第43回 フリーランスから会社員で再出発
加山恵美
2007/8/8
転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおり仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由かもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断について尋ねた。 |
今回の転職者:佐々木浩二氏(30歳) |
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大学卒業後、大手電機メーカーの関連会社に入社。同社が運営するプロバイダ事業で、ネットワークの運用から会員サポートまで幅広い業務を担当する。その後、金融系の開発プロジェクトに参加し、開発を始めるが、会社の行く末に不安を感じ退社。フリーランスとして働き始める。30歳を前にして1年間オーストラリアにワーキングホリデーに行く。現地でシステム開発業務などを行う。帰国後、再びフリーランスとして働き始めるが、業務の中での制約によりフリーランスの限界を感じ、正社員に戻ることを決意した。 |
今回の転職者は、学生時代に数学を専攻し、IT企業に入社した。数年勤めた後にフリーランスのエンジニアとなり、社会や経済を実体験で学んできた。最近になり@ITジョブエージェント経由で再び会社員に戻ることにした。
■「ドラクエの作り方、教えてください」
子どものころから物事の仕組みに興味を持つ探求心旺盛(おうせい)なタイプだったようだ。ミニ4駆を分解してモーターを取り出したり、また違う形に組み立てたりしたこともあった。学研の『科学』といった雑誌でコンピュータ(MSX)特集を見て、プログラミングにも興味がわいた。「最初は“if then”の文法も分かりませんでしたが、頭の中でプログラミングを想像したりしていました」と佐々木氏。
初めて手にしたコンピュータは中学1年生のときのMSXだった。当時はファミコンブームでもあり、「ドラゴンクエスト」の「ロト三部作」とも呼ばれるIからIIIが1年おきにリリースされていたころだ。このころのドラクエはMSX版も出ており、佐々木氏はファミコン雑誌を頼りに問い合わせしてみたという。
「当時インターネットなんてなかったですからね。雑誌からエニックス(現スクウェア・エニックス)に電話して『ドラクエの作り方を教えてください』と質問したことがあります。『実はこちらでは開発はしていないのですよ』といわれてしまいました(笑)」
大学は文学部や経済学部も受験したが、最終的には授業料免除が可能な国立大学の数学科を選んだ。「数学科なら勉強しなくて済むからです」という。数学なら公式から答えを導くことができる。恐らく佐々木氏にとって暗記に頼る教科より、理論や思考で導く教科の方が得意だったのだろう。
■博士課程より「システム屋になりたい」
あまりがむしゃらに努力するというのは好まないようだ。しかしそうはいいながらも、努力すべきところは努力している。数学の理論力は付け焼き刃の努力では身に付かない。
佐々木氏が選んだ数学科は入学後の授業が厳しく、同級生の半分が留年するような状態だった。しかし佐々木氏は「授業料免除がかかっていましたから」と留年はしなかった。そこにはきっと地道な努力があったはずだ。
卒業後は同じ大学の大学院に進むことにした。就職氷河期時代だったせいか、就職活動はどこか気が進まなかったという。大学院ではプログラミングの講師でアルバイトをしたこともあった。主にBASICやFORTRANで、2次方程式の解を出すための簡単なプログラムを作成した。
大学院の修士課程が終わるころ、再度進路を考えた。博士課程だと論文などやるべきことが多い。加えてその大学には博士課程はなかった。ほかの大学への入学準備や進学後のことを考えると、博士課程はあまりいい選択肢とは思えなかった。
そこで佐々木氏は「それよりもシステム屋で働きたい。プログラマでは食っていけないだろうから、システム屋に就職した方がいいだろう」と考えた。就職活動では横浜にあるベンチャーや出身地京都のIT企業などにも応募した。
しかし最終的には大学に近くにあった大手電機メーカーの関連会社に就職することにした。そこはプロバイダ事業が主だった。まだISDNやADSLが混在していたころだ。ネットワークの運用から会員サポートまで幅広い業務を担当していた。
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