第6回 もうプロマネは嫌。プログラマに戻りたい!
アデコ
辻貴由
2007/10/12
■本当に嫌だったものは何なのか
果たして宮崎さんは本当に、すべてのマネジメント業務を拒否したいのでしょうか。よくよく話を聞いてみると、実はそうではないということが分かってきました。
辻(筆者) どうしてマネジメント業務をそんなにかたくなに拒否されるのですか。
宮崎 コーディングが好きでこの仕事に就いたのに、現在はマネジメントばかりで、コーディングがまったくできないのです。マネジメントにはもうこりごりなんです。
辻 具体的に、マネジメントのどういうところが嫌なのでしょうか。
宮崎 本来、営業担当がすべき顧客とのお金の交渉まで私が担当しているのです。ITエンジニアとしてシステムを作り上げることに集中できない環境に、嫌気が差している状態です。
辻 なるほど……。それでは、お金の交渉以外のマネジメントについてはどうですか。工程管理、品質管理などシステム開発の現場寄りの業務なら、問題ないのではないですか。
宮崎 ……。そういわれればそうかもしれません。
辻 本来の業務ではない金額交渉を担当させられたことが原因で、すべてのマネジメント業務から逃げ出したいと思い込んでしまっただけではないですか。もちろん、宮崎さんの中で、コーディングをしていきたいという気持ちが強いのは理解していますよ。
宮崎 確かにそのとおりですね。
辻 今後の方向として、営業とITエンジニアの役割分担がきっちりしているソフトウェア会社でのプロジェクトリーダークラスを考えてみるというのはどうでしょうか。いままでの経験を生かせますし、企業も即戦力として採用を検討すると思いますよ。
宮崎 おっしゃるとおりですね。その方向で今後の転職活動をしていきたいと思います。
宮崎さんがプログラマを強く志し、マネジメント業務を拒否したのは、営業が担当すべき金銭面の交渉までを押し付けられたことが原因だったのです。その結果すべてのマネジメント業務が煩わしくなり、ITエンジニアとしての本来の開発業務に没頭したいという思いが強くなり過ぎたということでした。上記の対話によって、冷静に考えれば工程管理、協力会社管理などはそれほど苦ではないということに、宮崎さんは気付くことができました。
その後宮崎さんは、マネジメントから設計、コーディングまで担当できる規模の企業にターゲットを絞り、あらためて転職活動を開始しました。そして無事に2次請けの中堅ソフトウェア会社へプロジェクトリーダーとして転職することが決まりました。いまでは常駐先のリーダーとして、マネジメントからコーディングまで幅広く担当し、大変忙しいけれども充実した日々を送っています。
■考えをしっかり持ち、かつ固執し過ぎない
すべてのITエンジニアがマネジメント業務を望んでいるわけではありません。スペシャリストを希望する人もいます。ただIT業界には、マネジメント業務に携わることがキャリアアップであるという雰囲気があるため、宮崎さんのような場合、転職活動で順調にいかないこともあります。もちろん、企業によってはマネジメントコースとスペシャリストコースを分けたキャリアパスを用意しているところもあります。今後はこういうキャリアパスを組み入れた企業がもっと増えてくるのではないでしょうか。
転職に正解・不正解はありませんが、自分の考えや思いに固執し過ぎているために世間のニーズとマッチしないことはあります。考えをしっかりと持つことは大変重要なのですが、あまりにニーズとミスマッチであれば、転職活動は苦戦します。
そんなときは、もう一度自分を見つめ直してみてください。譲れる部分と譲れない部分をしっかりと再確認したうえで転職活動をすれば、きっとうまくいくはずです。
1人で転職活動をしている場合、知らず知らずのうちに自分の価値観に固執してしまう傾向があると思います。そのときは、第三者の意見も耳に入れることが必要になるでしょう。1つの選択肢として、人材紹介会社を利用することも考えてみてはいかがでしょうか。
今回のインデックス |
もうプロマネは嫌。プログラマに戻りたい! (コーディングがしたいのに) |
もうプロマネは嫌。プログラマに戻りたい! (プロマネを拒否した本当の理由) |
筆者プロフィール |
アデコ 人材紹介サービス部 関西支社 コンサルタント 辻貴由 大阪府出身。大学卒業後、メーカー系ソフトウェア会社へ入社。約7年間SEとして官公庁・電力・交通システムの開発を数多く経験。同社を退職後、アデコへ転職。現在IT業界専門のコンサルタントとして、ITエンジニアの転職支援に従事。求職者のビジョンとスキルをうまく調和させたキャリアプランの提案を心掛けている。 |
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