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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第17回 「少数派」が武器になる女性エンジニアの転職活動

アデコ
高野和幸

2008/10/7

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数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。

女性であることは、キャリアアップの障害?

 私はこの連載で過去に2回、女性エンジニアの転職事例を紹介しました(第13回「『前向き』な転職理由じゃないとダメでしょ?」、第14回「私生活を犠牲にしなければ、成功できないの?」)。

 女性が将来のキャリアプランを考えるときには、仕事のことだけでなく、結婚や出産、育児など、その後の生活に大きな影響を与えるイベントについても念頭に置く必要があると思います。転職活動のお手伝いの際には、私もその点に十分注意しています。

 最近では、育児休業の期間延長、短時間勤務制度やフレックスタイム制、裁量労働制などで柔軟に勤務時間をコントロールできるようにするなど、配慮する企業も増えてきたように感じます。

 ところが、女性エンジニア本人からは、「ITエンジニアとしてのキャリアアップを考えるとき、女性だと不利ですよね?」との質問を受けることが少なくありません。

 まだまだ男性が多いIT企業においては、女性を受け入れるのが「面倒」なのではないかとの根強い不安が、そうした考えの根底にあるように思います。

 女性であることは、本当にITエンジニアとして不利な条件なのでしょうか? 今回はあるITエンジニアの転職事例から、この疑問を検証してみたいと思います。

転職で大規模プロジェクトに挑戦したい江本さん

 江本さん(仮名)は、中堅規模のシステム開発会社に入社して4年目のITエンジニア。クライアントである大手システム開発会社に常駐して、生命保険会社向けの業務システムの開発に携わっていました。

 大学時代を家政学科で過ごし、パソコンの接続にも苦労していたような筋金入りの自称「ITオンチ」でしたが、先輩からの誘いでなんとなく飛び込んだITエンジニアの世界にはまり込み、いまでは難しい技術雑誌にも目を通すような「IT大好き人間」に。将来はそんな雑誌から執筆を依頼されるようなITエンジニアになりたいと夢見ていました。

 常駐先では、豊富な知識と堅実な仕事ぶりが評判となり、若くしてサブリーダーを任されるなど、厚い信頼を得ていました。

 ただ、現在の会社で受注しているプロジェクトは小規模なものが多く、江本さんの希望である「大規模なプロジェクトで実績をつくる」という目標をかなえる機会はなかなか得られません。ステップアップのためには、いよいよ転職も視野に入れる必要があるのかなと漠然と考えていました。

 一方、プライベートでは、学生時代から交際している恋人がいました。実は最近、彼から正式にプロポーズをされ快諾。結婚に向けて準備を着々と進めている段階でした。

 江本さんは普段から業務の効率化を意識し、家事との両立については自信を持っていました。結婚すること、転職することについて、何の障害も感じていなかったのです。

結婚していると、採用されない?

 ところが、いざ転職活動をスタートし、人材紹介会社を利用していくつか興味のある企業への応募を済ませたばかりのある日のこと。恒例の会社主催の親睦会での社長のひと言で、大きな不安を抱えてしまうことになったのです。

 お酒が進んでかなり冗舌になっていた社長が話題にしていたのが、先日行った中途採用者の面接のこと。面接に来た女性を「結婚している」という理由で見送りにしたと話しているのを聞いてしまったのです。

 隣にいた女性の先輩がなぜかと尋ねたところ、社長は働く女性に対する理解はあるのだが……と前置きして、「結婚しているということは、いつ子どもができるか分からないということ。もし入社して、プロジェクトにアサインされてすぐにそうなったら、常駐先のお客さまに迷惑をかけてしまうことになる。新卒なら可能性はあるが、中途では難しい」と答えていました。

 そのとき周りの男性の多くが納得した顔でうなずいているのを見た江本さんは、自分も同じような評価を受けることになのではないかと感じ、がく然としました。遠くない未来に子どもが欲しいとも考えていただけに、ショックはより深いものとなってしまったのです。

 その後、江本さんの経歴を見て、ぜひ面接に来てほしいと声をかけてくれた企業は数多くありました。しかし面接の場になると、「結婚のことを聞かれたらどうしよう」と落ち着かない気持ちになってしまい、仕事のことでさえスムーズに話すことができなくなってしまったため、結果は散々なものでした。

女性であることは、むしろ個性や武器でもある  

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