第2回 2次請けから元請け。IT業界でステータスを上げたい!
アデコ 山口孝之
2008/8/8
目的別の実例を挙げながら、転職における成功・失敗の要因を探る。皆さんの参考となる「道」を探してほしい。 |
転職理由に着目した連載「転職目的別・これが私の生きる道」。「第1回 もっと給与をアップさせたい!」に続いて、今回は「ステータスを上げたい」という目的を取り上げます。
IT業界のプロジェクトは、たくさんの企業の協力体制で成り立っていることが多いものです。その中で働くITエンジニアには、さまざまな立場や役割の人がいます。企業が中途採用をする場合にも、候補者の立場や役割などから自社が採用したい人材か否かを判断していると聞きます。
今回は、さまざまな立場や役割がある中、ステータスを上げることをテーマに転職をした人の実例を挙げ、成功のポイントを解説したいと思います。
■自分の会社に誇りを持てない瀧田さん
瀧田さん(仮名)は29歳のITエンジニア。大学の情報系学部を卒業後、ソフトハウスでオープン系のシステム開発に従事して6年になります。転職を希望し、当社の人材紹介サービスに登録に来たのです。
「瀧田さんが転職を考えている理由を教えていただけますか」
「転職を考えている理由は、ひと言でいうと、自分の会社に誇りを持てないというか……」
瀧田さんはそういって口ごもるのです。
「会社に誇りを持てない? いまの会社が好きではないのですか」
「好き、嫌いの問題ではなくて、いまの職場では自社の名前を出せないのです。自社と顧客の間に大手シンクタンクが入っていて、私もそのシンクタンクの人間として仕事をしているもので……」
当時瀧田さんがかかわっていたプロジェクトは、証券会社向けの基幹システムの導入に関するものでした。瀧田さんの会社は、エンドユーザーからこの仕事を請けた大手シンクタンクの協力会社としてプロジェクトに参画しているとのことでした。
プロジェクトは外部設計のフェイズで、この工程に参加している14人のうち、11人は瀧田さんの会社の社員だそうです。なのに表向きはシンクタンクの受注案件になるので、自社の名前を出しづらいとか。
「他社の名前で仕事をしていても、『やりがい』が持てないというか……。例えば、現在のプロジェクトで残した実績は、当社の実績にはならないでしょう。いや、本当はなるんでしょうけど、会社のWebサイトやパンフレットに顧客の実名を出してはPRできないでしょうし……。一生懸命頑張ってカットオーバーを迎えたときも、顧客から感謝の言葉をかけられるのはシンクタンクの協力会社としての私ですよね。やっぱり自分の会社の名前で仕事がしたいなと思います」
瀧田さんは仕事のやりがいを得るため、協力会社の立場から元請けの立場へと「ステータスを上げる」ことを求めていたのです。
■直請けでやりがいを持って働ける環境に
そこで私は、システムの構築をエンドユーザーから直接請け負える会社の求人をいくつか提案しました。瀧田さんはその中から4社に応募しましたが、1社を除いてすべて書類選考で見送られてしまう結果に。残った1社も、面接で不合格となってしまいました。
瀧田さんが応募した4社は、業界でもトップクラスの大手企業ばかりでした。非常に難関であることは事前に分かっていたのですが、それでも瀧田さんは落ち込んでいました。
やはり瀧田さんにも、大手企業へのあこがれがあったようです。私は瀧田さんに、会社の規模は重視せず、エンドユーザーから直請けで仕事ができることを第一に考えて転職活動をするよう勧めました。
大手企業の顧客には、経済界を代表する大企業が少なくありません。顧客がその業界でのリーディングカンパニーであれば、先進的な大規模プロジェクトにかかわる機会も多いかもしれません。でもいかんせん、大手企業に入るのは難しいのです。それならプロジェクトの大小にこだわらず、さまざまな分野に目を向けるなど、少し観点を変えれば十分にチャレンジ可能な会社はあると思ったのです。
瀧田さんは新たに数社の企業に応募し、その中で証券会社向けのシステム開発事業に特化した企業に転職しました。社員数約200人の、決して大手とはいえない会社ですが、証券業務のフロントからバックオフィスまでの実績が豊富な会社でした。
数カ月たって、瀧田さんからメールをもらいました。自社に誇りを持ち、やりがいを感じられる仕事を得たことへの感謝のメールでした。
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