
第31回 未経験から踏み出すITエンジニアの道
永井理恵子
2006/4/19
| 転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。 |
今回の転職者:小林瑞穂さん(仮名・25歳) |
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| 大学卒業後、事務職として就職した企業で、システムの要件定義を行ったことがきっかけで、ITエンジニアを目指し、転職を決意。@ITジョブエージェントに登録し、未経験者でも応募可能な第2新卒枠を利用し、システムエンジニアとして転職を果たす。 |
■新卒ながら、転職サイトを利用して就職活動
大学では心理学を専攻していた小林瑞穂さん(仮名・25歳)。卒業当時の2003年、心理学の人気は高まってきてはいたが、小林さんの専門である臨床心理学と直結した求人はほとんどなく、就職をあきらめかけていたそうだ。
「確かに、臨床心理学の人気は高まってきていたけれど、いまほどたくさん仕事につながる場はなかったんです。でも、卒業したらすぐに働きたいという気持ちがありましたから、公務員試験を受験しました。公務員試験は、1次試験が9月、2次試験が11月に行われるので、その準備に追われていて、一般的にいう就職活動があまりできませんでした。気付いたときには、新卒の採用情報がほとんどない時期になっていて……。そこで、転職サイトを利用して就職活動をすることを思い付いたんです」(小林さん)
2003年当時は、まだ新卒でも通年採用を行っている企業は少なく、秋になるころにはほとんど新卒採用の情報が出回らなくなっていた。そこで転職サイトを利用しようと決断した小林さん。
そして、転職サイトを通じてデパートやアパレルメーカーに紙袋などのパッケージを販売する会社に就職が決まった。事務職として、発注や在庫管理、営業支援を行ってきた。日々の業務は、自社専用のシステムを使っての商品の発注や管理がメイン。ほぼ毎日、同じ作業を繰り返し行っていた小林さんは、日々の仕事の中で、何かを学べる環境で仕事をしたいとぼんやりと感じるようになっていた。
■新システムの要件定義が転職のきっかけに
「環境を変えたい」と思っても、実際に行動を起こすのはなかなか難しい。だが小林さんには、2つの資質があった。1つは、「いまの環境に対する不満を変えるには、どうすればいいか」を考える力。そしてもう1つは、「目標に向けて努力を惜しまない」という才能だ。
日々の業務を通じて、自社専用システム対しての不満を感じていた小林さん。同じ仕事をしている同僚たちみんなが同じ不満を抱いているはずなのに、誰一人として変えようとはしない……。ジレンマを感じた小林さんは、システムを一新すべく、自らアクションを起こした。
「売り上げがどんどん伸びているのに、在庫管理のシステムは全然変わらない。当然、日々の業務に追いつかなくなってくる。このシステムで仕事をしていくのは無理だ、システムの見直しをしないと仕事にならないと痛感したんです。そこで、もっと簡単に在庫管理ができるよう、既存のシステムの問題点をすべてクリアできる方法を考え、新しい在庫管理システムの開発を提案。自分で要件定義を行いました」(小林さん)。
それまでの仕事の流れを1つ1つ分析し、問題点を浮き彫りにし、そのすべてをクリアにする方法はどれか。要件定義に約1カ月、システムエンジニア(SE)と相談しながらシステムを完成させるまでに3〜4カ月かかったという。完成後には、社内向けのシステム管理のマニュアルも作った。この仕事が思いのほか面白く感じられた小林さんは、技術系の仕事がしたいと思い、転職を考えるようになった。
「新しいシステムを作ることで要件定義の経験はしたものの、システム開発の経験はない。そんな私でも、いますぐできる技術系の仕事は何だろう? そう考えたとき、真っ先に思い浮かんだのがSEでした」(小林さん)という。また小林さんの周りも「兄がSEでしたし、父も趣味でPCを相当使い込んでいました。また中学、高校時代の友達に技術系の仕事に就いている人が多いのもあり、SEという仕事を身近に感じていたのもありますね。また、その友達と話をしていると、すごく楽しそうに仕事をしているのが分かるんです。その笑顔が、技術系の仕事に進むのに一番の後押しになったと思います」(小林さん)。
女性だからこそ、考えたこともある。もし結婚をして環境が変わっても仕事はずっと続けたい。だからこそ、手に職が付けられる技術職は、魅力的に感じられた。
■未経験だから第2新卒枠を利用
転職する4カ月ほど前から、転職系のWebサイトを見始めた。そして、見始めてから1カ月後、@ITジョブエージェントに登録した。「求人の内容が良かったのもありますが、業界のことがまったく分からなかったので、業界の話をいろいろと聞けるかもしれないという期待もあり、@ITジョブエージェントに登録することにしたんです。結果、これが大正解でした」(小林さん)。
