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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第9回 やっぱり、プロマネ経験がないとダメ?

アデコ
藤田孝弘
2007/9/21

数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。

 一般に、35歳を過ぎると転職は難しいといわれています。その理由の1つに、年齢が高ければ求人企業はそれに見合ったスキルや経験を求めるということがあると思います。年齢の高いITエンジニアに企業が求めるスキルのうち代表的なものが、プロジェクトマネージャ経験でしょう。

 それでは、プロジェクトマネージャ経験のない35歳以上のITエンジニアがキャリアアップ転職を志した場合、どうしたらいいのでしょうか。そういった転職は可能なのでしょうか。

 今回は40代でキャリアアップ転職に成功した2人のITエンジニアの事例を基に、40代でのキャリアアップの可能性について検証していきたいと思います。

順調なキャリアが一転

 山崎さん(仮名)は43歳の業務系SE。大学を卒業後、銀行系のシステム会社に入社し、今年で18年目になります。入社当時は第3次オンラインシステムの開発を担当。その後債券・株式などの業務システムを中心に経験し、5人ほどのメンバーを率いるリーダーとして経験を積んできました。

 順調にキャリアを積む彼の周辺に異変が起こり始めたのは、1990年代の後半、銀行の再編に伴うシステム統合のプロジェクトが盛んだったころからです。統合プロジェクトが完了すると同時に、子会社である山崎さんの会社は大手SI(システム開発)企業の傘下に入ることが決まりました。会社の方向性は一変し、これまで銀行業務のみであったところから、総合金融の幅広い領域をカバーすることになったのです。一貫して銀行業務でキャリアを積み上げてきた山崎さんには、少し戸惑いがありました。しかし、プロジェクトに忙殺される日々。自分のキャリアを考える暇もなく、継続就業を選びました。

 新会社は、親会社が受注した案件に携わる会社、つまり2次請けSI企業という位置にあります。さらにこれまでと異なる事業領域の、オープン系システムなどの新たなスキルが必要なプロジェクトにアサインされるため、リーダー経験の豊富な山崎さんが、いまではサブリーダーとしてプロジェクトに参加せざるを得ません。

 これまで、銀行に特化したSI企業で順調なキャリアを積んできた山崎さん。いよいよ自分の将来に不安を感じ始めました。大規模システム、新しい領域を経験できるということを励みに仕事に臨みますが、不安は解消できませんでした。

自分の市場価値を知ってがく然

 思い余った山崎さんは、人材紹介会社に相談を持ちかけました。自分の市場価値を知るためです。数社を訪問し、情報収集をしましたが、山崎さんが入社を希望するような会社の募集は、プロジェクトマネージャ経験を求めるような案件ばかり。初めて現実を見た山崎さんは、がく然としました。そして、もっと早く転職を考えていればとこれまでのことを悔やみました。

 時期的には、転職市場が好転してきたころのことです。山崎さんは私の元に相談に来ることになりました。

 まず私は、じっくり山崎さんの話を聞きました。そしてその中で、山崎さんの特徴として次の2点に注目しました。

1.銀行業務の深い知識を持っている点。特化した経験と知識は、マネジメント経験の不足をカバーできることが予想されます。地方銀行のシステム移行のプロジェクト受注が新聞で盛んに報道されている時期でもあり、さらにその可能性を感じました。

2.謙虚な性格で、人物が優れている点。企業に好印象を与えることができる人でした。

活動開始、そして……

 そこで私は、次のような提案をしました。「確かにプロジェクトマネージャ経験を必須にする企業もありますが、すべてがそのような会社ではありません。山崎さんの興味のある会社を具体的にピックアップし、その中で可能性を見てみませんか」。山崎さんは喜んでこの提案を受け入れてくれました。そして私は数ある企業の中から、銀行、証券業務に特色がある企業を複数ピックアップしました。

 可能性を広げるためにSI会社・ベンダ・事業会社の社内システム部門を含む10社程度の企業を選んでいましたが、その中からさらに4社に絞り、調査を開始しました。2社からはプロジェクトマネージャ経験がなければ無理だといわれたのですが、残りの2社からは書類を見て検討したいという返事がありました。

 書類を送付すると、すぐに両方の会社から、面接に進んでほしいという連絡が来ました。1社は大手ハードウェアベンダ、もう1社は証券会社でシステム部門での募集です。

 面接もとても順調に進みました。驚いたことに大手ハードウェアベンダでは、通常3回の面接を行うところ、1回の面接で内定を得ることができたのです。

 最終的には両方の会社から内定をもらうことができました。山崎さんは高く評価され、提示された給与の金額も現職を上回るほどでした。山崎さんは迷うことなく大手ハードウェアベンダを選択し、入社する決意を固めました。

 山崎さんは現在、地銀システムのプロジェクトのリーダーとして大いに活躍しています。プロジェクトマネージャとして活躍する日もそう遠くはないでしょう。

もう1つの例を紹介。社内SE、岸本さんのあこがれと現実とは?  

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