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フリーになる前に押さえておきたいポイントとは

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/10/31

2007年9月、東京・九段下で「フリーエンジニアカンファレンス2007」が開催された。これからフリーとして働こうと考えているITエンジニアや、すでにフリーで活躍しているITエンジニアが考えている不安や疑問に対して、専門家がそれぞれの立場から答えた。その中から「安定的に案件を受注するテクニック」というテーマで行われたセッションをレポートしよう。

 @IT自分戦略研究所が2007年5月に行った読者調査では、「現在の雇用形態」としてフリーランスと回答したのは、わずか3.6%。しかし、今後フリーランスとして働きたいと考えているITエンジニアは13.6%に上る。つまり、フリーランスとして働きたいと考えているITエンジニアがいるが、なかなかフリーという立場に踏み出せないという人が多いということだ。

図1 各雇用形態に対するイメージ(複数回答で、N=742)

 フリーとして働きたい人が、フリーとなるために障害になっていると考えていることはなんだろうか。読者調査結果ではフリーランスに対して、「能力がないとやっていけない」「リスクが高い」といったイメージが持たれているという結果だった。「継続して仕事が受注できるのだろうか」「本当にフリーランスで仕事をしていけるのだろうか」「けがや病気で仕事ができなくなったらどうする」といった不安が、フリーランスに踏み切れない理由の1つとなっているようだ。

安定よりも好きな仕事を

NTX 野口和裕氏

 「フリーエンジニアカンファレンス2007」最初のセッションでは、「安定的に案件を受注するテクニック」というテーマで、司会の堀内 浩二氏と@IT自分戦略研究所でフリーエンジニアに関連する記事を執筆しているNTX 野口和裕氏がディスカッションを行った。

 現在、個人事業主として活躍する野口氏だが、フリーランスになったのはいまから6年ほど前、もともとは会社に勤めてSEとして働いていたところに会社の先輩から誘われてフリーの門を叩いたのだという。野口氏がフリーエンジニアとして働こうと決めたのは次の3つの理由からだ。

・管理職よりもプログラミングやシステム設計をしている方が楽しかった
・当時働いていた会社がそれほど安定していたわけではなかった
・何でもやってみたがる性格だったため、フリーエンジニアにチャレンジしてみたかった

 フリーランスを志すときにまず不安になるのが、「仕事を受注できるか」という部分だ。野口氏はフリーになった当初は、フリーになるきっかけを作った先輩経由で仕事を紹介してもらっていた。そして徐々にエージェントを使って仕事獲得していったという。現在では、執筆活動や講演といったところから仕事につながったというケースもある。いわゆる飛び込み営業といったことは、これまであまり行っていなかったという。それは、「営業すると作業をするための時間がなくなる」という理由と、「自分で自分を売り込むのは難しい」という理由からだ。

 仕事が見つかると次は「安定して仕事がもらえるか」ということが気になってくるが、野口氏は「どんなことにも安定はありえない」と話す。会社だって倒産する可能性がある。「安定を選ぶよりも、自分が本当に好きなことをやった方がいいのではないか」。そう野口氏は考えているという。

仕事の選び方はどうするか

 野口氏が仕事を選ぶとき次の3つの基準を念頭に置いて考えていると話す。

・好きなこと
・できること
・やるべきこと

 フリーランスとして働くようになると、将来への不安や働いた分だけ収入につながるといった面から、ついついハイペースで仕事をしてしまうようになってしまうのだという。顧客から仕事を頼まれるとなかなか「できません」とはいえない。しかし、自分自身に合ったペースを考えないと精神的、あるいは肉体的にもたない。そういった顧客との関係や自分自身のペースをつかむまである程度時間が掛かるという。

 焦ってしまって自分の意に沿わない仕事をするのは精神衛生上よくない。フリーのメリットは仕事の選択から始まって、自分の時間の使い方などを自由に考えることができる点にある。そうしたメリットを最大限に活用するためにも自分の中で基準を作り、選択をすることは非常に重要になる。

避けては通れないお金の話

 フリーエンジニアをしていく上で誰もが気になるのがお金の問題だ。もちろん普通の会社員として働いていてもお金の問題は重要であるが、フリーエンジニアの場合、自分で報酬の交渉や支払いを行うことが多いだろうし、あるいは税金の問題などもある。一般の会社員より身近な話題ではないだろうか。

 野口氏も万が一の事態に備えて貯金をしているという。「何社かのエージェントの人に営業をお願いしていますが、どうしても仕事と仕事の間が開いてしまうときがあります。そういうときに備えて調子がいいときにお金を貯金しておくことが大切だと思いますね」

 また、フリーエンジニアにとっては税制や、社会保障の問題も重要だ。そういった専門的なことがらには、自分1人ではなかなか対応できない。そうしたときは専門家の手を借りることも必要になるだろう。

本当に大事なこととは何か

 フリーを続けていく中で重要なこととして、野口氏は「自分を知ること」を挙げる。仕事を選ぶ3つの条件と重なるが、自分がどんなことが好きで、どんなことができて、どんなことをやるべきなのか。そういった自分についてあいまいなままだと自分が望むような働き方はできない。

 「これらの点についてはっきりさせてからフリーになれとはいいません。私も全然そんなことを考えずにフリーになりました。でも、こういったことが重要だということは覚えていた方がいいと思います」

 さらに野口氏は続けて「一番大事なのは誇り」だという。自分の仕事に誇りを持つことは働いていく中で大きなモチベーションとなる。また、エンジニアは社会的なインフラを構築するうえで重要な職業である。仕事をする際に誇りを持つことは非常に重要だという。

 「誇りを持つためには『やりたいことをみつける』『互いに尊敬できるお客さんと仕事をする』『誇りが持てる仕事を選ぶ』。これらのことが必要です」。そう野口氏は話す。

 フリーとして働くと、自分で判断する領域が大きく広がる。それだけに自分の中の価値観というものがより重要になる。自分自身の中でぶれない価値観を築き上げることがフリーエンジニアとして働くうえで重要な点のようだ。

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