とはいえ、小林さんはIT業界はまったくの未経験。だがラッキーなことに、今年26歳になる小林さんは、年齢的に第2新卒枠を利用しての転職が可能だった。「人材紹介会社からは3〜4社ご紹介いただきましたが、受験したのはいまの会社だけでした。ほかの会社とは異なり、第2新卒枠での求人だったので、未経験者でも応募ができるうえ、入社後の教育もしっかりしているだろうと思ったのです」(小林さん)。
第2新卒枠の就職試験内容は、新卒採用試験とほぼ同じだった。筆記試験の後、1次面接、2次面接を経て、晴れて入社となる。人材紹介会社から「筆記試験が決め手になる」と聞いた小林さんは、第2新卒枠での受験を決めてから、筆記試験対策にSPI(Synthetic Personality Inventory)の問題集を1冊だけ購入した。
この1冊をパーフェクトに学ぼうと思い、1カ月間、懸命に勉強。結果、現在の会社への転職を決めた。入社後に分かったことだが、筆記試験の点数はトップクラスだったそうだ。
■入社後の研修は
入社後、まず1カ月の研修期間があった。ここでは、ExcelやAccessなどを使ってパソコンの基本動作を学び、それぞれの部署へ配属。配属先で、OJT形式での研修を受ける。ここで小林さんは、ビジネスプロセスアウトソーシングシステムの専門部署に配属され、念願のSEとしてシステム開発を行うことになった。真っ先に学んだのが、Visual Basic(VB)やOracleのPL/SQLといった言語だった。
「仕事は、思っていたとおり、すごく大変です。覚えることがたくさんあるのはもちろんですが、もともと文系ですし、やはりまだ技術知識がないのとで、ついていけないときもあります。まったく白紙の状態からチャレンジしていることなので、しばらくは、勉強勉強の毎日。でも不思議と、全然苦ではありません。これぞ、好きな仕事に就けただいご味ですよね」と小林さんは明るく語る。
同じ部署にいるのは、先輩ばかりだ。実際にソースを書いていて、どうしても分からないときに、先輩に教えてもらうことがある。でも、それがどうして動くのか、とっさには分からないことがあるそう。“習うより慣れろ”、社内にはそんな雰囲気があり、配属当初は戸惑うこともあった。でも、まずは、先輩のやっていることを見習って、それがたとえ自分に合わない仕事の方法でも、きちんとやって慣れていかないと成長にはつながらないと思いながら、日々を過ごしている。
■SEとして積極的にレベルアップを目指す
システム開発の仕事と聞くと、1人でコツコツこなすというイメージがある。
「実際に仕事をしてみて気付いたのですが、1人でコツコツやっていても、SEとしての成長できないと思うんです。いろんな人が作ったソースをたくさん見たり、いろんな人から話を聞いたり、自分から積極的にアクションを起こしていかなくちゃいけないと、転職してから、強くそう思うようになりました」(小林さん)
同年代が多く、感覚が似ている分、どこかなれ合いになっていた前職から、経験豊富な先輩たちからの刺激をたくさん受けられる現在の仕事への転職を機に、小林さんの仕事に対する姿勢は大きく変わった。
「事務の仕事とは異なり、仕事をしているだけで毎日得るものがあるから、毎日がすごく楽しい。行き詰まるときもありますけど、何でできないんだろうと一生懸命考えた結果、きちんとできたときがすごくうれしいですね。もちろん、出来上がるまでのプロセスはすごく苦しいですけど、ちょっとでもレベルアップしているのが実感できるんです。いまは特に、入社したばかりなので、毎日毎日、こんな書き方があるんだ、こんな技術があるんだと、新しい発見がある。それがとにかく新鮮で楽しいですね」(小林さん)
今後は、見やすく、分かりやすく、人から「うまい」といわれるソースを作るため、「プログラミング言語をもっとしっかり勉強したい」という。「当面の目標は、“小林が書いたソースはすごい”といわれるようなソースを書けるようになることですね。いま使っているVBはもちろん、PL/SQLをいかにうまく使ってパフォーマンスを上げ、品質の高いソフトを開発できるようになるか。それはすなわち、自分の仕事の質を上げることにもなるので、いまはデータベース系の技術を一番勉強していきたいと思っていますし、いずれは、C#などVBに代わる言語も勉強したいです」と、小林さんは語る。
担当コンサルタントからのひと言 |
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「未経験ですが、SEになりたい」とのことで、小林さんは私の元を訪ねてきました。 キャリアチェンジを希望される人の多くが、あこがれや表面上の魅力で希望されるので、まずは、SEについて実務経験を踏まえ、SEの開発現場の様子や苦労、キャリアパスなど、じっくり説明させていただきました。 小林さんは、その話を聞きながらも強い意志をお持ちのようで、目をキラキラさせながら、「ぜひチャレンジしたい」とのことで、私もぜひとも成功してご活躍していただきたいとの気持ちになりましたね。 彼女の場合は、まずはSEになることが第一優先でした。