第18回 「汎用機エンジニアに未来はない」はウソである
アデコ
大田耕平
2008/11/12
数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。 |
技術の移り変わりが激しいIT業界。ほんの数年前に聞いた技術用語が、すでに過去のものになっていることもあります。「自分の持っている技術はまだ通用するのか?」と不安に感じている人は多いのではないでしょうか。
私自身、キャリアコンサルタントとして、「会社やプロジェクトの方針で、新しい技術を身に付けられない」と悩んでいるITエンジニアからの相談を受けることが少なくありません。
しかし、「新しい技術」であれば何でもいいのでしょうか? これまでに身に付けた「古い技術」は、何の役にも立たないのでしょうか?
もちろんそんなことはありません。今回は、汎用機のシステム開発を行うITエンジニアが、その経験を大いに生かしてキャリアチェンジ転職に成功した例を紹介したいと思います。
■汎用機エンジニアの山根さん
山根さん(仮名)は30歳のITエンジニア。私が会ったときには、新卒で入社して8年目でした。それまで一環して、汎用機によるシステム開発に従事していました。
学生時代の就職活動では大手メーカーや金融機関を片っ端から受けたそうです。しかし不景気だったこともあって思うような結果を出せず、知人の紹介でソフトハウスであるA社に入社したとのことでした。
A社は社員数50人ほどの、3〜4次請けの立場での開発案件を中心に扱う会社です。組織立った教育制度のようなものはありませんでした。学生時代、経済学を専攻していた山根さんは、プログラムのイロハから始め、実務を通じて基礎知識を学んだのでした。
もともと学習意欲の高い山根さんは、貪欲に技術知識、業務知識を身に付けました。入社5年目からは、1つのサブシステムのリーダーを任されるようになりました。メンバーは1〜2人と決して多くはありませんでしたが、山根さんは士気の高いチームをつくることに充実感を覚え、着実にキャリアアップしていました。
■会社の業績不振のため、転職を考える
そんな山根さんに転機がやってきたのは半年前のことです。原因はA社の業績不振でした。
A社の社長はメーカー系システムインテグレータ(SIer)の出身であり、当時の人脈によって、それまで安定して案件を得ていました。しかし、クライアントである精密機器メーカーが社内システムの海外へのアウトソーシングを決定したため、定期的な案件の受注が困難になってしまったのです。
年間4カ月分支給されるはずのボーナスはカットされ、給与の遅配も始まりました。従業員の将来を気遣ってか、普段は気の強い社長自らが転職活動を勧め始めたのです。
■オープン系へのキャリアチェンジを計画
この機会をとらえ、山根さんはオープン系システム開発エンジニアへのキャリアチェンジを計画しました。
山根さんは、汎用機による開発経験しかないことをコンプレックスに感じていました。職場では、山根さんより5歳若いオープン系の開発経験のある後輩が「仕事ができる人!」と周りのITエンジニアからチヤホヤされています。「汎用機にしか触れたことがない自分。そのうち仕事がなくなるのではないか?」と、肩身の狭い思いをしていたのです。
キャリアチェンジを目指して転職活動を始めた山根さんですが、そう簡単に良い結果を得ることはできませんでした。面接を受けた企業のほとんどで、「年収はダウンするけど大丈夫?」と聞かれたそうです。簡単には承諾できないような大幅なダウンだったそうです。現在の生活や将来のことを考えると、とても厳しい条件が提示されていたのでした。
汎用機での開発経験は、実は大きな武器になる |
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