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転職活動で気を付けるべき5つの落とし穴

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/7/24

2007年6月、東京・新宿で「アデコキャリアセミナー エンジニアキャリアフォーラム2007」が開催された。パネルディスカッション「先輩の事例から学ぶ、売り手市場下の転職リスク」では、2人の転職経験者を迎え、その体験談から転職活動で陥りやすい落とし穴について探った

 パネルディスカッションは、転職によって自分の描くキャリアプランを実現したITエンジニアの2人、それぞれ別々のシステムインテグレータに勤務するA氏とB氏に加え、アデコ 人材紹介サービス部 コンサルタント 大田耕平氏、進行役として@IT自分戦略研究所 発行人 小林教至で行われた。

 A氏は30歳で現在3社目の会社、B氏は37歳で現在4社目の会社で働いている。この2人の転職活動の経験談から、陥りやすい落とし穴を回避するポイントを見ていこう。

その1:家族への相談を忘れずに

パネルディスカッションの様子。参加者はパネラリストの経験談を真剣に聞いていた

 家庭を持ったこと、下請け企業に対する将来への不安から転職を考え始めたというA氏。2005年の秋から転職活動を開始し、2006年の年明けに企業から内定が出た。A氏が家族に転職の意思を打ち明けたのは何と内定が決まってからだという。居住地や給与など、現状の生活を維持できる転職だったので、問題にならなかったそうだが、大田氏によると「家族に相談なしの転職活動はリスクが高い」という。

 大田氏は「転職をすると給与額だけではなく、年俸制など給与の支払い方法も変わる可能性があります。家計の管理を奥さんがされている家庭もありますし、事前にご家族に相談された方がよいと思います」とアドバイスする。

 A氏のケースのように、家族がすんなり転職を受け入れてくれる場合もあれば、家族の反対で転職活動が難航するケースもある(転職にパートナーが反対したときにどうします?)。事前に相談しておくに越したことはない。

その2:複数企業を同時並行で受ける

 A氏は転職活動中、7社に応募し、そのうちの4社から内定を得たという。B氏は複数の内定を取ることに違和感を持っていたため、1社1社、結果が出てから次の会社に応募という形を取ったという。

 これについて大田氏は「複数社に応募することによって、相対的な自分の市場価値が見えてきます。そういう意味でいろんなところを受けてみた方がよいと思います。内定後、入社を断る際に誠意をもってお伝えすれば、それほど失礼に当たらないと思います。ただ、転職者ご自身の価値観や考え方がありますので、Bさんの方法が決して悪いということではありません」と話す。

その3:転職を決めてから退職の意思を伝える

 A氏は前職に在職中に転職活動を始め、入社の意思を伝えた後、会社に退職の意思を報告した。一方、B氏は「現職の会社に失礼かもしれない」と思い、必ず退職をしてから転職活動をしていたという。

 「こちらも転職者の方の考え方にもよりますが、一般的には転職先に入社の意思を伝えてから、現職の上司に退職の意思を伝えるのがよいと思います。いろいろな会社に話を聞く中でもしかしたら、『転職しない』という選択肢も出てくるかもしれません。転職をはっきりと決めない状況で退職の意思を伝えるのはリスクだといえます」と大田氏は話す。

 自身が採用選考に携わる立場である小林は、「採用面談のとき、応募者の人の経歴で会社と会社の間にブランクがあるとどうしても気になってしまう」という。実際B氏も「必ずその部分は質問されて、毎回答えに困りました。自戒を込めてアドバイスしますが、ブランクは開けない方がいいと思います」と話す。

その4:入社後の仕事のイメージをつかむ

 B氏はそれまで勤めていた大手システムインテグレータから、前職のベンチャー企業に「研究開発の主力メンバーとして来てほしい」と誘われ「研究ができる」と思い入社を決めたのだが、実際は管理職として人の管理や「火消し」として過酷なプロジェクトの対応に追われてしまったという。「入ったときの話と違う」と転職を考えた。

 大田氏は、入社後の自分の姿、あるいは転職を希望する会社の企業文化を確認する重要性を次のように話す。

 「企業文化や会社のイメージをつかむことは重要です。面接官が現場の方であれば、業務のイメージを聞くとよいです。また、内定後に面談の場を設けてもらって業務内容や自分の働くイメージをしっかりと確認することもリスク回避の1つだと思います」

 転職後、自分の「やりたいこと」と企業が「やってもらいたいこと」、あるいは企業文化になじめないなどのミスマッチによって、「こんなはずではなかった」となるのは互いに不幸だ。可能であれば、内定後に現場のエンジニアとの面談の場をセッティングしてもらうといった対策が有効だ。

その5:会社を辞めてから入社までのタイミングに気を付ける

 B氏は、前職では管理職であったため、すぐに退職というわけにはいかなかった。プロジェクトの途中で部下をおいて、会社を去るとはなかなかいいだしにくい。そこで、2006年の2月に内定をもらっていたのだが、転職先の企業と相談し、あらかじめ分かっていた、会社の組織改変の時期である6月に合わせて入社日を決定したという。

 内定から入社まで期間が開いてしまう場合、企業はどうとらえているのだろうか。大田氏は「Bさんのように、あらかじめお互いの間でちゃんと確認が取れている場合ならば問題はありませんが、これが例えば4月入社という約束をしていたにもかかわらず、入社時期が遅れてしまうような場合、転職先の企業から自己管理能力が疑われてしまう可能性があります」と指摘する。

誰もが転職に不慣れ。見えにくいリスクに気を付けよう

 パネルディスカッションでは、一見成功に見えた転職活動にも、危険な落とし穴が潜んでいたことが分かった。これらのリスクを把握している場合とそうでない場合は、やはり転職活動や転職そのものの結果を大きく左右するのではないだろうか。売り手市場といわれるいまだからこそ、こういったリスクを知り、回避したい。

 「転職活動は頻繁に経験することではありません。つまり、誰もが実は転職活動に不慣れなのです。見えにくいリスクもたくさんあります。そういった場合、私たちのようなキャリアコンサルタントを活用していただくことも1つの有効な手段かと思います」と大田氏が締めくくった。

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