
第48回 都心からの引っ越し。地方で転職先を探す難しさ
加山恵美
2008/5/29
| 転職が当たり前の時代になった。それでも、転職を決断するのは容易なことではない。スキルを上げるため、キャリアを磨くため、これまでと異なる職種にチャレンジしたり、給料アップを狙ったり――。多くのエンジニアが知りたいのは、転職で思ったとおりの仕事ができた、給料が上がった、といったことではなく、転職に至る思考プロセスや決断の理由なのかもしれない。本連載では、主に@ITジョブエージェントを利用して転職したエンジニアに、転職の決断理由を尋ねた。 |
今回の転職者:月岡健史氏(仮名・34歳) |
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| 新卒で就職した会社で、10年近くエンジニアとして働いた後、都心からやや離れた土地に住居を移すことになった。しばらくは遠距離通勤をしたが、やはり住居から近い所で安定した職に就きたいと思い、転職を決断した。 |
今回登場の転職者、月岡健史氏は、引っ越しをきっかけに転職に踏み切ったエンジニアだ。所属していた会社では人材の流動が激しく、安定した職場環境を求めたことも理由の1つだった。
引っ越し先は都心から離れていたため、転職活動においては待遇や募集の少なさに不安を感じることもあった。しかし結局は希望にかなう転職先を見つけ、新天地へと向かうことができた。地理的な壁を、月岡氏はどのようにして克服したのか。
■新人研修の後には営業部に配属
月岡氏が就職したのは、いわゆる就職氷河期のさなかのことだった。就職活動は簡単にはいかなかったが、結局は就職フェアが縁で親身に話を聞いてくれたIT系の会社に就職することにした。社員規模は150人ほど、システム提案から構築、保守までを総合的に請け負う会社だった。
学生時代にコンピュータを学んでいたわけではない。レポートの作成や趣味でパソコンに触れる程度だった。本格的にITのスキルを学んだのは新人研修から。その会社特有のアットホームな雰囲気の中で、Visual Basicやワープロ操作など基礎的なことを約3カ月間学んだ。
意外だったのは、新人研修後の配属だった。ほかの新人は全員開発の部署に配属されたが、月岡氏だけは「まずは営業で。広い視野を持つのも勉強だから」と営業の部署に配属されたのだ。
新人エンジニアを営業に配属するテストケースとして、たまたま月岡氏が指名されたようである。とはいえ、指名された側には戸惑いもあった。同期の仲間たちから1人だけ離され、疎外感もあった。
■2年目からは開発部へ。エンジニア人生を歩む
営業には配属されたが、営業活動に専念していたわけでもなかった。営業部内のこまごまとした開発を行っていたのだ。「開発部に振るほどでもない、小規模な開発案件をこなしていました」と月岡氏はいう。営業部専門の開発要員といったところだろうか。
試験的な配属とはいえやや不自然な状態であり、月岡氏本人も開発部を希望したことから、2年目からはあらためて開発部に配属となった。同期の仲間たちは月岡氏の合流を歓迎してくれたという。
その後は特段変わったこともなく、順調にエンジニア人生を歩んできた。業務内容としては、10人ほどのチームでVisual Basicを中心に開発を行うことが多かった。さまざまな業界の業務アプリケーションに携わり、受託開発や客先への常駐も経験した。
Visual BasicやJavaを中心に、独学でスキルを伸ばしていった月岡氏は、次第に「ずっとエンジニアとして働いていきたい」と考えるようになっていった。
5年目くらいからは、チームリーダーも任されるようになった。しかしこのころから月岡氏は、社内で人の出入りが激しいことが気にかかるようになってきた。新人の採用数が多いため若手は大勢いるのだが、中堅社員があまりいないのだ。
■空洞化する組織と自宅の引っ越し。転職を意識するように
なぜか。中堅以上の社員に、退職者が多いからである。「30歳前後で退職する人が多いようでした。周囲にあまり相談することなく辞めてしまうのです」と月岡氏はいう。それを強く実感したのは、月岡氏自身が30歳を越えた年だ。その年以降、同期が3人、管理職が5人ほど連鎖的に辞めた。
