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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.21<2003年9月版
ITエンジニアが優位になりつつある転職市場

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2003/10/3

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

日本経済は復調の兆し、果たしてIT業界は?

 日経平均株価が1万円台を回復し、日本経済に復調の兆しとの報道がここ数週間なされている。それに伴い、企業の設備投資意欲も回復しているという。企業のIT投資が活発になれば、IT業界も活況を呈し、ひいてはITエキスパートの求人もさらなる上昇基調へと移る可能性があるだろう。

 実際のところIT業界、とりわけシステム開発業の景気動向はどうなるのだろうか。今年9月に経済産業省から発表された「特定サービス産業動態統計調査」の2003年7月分によると、「情報サービス」のうち「受注ソフトウェア」の対前年比での売上高は、2002年9月から2003年5月まで連続9カ月マイナスだった。それが2003年6月から2カ月連続でプラスに転じている。統計値で見る限りはシステム開発業界も多少上向きに転じたといえそうだ。

 7月のレポート(「第19回 エンジニアの求人が回復、注目の業界は?」)で報告したとおり、ITエキスパートへの求人数は昨年11月ごろが底で、今年の6、7月から増加が鮮明になってきている。まさにこの統計値の推移とほぼ同期しているようだ。

 この「特定サービス産業動態統計調査」では、さらに特筆すべきことがある。同じく「情報サービス」には「システム等管理運営受託」という分野があるが、平成12年以降の対前年比の売上高はずっと110%前後で推移している。IT業界の中では急成長分野といえるだろう。2月のレポート(「第14回 これから注目したい、運用エキスパートへの道」)で提示した「運用エキスパート」は、やはり今後注目すべきキャリアパスではないだろうか?

 さて、話を直近の求人トレンドに戻そう。今回のヒアリングでは、どの人材紹介会社の話からも求人数や求人層について変化は見受けられなかった。その代わり、求人企業の中途採用スタンスの変化について、いくつか興味深い話を聞いたのでレポートしたい。

特定部署のピンポイント採用の影響

 「募集がよりピンポイントになってきました」と、ある人材紹介会社が教えてくれた。以前は応募部署で不採用になっても、別の部署を紹介されることがよくあったらしい。それが最近ではほとんどないという。たとえ優秀な人材でも、募集部署が求める人材とマッチしない限り不採用となってしまうのだ。

 「それが原因かどうか分かりませんが、この方なら採用されるだろうという方が不採用になるケースが増えました」と、別の人材紹介会社はこぼす。「なぜ不採用になったかを分析したのですが、面接官との相性が悪ければダメなんだ、との結論になりました」

 一次面接の面接官は通常、募集部署のマネージャクラスが担当する。いくら優秀でもマネージャの評価基準に合わなければ不採用になる。そこで、前述の人材紹介会社では、特定面接官対策として面接指導を行っているという。

 「私たちは、求職者がその求人企業ならば活躍できるだろうと思って紹介するわけです。それが面接官との相性で不採用になってしまうのは求人/求職双方にとって不幸です。そこで、このような面接指導を行っているのです」

 人材紹介会社が履歴書や職務経歴書指導を行うことは知っていた。しかし、「A社のBマネージャには、こういった返事はNG」といったことまで指導するとは初めて知った。むろん、誰にでもこのような指導をするわけではなく、求人求職ともベストマッチと判断した場合のみだという。

採用担当者がより真剣に

 もう1つの変化として、求人企業側が「中途採用により真剣になった」と複数の人材紹介会社から聞いた。「ある求職者について、『他社の面接日程はどうなっているか? もし決まっているようだったら、その前にウチの面接をセットしてくれないか』と依頼してくる採用担当者が増えました。以前にはなかったことです」とある人材紹介会社が話してくれた。それにつれて、書類選考から面接、内定までのリードタイムが短くなっているそうだ。

 その理由を別の人材紹介会社は次のように解説する。「ITバブル期に比べれば、ITエンジニアの転職市場は買い手市場、つまり求人企業にとって有利になっています。しかし、優秀な人材はどの企業も欲しがります。結局優秀な人材にとっては、いまも売り手市場なのです」

 特にここ数カ月、求人企業の採用ニーズが高まるに従い、その傾向が顕著になり、「迅速かつ手間暇をかけなければ、優秀な人材は採用できない」と、求人企業の採用担当が意識を新たにしているのではないだろうか。

採用できる企業の特徴とは?

 では、優秀な人材を採用に結び付けている企業とはどのような企業かを、別の人材紹介会社に聞いてみた。「特にITエンジニアにとって、企業の知名度や規模は二の次のようです。知名度にあぐらをかいて、中途採用に苦労している大企業もあります。着実に採用できる企業には、次のような特徴が見られます」

(1)Webサイトの中途採用に関する情報が充実している
(2)面接の日程調整が迅速
(3)面接官が魅力的(面接で夢を語り、共感させられる)

 ただし、求職者がWebサイトの情報だけで企業研究を済ませるのは禁物だという。そこでお勧めしたいのが、在職者へのヒアリングだ。大学生が就職企業選定の際に行うOB/OG訪問のようなことを、転職時にも行った方がよい。

 とはいえ、転職希望企業に知り合いがいるケースはまれだろう。知り合いがいない場合は、人材紹介会社を活用したい。ある人材紹介会社では、求職者から転職希望企業について知りたい事項を預かり、以前にその企業に転職紹介した方に代わりに質問してくれるという。

 前述の面接指導といい、この代行質問といい、人材紹介会社を有効に活用し、転職活動を有利に進めてはいかがだろうか。

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