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〜自分戦略研究所 転職者インタビュー〜
転職。決断のとき

第21回 いままでと違う仕事への夢と実現の難しさ

岩崎史絵
2005/1/19


転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。


今回の転職者:藤井一雄さん(仮名・28歳)
プロフィール■大学卒業後、システム開発会社に入社。以降、NTTの交換機システムやIP電話サーバの構築など、通信系システム開発のプロジェクトに携わる。転職の理由は「受託開発という受身の仕事から脱却したい」「業務系/オープン系システムの開発にかかわりたい」「最新技術に関心がある勉強熱心な技術者と仕事がしたい」の3点。大学時代は人間の視覚情報処理について研究し、カメラを通した視覚認知プログラムをJavaで開発。就職後も独学でJavaの勉強を続けるなど、通信系SEからの脱却を目標にキャリアチェンジを目指す。現在、プリンタ機器メーカーで制御用プログラムの開発を担当している。

違う仕事がしたい、とはいうものの

 転職者なら誰もが「いままでとは違った仕事をしてみたい」と思うだろう。ではその「違う仕事」とは何なのか。

 まったく経験もスキルもない分野に飛び込み、仕事自体を変えてしまうのか、それともいままでの経験を踏まえたうえで、異なる視点ややり方で仕事に取り組むのか――前者は一般に「キャリアチェンジ」、後者は「キャリアアップ」もしくは「スキルアップ」と呼ばれている。

 キャリアチェンジはリスクが大きい。果たして自分がその仕事に向いているか不明だし、何より築き上げてきた経験や実績が生かせないケースもある。そうかといって、いままでの経験を土台にするのなら、ドラスティックな変革は見込めそうにない。それでは、何のために転職をするのか分からない。

 「5年後10年後の未来を考えると、本当にこの仕事でいいのか疑問が生じた」と語る藤井一雄さん(仮名・28歳)も、そんな悩みを抱えていた1人だ。「プログラムは好きで、C言語からC++、そしてJavaを独学で習得しました。そこで興味がわいたのが、オブジェクト指向の考え方です。就職後も独学でJavaの勉強を続け、オープンシステム開発や業務系システムをやってみたいと思っていましたが、仕事では通信系システムを請け負う毎日。ほかにも職場環境を変えたい、受託開発という仕事内容に疑問があるといった理由から転職を考えたとき、仕事内容をがらりと変えてキャリアチェンジしたいと思ったのです」(藤井さん)

Javaや業務系SEへのキャリアチェンジを目標に

 大学時代は人間の視覚情報処理について研究していた藤井さん。卒業時には、カメラを通じた視覚認知映像をPC上に表示するプログラムをJavaで開発した。Javaを使ってみたのは、「ちょうどJavaが注目され始めた時期だったから」(藤井さん)と語るとおり、新しい技術やプログラムに対する興味・関心が非常に高い。独学でCやC++、Javaを勉強して、入社後も勉強を続けているというから、生来の勉強好きといえる。

 そんな藤井さんが大学卒業後に入社したのは、ある地方に本社があるシステム開発会社だった。本社は地域密着型の地場産業としてビジネスを展開しており、案件は公共・医療などがほとんどだ。東京支社は、ある大手システムインテグレータ(SI)との協業関係もあり、そのベンダと組んで通信系のシステムを開発したり、顧客企業の業務システムを請け負う案件が多数を占める。藤井さんは1998年に入社すると、すぐに東京支社の勤務となった。以降、5年以上を東京で過ごすことになる。

 藤井さんは入社以来一貫して通信系システムの開発を担当。「最初は電話の交換機システムの開発プロジェクトに回され、そこで1年に及ぶプロジェクトを3本くらい経験しました。その後、あるメーカーが導入したIP電話用サーバの開発プロジェクトを担当したり、最後の半年は携帯電話システムの開発にもかかわっていました」(藤井さん)。経験を積むうちに、数人の部下を統率するチームリーダーとして、直に顧客企業の担当者との折衝にも当たった。

 通信系システムの開発で使っていた技術は、主としてC++だった。もともとオブジェクト指向に興味があったので技術的には不満はないが、独学でJavaの勉強を続けるうち、「オープンシステムや業務系システムをJavaで開発してみたい」という希望が芽生え始めた。通信系システムは基本的に制御の仕組みなので、業務系システムとは分野が異なる。技術的にもC++ではなく、Javaというように、これまでと違う技術や分野で仕事をしたいと思うようになった。

 こうした思いと並行して出てきたのが、「受託開発」というビジネス形態に対する不満だ。確かにやりがいを感じることもあるが、基本的には“受け身”という仕事内容は変わらない。「5年後10年後もこのままでいいのか、という思いが募るようになりましたね」(藤井さん)

 職場環境にも少しずつ不満を覚えてきた。勉強好きの藤井さんは、新しい技術や知識習得に目がない。ところが周りのスタッフは「仕事のため、食べるための技術」という思いが強く、純粋に技術を面白いと思う藤井さんとはソリが合わなかったのだ。

 そして2003年後半、責任と仕事の量は増えるものの、残業代がカットになるなど賃金の面でも問題が生じた。社内の環境や体制を何とか変えたいと、直属の上司に意見した時期もあったが、結局は何も変わらずそのままとなってしまっていた。「転職しよう」とはっきり決意したのは2003年末のことだ。