若手が次々に流入するため社員規模は変わらないが、月岡氏は自分の周囲が空洞化していくようなイメージを抱いた。自分と一緒にやっていく年齢の近い社員、自分が頼りにする年上の社員が減っていく。若手が仕事を任せられるほど成長するまでには時間がかかりすぎる。このまま会社に残ることに不安を覚えた。
一方、私生活でも変化があった。家族の事情で引っ越しをすることになったのだ。上野駅から特急を使って1時間半という距離に、である。
会社は特急料金を含めて交通費を支給してくれたが、このころから月岡氏は転職を意識するようになってきた。上記のような不安に加え、自宅と会社の距離を考えると、そう長く勤められるとは思えなかったからだ。
「年を重ねてから転職するのは不利になる。早めに転職先を決めた方がいいのではないか」との考えもあった。月岡氏もほかの退職者同様、静かに転職の準備をし始めた。
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転職。決断のとき バックナンバー
- 第1回 経営方針についていけず、転職を決意
- 第2回 3回目の転職で、ようやく見えたキャリアの光明
- 第3回 エンジニアを究められる環境を求めて
- 第4回 転職しないことを「リスク」と感じた
- 第5回 転職は市場価値を上げる手段だった
- 第6回 技術力だけでは生き残れない
- 第7回 “技術屋”的発想から抜け出したかった
- 第8回 “孫請けエンジニア”の仕事に限界を感じた
- 第9回 技術者の焦り。上流工程を経験したい
- 第10回 技術スキルへの強い不安から3度目の転職に
- 第11回 ビジネススキルを学び、キャリアの幅を広げたい
- 第12回 派遣SEの悩み。責任ある立場で働きたい
- 第13回 上流工程への思いから“無職”の道へ
- 第14回 英語力を生かし、IT技術者として飛躍したい
- 第15回 ITコンサルタントのキャリアを目指したい
- 第16回 プログラマからWeb開発の専門家を目指す
- 第17回 下流工程に見切りをつけて「社内SE」に
- 第18回 Javaを捨ててでもWindowsを究めたかった
- 第19回 下請け現場での苦労をバネに
- 第20回 自分に合った環境だからキャリアが磨ける
- 第21回 いままでと違う仕事への夢と実現の難しさ
- 第22回 流されるうちに見えてきたものは?
- 第23回 運を味方に、2次請けから元請けへ転職
- 第24回 「このままではいられない」から始めた転職
- 第25回 必要なのは「体系立ったスキル」
- 第26回 収入が下がっても転職したい理由とは?
- 第27回 反骨心が支えたキャリアアップ
- 第28回 転職に経歴は関係ない!
- 第29回 学歴も年齢もハンデにしない
- 第30回 40代で転職できる秘けつを聞く
- 第31回 未経験から踏み出すITエンジニアの道
- 第32回 大学生とのニ足のわらじ。次の目標は?
- 第33回 Javaとの出合いでキャリアを変えた
- 第34回 マネジメントができる場を求めて
- 第35回 SAP R/3に携わりたい
- 第36回 近所の「かかりつけ医」を目指したい
- 第37回 スキルアップを続ける充実感を求めて
- 第38回 一歩ずつ着実に成長するキャリア
- 第39回 さまざまな現場を経験し、築いたキャリア
- 第40回 キャリアに人生に欲張りに生きた20代
- 第41回 行動を起こせば何かが変わる
- 第42回 スキルアップとキャリアアップを両立したい
- 第43回 フリーランスから会社員で再出発
- 第44回 私はこうしてITアーキテクトになった
- 第45回 5歳からのプログラマの選択は「.NETを究める!」
- 第46回 50歳になっても、エンジニアでいたい!
- 第47回 埋めようのない、会社との意識の差。どうする?
- 第48回 都心からの引っ越し。地方で転職先を探す難しさ
- 第49回 自力でつかんだネットワークスペシャリストへの道
- 第50回 遠回りして気付いた、「ITエンジニアこそが天職だ」
- 第51回 現職に不満はない。でも英語を使って仕事をしたかった
- 第52回 会社が倒産してもめげない「流浪エンジニア」の遍歴
- 第53回 「3日+5分」で転職が決まった情熱派中国エンジニア
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