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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜

転職。決断のとき

第12回 派遣SEの悩み。責任ある立場で働きたい

中村京介
2004/3/10

 スキルを上げるため、キャリアを磨くため、給料を上げるため――。エンジニアはさまざまな理由で転職し、新しい舞台で活躍する。では、転職の決断をするのはいつなのか? そしてその決断に至った理由とは何だろうか? その決断のときを、今回は@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに尋ねた。

今回の転職者:塚本英幸さん(仮名・26歳)
プロフィール専門学校で音響技術を学んだ後、SIerで客先常駐のSEに。運用管理の仕事に興味を覚え、技術とビジネスの両方の視点からキャリアを磨くことを思案中

■未経験ながら生活費確保のため、IT業界へ

 何もIT業界に限ったことではないが、自分の専門分野との出会いは“偶然の産物”であることが少なくない。たまたまその仕事に出会って日々の業務をこなしていくうちに興味を持ち、さらに突き詰めてキャリアを磨いた結果、自分の専門分野となって転職に成功するようなケースもあるだろう。現在、ユミルリンク株式会社のSIグループ、サーバー&ネットワークセクションに勤務する塚本英幸さん(仮名・26歳)のケースがこのパターンだ。

 「このままでは生活していけない。生活費を稼ぐスキルを身に付けなければならないと思ったのです(笑)」。IT業界に飛び込んだきっかけを笑顔で語る塚本さんは、もともとIT業界とはまったく無縁の世界にいた。専門学校で音響技術を勉強した後についた最初の仕事が、舞台の音響製作である。

 しかし、収入面や怪我などの壁にぶつかり、IT業界への転職を決意する。中学1年生の時からMSXに触れるなど、ITにはそれほど違和感を持っていなかったが、主にシステムの受託開発を手掛けていた前社ではかなりの苦労を強いられることになる。

 「下流の簡単なプログラミングやオペレータなど、実際に手を動かす部隊で働いていました。周りはコンピュータの専門学校とか高校の情報学科などの出身で、情報処理の資格を持つ人が大半でした。技術のことが何も分からないので浮いていましたね」と当時を振り返る。社内には教育してくれる先輩はおらず、プログラミング作業の際はPerlやPHPなども、見よう見まねで習得していくしかなかった。

 「専門用語やビジネスマナーの欠落など……毎日ひたすら怒られていました。一時は精神的にかなりヘコみました(笑)。もう一回音楽の業界に戻ることも考えました。そのうち、次第に会社の受託案件も減り、“社内失業者”がどんどん増えていった。社内の空気は非常に重かったです」

■運用管理の仕事に興味を覚える

 そんな時、塚本さんに1つの転機が訪れる。

本当にやりたい仕事は何かを3カ月くらい考え、それが明確になってから転職活動を行った

 「もともと開発要員でしたが、仕事がなくなり、運用の仕事が回ってきました。通常はシステム開発と運用管理を比べると、開発エンジニアのほうが花形だと思われがちです。だから、運用管理へ配置転換された瞬間にモチベーションが落ちる人って結構いる。でも、私はモチベーションを維持するため、余分な時間を勉強に充てました。そのうち、次第に運用管理の視点でプロジェクト全体を見据えていきたいと考えるようになったのです」

 一昔前のどんどん開発しては壊して作り直す時代が終わり、費用対効果が厳格に求められるようになり、かつては日の当たらなかった運用管理の位置づけは確実に上昇している。

 「昔はシステムが動いてさえいれば文句をいわれなかった。でも、もっとアグレッシブに運用していけば、そこにビジネスチャンスが生まれるのではないかと考えたのです。自分が運用するシステムやネットワークはどのような構成で設計され、どういった人がこのシステムを使っているのか。また、その情報をだれが共有しているのか。自分の視野を広げてみた時にビジネスチャンスが生まれてきたのです。例えば、ログ分析の結果を元にクライアントに新たなシステム構築を提案することもできます。そこでクライアントの言葉の裏を読んで、実は機能の追加や業務改善といったシステムの再構築を考えていると分かれば、自分たちが設計に参画するチャンスをつかめるわけです」

■やりたい仕事を決めてから転職活動へ

 システムの運用管理の仕事に携わるようになってから2年が過ぎたころ、次第に転職を意識し始めるようになる。

 「客先に2年間ほど常駐し、SIerから派遣されてきたエンジニアと一緒に、運用管理の仕事をする時間が増えるにつれ、障害対応などではシステム全体を俯かんする視点がいかに大切であるかを感じるようになりました。仕事に余裕が出てくると、単なる日々のオペレーションだけでは飽き足らなくなり、もっと責任のある仕事がしたいという気持ちが強まりました。しかし、常駐派遣で運用管理の仕事をする以上、テクニカルなスペシャリストにはなれますが、全体を俯かんするような責任ある仕事を担当することはできません。こうして会社の限界が見えたとき、会社を変えてみようかという気持ちになったのです」