そこで未経験で応募でき、ある程度多くのプロジェクトを抱えていて、SEとしてもいろいろと進むべく道が多様な企業が理想であると考えました。そうしたことから、第二新卒の人材を募集中で、ある程度規模の大きな企業を紹介しました。 この企業の選考ポイントは筆記試験でしたので、会社説明会までにみっちり勉強してもらいました。コミュニケーション能力や仕事に対する考え方はしっかりされていましたので、正直、面接は問題ないと思っておりました。が、念には念を入れ、摸擬面接を行い、内定確度を高めることも実施。その結果、彼女は1社だけに応募してその1社から内定をいただく、という見事な成功を収めることができました。 SEの現場も、コミュニケーション能力やチームワークに欠かせない協調性、リーダーシップなど、技術面以外にも多々のスキルが要求されます。小林さんは、その点についてはまったく心配がありませんので、今後、技術力を磨かれることにより、ご活躍されることでしょう。 |
記事のためインタビューに出てくれる転職経験者募集中 |
| 本連載では、さまざまな理由で転職したITエンジニアを募集しております。なぜ転職したのかを中心にお話を聞かせてください。記事のインタビューに当たっては、実名、匿名どちらでも構いません。インタビューを受けてもいいという方がいらっしゃいましたら、次のアドレスまでお知らせください。なお、インタビューを受けていただいた方には、多少ではありますが謝礼を差し上げております。 連絡先: jibun@atmarkit.co.jp |
転職。決断のとき バックナンバー
- 第1回 経営方針についていけず、転職を決意
- 第2回 3回目の転職で、ようやく見えたキャリアの光明
- 第3回 エンジニアを究められる環境を求めて
- 第4回 転職しないことを「リスク」と感じた
- 第5回 転職は市場価値を上げる手段だった
- 第6回 技術力だけでは生き残れない
- 第7回 “技術屋”的発想から抜け出したかった
- 第8回 “孫請けエンジニア”の仕事に限界を感じた
- 第9回 技術者の焦り。上流工程を経験したい
- 第10回 技術スキルへの強い不安から3度目の転職に
- 第11回 ビジネススキルを学び、キャリアの幅を広げたい
- 第12回 派遣SEの悩み。責任ある立場で働きたい
- 第13回 上流工程への思いから“無職”の道へ
- 第14回 英語力を生かし、IT技術者として飛躍したい
- 第15回 ITコンサルタントのキャリアを目指したい
- 第16回 プログラマからWeb開発の専門家を目指す
- 第17回 下流工程に見切りをつけて「社内SE」に
- 第18回 Javaを捨ててでもWindowsを究めたかった
- 第19回 下請け現場での苦労をバネに
- 第20回 自分に合った環境だからキャリアが磨ける
- 第21回 いままでと違う仕事への夢と実現の難しさ
- 第22回 流されるうちに見えてきたものは?
- 第23回 運を味方に、2次請けから元請けへ転職
- 第24回 「このままではいられない」から始めた転職
- 第25回 必要なのは「体系立ったスキル」
- 第26回 収入が下がっても転職したい理由とは?
- 第27回 反骨心が支えたキャリアアップ
- 第28回 転職に経歴は関係ない!
- 第29回 学歴も年齢もハンデにしない
- 第30回 40代で転職できる秘けつを聞く
- 第31回 未経験から踏み出すITエンジニアの道
- 第32回 大学生とのニ足のわらじ。次の目標は?
- 第33回 Javaとの出合いでキャリアを変えた
- 第34回 マネジメントができる場を求めて
- 第35回 SAP R/3に携わりたい
- 第36回 近所の「かかりつけ医」を目指したい
- 第37回 スキルアップを続ける充実感を求めて
- 第38回 一歩ずつ着実に成長するキャリア
- 第39回 さまざまな現場を経験し、築いたキャリア
- 第40回 キャリアに人生に欲張りに生きた20代
- 第41回 行動を起こせば何かが変わる
- 第42回 スキルアップとキャリアアップを両立したい
- 第43回 フリーランスから会社員で再出発
- 第44回 私はこうしてITアーキテクトになった
- 第45回 5歳からのプログラマの選択は「.NETを究める!」
- 第46回 50歳になっても、エンジニアでいたい!
- 第47回 埋めようのない、会社との意識の差。どうする?
- 第48回 都心からの引っ越し。地方で転職先を探す難しさ
- 第49回 自力でつかんだネットワークスペシャリストへの道
- 第50回 遠回りして気付いた、「ITエンジニアこそが天職だ」
- 第51回 現職に不満はない。でも英語を使って仕事をしたかった
- 第52回 会社が倒産してもめげない「流浪エンジニア」の遍歴
- 第53回 「3日+5分」で転職が決まった情熱派中国エンジニア
- 第54回 不況をものともせず、SIerからWeb企業へ転職する
| @自分戦略研究所の転職関連の記事一覧 | |||
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