信頼できるキャリアコンサルタント

 転職を決意した藤井さんだったが、転職活動は初めて。そこで選んだのが、@ITジョブエージェントへの登録だ。「@ITはJavaの知識習得のために読んでいたので、まずはこの転職サービスを利用しようと思いました」(藤井さん)と語る。登録したのは2004年2月。「いままでの経験やキャリアをすっぱり切って、新しく業務系SEとして出発するぞ!」と意気込んでいた。

 3月に入り、@ITジョブエージェントを通じて数社の人材紹介会社からオファーがあった。実際に会って話してみて、これからの転職活動を支えてもらうパートナーとしてテクノブレーンを選んだ。「最初にお会いしたとき、『時間を無駄にしたくはないので、無理な転職は勧めません。お互い無理なら無理、とはっきりいいましょう』というお言葉をいただいたのでびっくりしました。そして『何をやりたいのか、どんな仕事をしたいのか』という点をじっくり聞いてくださったのです。そこで、この人に付いていこうと思いました」(藤井さん)

 当時、「通信系SEから業務系SEに移りたい。C++ではなく、Javaをやりたい」という希望を持っていた藤井さんだったが、テクノブレーンのコンサルタントはその希望を押しとどめた。せっかく通信系システムの経験があり、しかもC++とオブジェクト指向というスキルを持って仕事をしているのだから、その実績を生かそうと提案されたのだ。

 また、「受託開発」という姿勢から抜け出せないSIへの転職は見送り。「C++もしくはオブジェクト指向技術で、自社の製品・サービスとしてソフトウェアを開発している企業」というように、方向性が固まった。

 藤井さん自身、業務系SEを目指していたものの、同期入社の友人から話を聞くと、何となく自分がイメージしていたものと違うことが分かってきた。また、業務や業種によって細かいルールを学ばなくてはならないことも見えてきた。そして最後に、「勉強だと思って行ってみたらどうですか」とテクノブレーンのコンサルタントから勧められ、あるERPパッケージの開発会社の説明会に出てカルチャーショックを受けたという。「日本企業なのですが、徹底した成果主義などドライな社風が特徴らしく、一見して『ここは合わない』と分かりました。イメージが先行していた部分もあったのですが、実際のSEや会社の姿を見て、『むしろこれまでのキャリアを生かし、別の道を探した方がいいのかもしれない』と痛感しました」(藤井さん)

転職活動は自分の人生に必要なプロセス

 キャリアプランが明確になったところで、転職活動も一気に進んでいった。2004年6月、現職のプリンタメーカーをテクノブレーンから勧められる。畑違いの分野に戸惑ったものの、「技術面からいっても最新技術やオブジェクト指向など新しいものをどんどん取り入れているし、何よりモノ作りの世界なので、自分で何かを作り上げていく充実感がある」と説明されて、心を動かされた。

 7月の暑い日、筆記試験、適性検査、面接をこなし、現場の担当者や人事担当者と話すうちに「この会社に行きたい」という思いが芽生えてきた。設立されて比較的新しい会社ということもあり、社風は自由な雰囲気。これから新しい技術や、最新の開発プロセスを取り入れて社内を効率化していこうという動きもある。こうした話を聞くうちに、やりたいことや目的が見え始めてきたという。とんとん拍子でステップが進み、8月に最終面接を受けて内定を得た。

 9月に新しい会社に移り、現在はプリンタの制御装置のプログラム開発に携わっているという藤井さん。「実は辞表を出してから初めて、以前の会社のトップも変革を期待していたことが分かったのです」という。前の会社の雰囲気を打破しようと、直属の上司に意見したこともあったが、それはトップの耳にまで届いていなかった。逆に藤井さんが新しい環境、新しい仕事、新しい目標を見つけて転職を決意したことを喜んでくれ、藤井さんの期待に応えられなかったことを残念がったという。

 こうしたやりとりがあったからこそ、新天地での藤井さんの目標も定まった。まずは新しい職場のシステム開発のやり方をもっと効率化すること。実際にシステム開発の効率化は職場でも課題となっており、新しくRUP(Rational Unified Process)を導入しようという動きがある。「RUPは前の会社で採用していたので、その方法論や特徴は一通り知っています。そうした知識を活用して、新しいことを提案していきたいと思っています」(藤井さん)

 「業務系SE、Javaという2つの方向を追いかけていましたが、いま振り返ると、この道を選んで正解でした。転職活動を経て、目標ややりたいことが見つかったし、何より前向きになれたと思います。そういう意味では、転職したという結果以外に、そのプロセスは自分の人生にとって必要だったと思っています」(藤井さん)

担当コンサルタントからのひと言
 藤井氏の紹介に関しては、紹介時期のタイミングが重要なポイントでした。藤井氏はまだ、何をしたいのかが不明な点があり、いきなり転職活動をするのは得策ではないと思ったためです。

 
藤井氏とは何度も話し合いを行い、市場分析したうえで企業情報をお話ししました。

 
それらからキャリアの志向や具体的な自己PRが明確になり、転職活動の準備が整理でき、それが転職活動に生かされたと思います。

 
現在では、某メーカーに入社し、組み込み開発の部隊に配属になりましたが、これからオブジェクト指向研究開発の最先端部隊への配属進展があるそうです。

 
藤井氏が転職先の環境にすぐに適応できたのは、本人の入社前から用意していた業務に対する思考と企業戦略の思考がマッチしたからだと思います。単純なキーワードによるマッチングなどの転職支援だけでは、希望に見合う環境は見つからないと思います。企業をただ紹介するのが人材紹介会社の役割ではありません。

 
藤井氏と同様に、情報収集の領域を広げ、自己の分析判断から、キャリアプランを見つめ直せば、良いスキル進展の環境が転職活動時に見いだせると思います。





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