 転職先として運用管理の仕事はどれくらいニーズがあるのかを調査しつつ、それに平行して「自分がどんな仕事をやりたいのか」を突き詰める作業を3カ月間続けた。

 「電車の中で思いついたことを手帳に書いたり、家に帰れば、@IT自分戦略研究所の記事などを読みながら、他人の成功事例を参考にしてみたり……。そうやって3カ月くらいは、自分が本当にやりたいことを何なのかを考え、それが明確になってから転職活動に入りました。ただ、自分では将来のキャリアプランが固まったけれども、IT業界で私を受け入れてくれる会社があるのか、自分のキャリアプランはまだまだ甘いのかなど、不安はたくさんありました。その答えを知りたくて、@ITジョブエージェントに登録したのです」

■意外なほどスムーズに転職活動を終える

 転職活動を始めたころ、塚本さんは突然配置転換となる。常駐先のプロジェクトの縮小にともない、そのシワ寄せが協力会社に及び、突然の案件終了となってしまったのだ。この異動は、転職の意思が芽生え始めた気持ちをさらに決定付けることとなった。結局、すぐにレスポンスがきたテクノブレーンに転職相談する。その結果、自分でも意外なほどスムーズに現在の会社への転職が決まった。

 「予想を上回る早さで転職先が決まったのは、自分のやりたいこと、学びたいことが明確に決まっていたからではないでしょうか。面接時に自分がやりたい仕事についても、面接官と十分にコミュニケーションできたことが非常に良かったと思います。面接官はすごくエンジニアの匂いのする方でした。ついつい会話が脱線し入社後の仕事内容など2時間以上も話し込んでしまうほど……。面接を受けながら、この会社なら楽しく仕事ができると感じましたね。常駐ではなく自社でメール配信などのシステムを販売していることやさまざまな技術の習得もできることは非常に魅力的でした。運用管理という観点からビジネスを広げていきたいという話題についても、『いまは会社が大きくなっていく過渡期なので、ビジネスをプロデュースする仕事もできるよ』といっていただきました」

 昨年9月に転職して以来、いまのところはWebサイト構築の仕事がメインだが、今後は、自分が積極的にイニシアチブをとって顧客の意見を直接聞いていけるように、社内でアクションを起こしていきたいと塚本さんは意気込む。現在はそのための準備期間と位置づけている。

 「まず運用プロセスを十分に理解することが最低限必要だと考えています。運用テストの実施や新システムへの移行にどれくらいの期間が必要なのか。あるいは運用環境の改善や、定期的なシステム運用の評価や業務効果の評価方法などにはどれくらいのコストがかかるのか……。クライアントからの要望に応じられるよう、運用プロセス全体を把握できるようになるための勉強期間です。もちろん、その土台となる技術をきちんと習得し、足りない経験をここでカバーすることも怠っていません」

 さらに先の将来には、技術だけではなく、マネジメントにも興味を持っている。マネジメントの立場に立つには、ビジネスの知識が必須と考えている。

 「システムの運用は設計技術以外に、“人的マネジメント面”で問題があると思いました。モチベーションを維持させてチーム内の連携や士気を高めるにはどうしたらいいのか。こうしたヒトのマネジメントをきちんとしなければミスやトラブルの対応に問題を引き起こすこともあり得ます。だから、マネジメントの経験を積むことを強く意識するようになりました」

 今後はクライアントがどういうビジネスをしているのか、自社のタスクがどういった資金計画に基づいて下されているのか、などを包括的に学びたいという。そして、技術とビジネスの両方の視点からキャリアを磨いていくことを念頭に置いている。

 一時は去ることも考えたIT業界。転職して半年、塚本さんの頭の中では将来のキャリアプランがはっきりとした形を持ち始めている。もう音楽の世界に戻ることは考えていない。

担当コンサルタントからのひと言
 塚本さんとお会いして最初に気付いたことは、年齢相応のキャリア・ポテンシャルを持ちながら、自分自身のことを過少評価していたことです。この点に着目してキャリアプランを提案しました。

 当初の塚本さんは、所属する会社への恐怖心が先行し、キャリアを考えるどころか、「どんな仕事でもいから、とにかくいまの会社を辞めたい」という気持ちのようでした。キャリアコンサルティングを進めるうちに、ご自身のキャリアの方向性(運用管理系)が明確になり、さらに次の仕事に求める条件(「プロパーでの業務」「運用管理の技術力向上」「マネジメントスキル・顧客折衝力の向上」)もはっきりとしてきました。

 まずご自身の将来まで含めた大局的なプランを常に念頭に置き、何を守り、何を犠牲にしなければならないかを明確にしました。転職した会社を紹介した理由は、大企業よりベンチャー企業の方が、マネジメントに必要なコミュニケーション能力を早く向上させられるだろうと考えたからです。 転職が成功した秘けつは、ご自身の「情熱」「誠意」が、転職先・所属先に伝わったからだ思います。


テクノブレーン 人材紹介事業部
キャリアコンサルタント 栗原 弘守




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