第10回 あこがれの先輩につられて転職。しかし……
アデコ
大田耕平
2008/2/19
| ITエンジニアは、どのような理由で転職を考えるのか。いくつかの事例から、転職者それぞれの課題と解決のプロセスを紹介する。似たような状況に陥ったときの参考になるだろう。 |
「ウチの会社に来ないか？」「いつか一緒に働こうよ」。お酒の席や喫煙所などで、このように誘われた経験はないでしょうか。
誘われれば悪い気はしないものですし、ワクワクすることもあるかと思います。しかし、もし正式にオファーを受けたなら、いま一度冷静になって考える必要があるのではないでしょうか。
今回は、知人の紹介による転職がきっかけで、再度転職を考えなくてはならなくなったITエンジニアのケースを紹介します。
■3度目の転職を考える小杉さん
ある日のことです。その半年ほど前に私が転職活動のサポートをしたITエンジニア、丸山さんから1本の電話が入りました。
「お久しぶりです。実は私の元同僚で、相談に乗ってほしい人がいるんです。転職するかどうかはまだ分からないのですけれど、話だけでも聞いてもらえないでしょうか」とのことでした。
丸山さんから紹介された小杉大輔さん（仮名・30歳）は、従業員25人ほどの創業間もない会計パッケージベンダにてシステム開発に携わっているシステムエンジニアでした。
小学生のころからBASICなどでプログラミングを経験していた小杉さんが、高校卒業後迷うことなくIT業界に飛び込んだのはごく自然なことでした。アプリケーションの運用監視から業務を開始し、テスト、プログラミング、設計と順調にキャリアを積み、直近2〜3年は会計ソフトウェアの開発を担当しているとのことでした。
初めて会ったときの小杉さんの深刻な表情は、いまでもすぐに思い出せるほどです。履歴書を拝見したところ、その1年前と半年前に転職をしていました。深刻な表情と合わせ、何かの壁に突き当たっているようにも感じられました。
「実は、転職から半年ほどしかたっていないのに、また転職を考えてしまっているんです……」
■2度目の転職。それが恐怖の始まりだった
小杉さんは、1年前まで丸山さんと同じ会社に勤めていました。あるとき、仲の良い先輩が会計業務に強みを持ったシステムインテグレータに転職。その直後から「ウチの会社に来ないか？」と強く誘われ、それをきっかけに8年間勤めた会社に別れを告げて転職したのです。より上流工程に携われるということで、小杉さんにとっても決して悪くない話でした。
しかしそれから半年後、当の先輩が、ヘッドハンティング会社から紹介された小規模ながら自社の会計パッケージを持っているベンチャー企業に転職してしまったのです。
再び先輩から「いずれはプロジェクトマネージャとして100人月の案件を任せたい」と誘われた小杉さん。自社製品の開発に携われることも、給与も魅力的でした。短期間での再度の転職は気になりましたが、先輩が転職した以上このまま残っても仕方ないと判断し、誘われるままに転職したのでした。
しかし入社して間もなく、さまざまな課題が浮き彫りになり、それが小杉さんを恐怖へと陥れることになったのです。
| 先輩に誘われるまま、再度の転職。しかしその会社の正体は…… |  |
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