第17回 年収400万円と600万円で差が出る職務経歴書
關口洸介(パソナキャリア)
2008/10/21
「したいことをするため」「条件のいい仕事に就くため」など、人はさまざまな理由で転職する。組み込み業界も例外ではない。同業界を舞台にした転職活動の喜怒哀楽を、キャリアコンサルタントがこっそり教える。 |
企業に応募する際、必要になるのが「職務経歴書」です。履歴書と違って、記載方法は自由です。
インターネット上では、職務経歴書のサンプルやフォーマットを取得することは難しくありません。良さそうなフォーマットを選んで記入すればよい、と考えるエンジニアは多いのではないでしょうか。
しかし、その人の年収によって、職務経歴書の内容に顕著な違いが見られます。
■「自己PR欄は必要ですか?」
エンジニアからよく受ける質問で、「自己PR欄は必要ですか?」「フォーマットはExcelとWord、どちらで作成すればよいでしょうか?」というものがあります。
回答としては、「自己PR欄はあった方がよい」「フォーマットはExcelよりはWordの方が一般的」です。
参考:職務経歴書 10の鉄則
@IT自分戦略研究所 via kwout
ただし、転職に成功したすべての人の職務経歴書に自己PR欄があるわけではなく、フォーマットもWordであるとは限りません。必要な内容を記述していれば、フォーマットは問われないと考えた方がいいでしょう。
職務経歴書はフォーマットにこだわるより、「稼げるエンジニアかどうか」を示すことの方が重要です。
■職務経歴書はエンジニアを映し出す鏡
企業の選考は履歴書・職務経歴書による選考で始まります。書類選考でかなりの人数が不採用になることから、職務経歴書は選考において重要な位置を占めるといえるでしょう。
また、職務経歴書を見てから本人に会うと、職務経歴書から想像していたとおりの人だった、ということが多くあります。
理路整然とまとめられている職務経歴書の場合、本人に会ってみると、やはり理路整然と話す人であることがほとんどです。逆に、仕事のモットーや心掛けなどが記載されている職務経歴書の場合、本人も「熱い」エンジニアのケースが多い傾向にあります。
■稼ぐエンジニアの職務経歴書とは?
業務系エンジニアの場合、「非常に優秀なプログラマ」という人は除きますが、稼ぐエンジニアはマネジメントを要するポジションに就き、規模の大きなプロジェクトを任されているケースが大多数です。そのため、「顧客」「担当のアプリケーション」「プロジェクトの規模」「役割」が記載されていれば、大体の目安がつきます。また、年収にかかわらず、記載の項目についてはそれほど変わりがないようです。
一方、組み込みエンジニアの場合、必ずしも「稼ぐエンジニア=大規模なプロジェクトのリーダー」とは限りません。業務アプリケーションエンジニアに比べると、記載されているプロジェクトの規模などの数値では、必ずしもキャリアを把握できない面があります。
しかし、職務経歴書の書き方の傾向を調べていくうちに、ある法則を見つけました。年収による法則が見つかったのです。
■年収「400万円」と「600万円」のエンジニアの職務経歴書の違い
今回は分かりやすく、年収の大体の目安として300万円台後半から400万円台半ばくらいまでで転職する、すなわち「年収400万円台前後で転職するエンジニア」と、500万円台半ばから700万円台までで転職する、「年収600万円台前後で転職するエンジニア」に分けて表現することにします。
それぞれ、よくある表現とキーワードは以下のとおりです。
●年収400万円台前後で転職するエンジニア
- よくある表現
- 納期に間に合うように工夫した
- ○○を身に付けた
- 納期に間に合うように工夫した
- キーワード
- 自分のスキル
- プロジェクトに対する貢献
- 自分のスキル
●年収600万円台前後で転職するエンジニア
- よくある表現
- ○○をすることによって、結果として○○ができるようになった
- 業界で初めて○○を導入し……
- ○○をすることによって、結果として○○ができるようになった
- キーワード
- 会社・業績への貢献
- 改善の結果
- 新しい試み
- 会社・業績への貢献
ある程度の年収・職位においては、業績への貢献や、改善の意識を持った視点が必要となります。職務経歴書によるアピールは、単なる書き方の問題ではなく、仕事に対する意識が表れているといえます。
30代は、年収の差が開き始める年代です。職務経歴書に、「会社・業績への貢献」「改善の結果」「新しい試み」について書けるような仕事の進め方をしていますか? 将来的には「会社・業績への貢献」「改善の結果」「新しい試み」の視点を持って仕事をできそうですか?
職務経歴書を書くのはまだ先という人も、職務経歴書を書いてこれから転職活動を始めようとしている人も、一度、仕事を進めるときの視点を見つめ直すとよいかもしれません。
筆者プロフィール |
關口洸介(パソナキャリア)●高等専門学校、大学、大学院で機械工学を専攻し、主に機械力学・制御工学を基礎とした振動制御の研究を行う。卒業後、エンジニアの転職サポートを志し、人材紹介会社で人事から求人ニーズをヒアリングする企業担当を経験。自動車、家電、半導体、精密・計測器、化学業界など各メーカーの人事から採用ニーズを直接聞いてきた経験を生かし、現在は転職希望者へのキャリアカウンセリングを担当している。 |
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