャリア相談やキャリア査定を受けることができる、ITエンジニアのためのキャリア支援サービスです。転職を予定していない方でも、キャリアプランの参考にご活用ください。

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