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転職は自分が主役。歩く道を自ら選べ!

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/9/18

 「転職という決断をする、それは会社の都合で考えることをやめて、自分のために一歩を踏み出すということです。自分の足でどう歩くか、どういう道を歩くか自分自身で選ばなければもったいない」

 そう話すのは、元プログラマで、現在イラストレーターやライターとして活動しているきたみりゅうじ氏。2007年7月8日に開かれた「マイナビ転職 エンジニアセミナー」で行われた講演で、きたみ氏は自身の経験やこれまでの取材を踏まえて、転職に対する考え方を語った。

きたみ氏のエンジニア人生

イラストレーター きたみりゅうじ氏

 きたみ氏が社会人になった、1995年。Windows 95が発売され、5年後に控えた2000年問題への対応のため、あちらこちらで仕事がある状況だったという。「いま思うと業界全体に活気のある時期だったと思います」ときたみ氏は当時を振り返る。

 入社した小規模のソフトウェア開発会社で3年半の間、プログラマとして勤務していたきたみ氏だったが、待遇の悪さから、もう少し規模の大きな会社に転職することにした。規模が大きな企業に移り、安心したのもつかの間、その会社が半年で倒産してしまった。

 「次はフリーのエンジニアとして活動しようと思っていたのですが、会社が倒産してすぐにフリーというのはあまりにでたらめで、計画性がないと思いましたし、まだそのころは終身雇用が一般的で、転職を繰り返すのはあまりいいことではないと見られていました」

 会社は倒産してしまったが、関連会社が社員の面倒を見るということになり、きたみ氏はその関連会社へ移った。

 「そこでもうちょっと頑張って、準備が整ったらフリーへの道を考えようと思い、さらに3年半ほど勤務しました」

 その後、きたみ氏は、自分自身でやりたいことを見つけ、フリーのイラストレーター、ライターとして活躍している。

人が転職を考える理由

 きたみ氏が転職者へ取材をする中で、「会社を辞めたくなった理由」としてさまざまなものが挙がったという。例えばそれは次のようなものだ。

・いまの仕事で将来が不安
・もっとやりがいのある仕事がしたい
・せめて人並みの生活ができる給与が欲しい
・地元に帰って両親の面倒を見ないといけない

 こうした理由の中で最も多いのが、「お金」と「仕事内容」に関するものだという。

 「例えば本業の給与だけでは生活できないので、副業をしなければならないとか、給与が未払いなど。そういう会社が頻繁に出てきて驚いています」

 きたみ氏も、自身が勤めていた会社の待遇の悪さについてネタを交えて話すが、転職者から聞かされる話に「そんなことがかわいく見えるくらいの話が出てきてびっくりします」という。

 また、「仕事内容」については、いまの仕事がどうかというより、将来への不安からくるものが多いという。「いまの仕事はいいけど、ずっとこれをやっていて大丈夫か」「気が付けばいつも他人の尻ぬぐいばっかりしている。自分自身の積み重ねができていない」。漠然とした不安が転職した方がいいのではないか、という気持ちにつながる。

 しかし、単に「お金」や「仕事内容」といった理由だけで転職に至るかというとそうではない。多くのケースは、そうした理由に加えて、社内の人間関係などが複合的にはたらいて転職を決意させるのだという。

 「実際私が転職した理由も『この仕事を続けていてもほかでは通用しない』という危機感がありました。そこに上司との関係が悪く、さらに残業代が出ないということがとどめとなり転職するに至ったという形です。よく転職に際して、“ヘッドハンティング”や“キャリアアップ”といった、格好いい言葉を耳にすることが多いのですが、こと日本においてはどちらかというと、やむにやまれず転職する場合が多いように思います」

転職のいいところと悪いところ

 きたみ氏は転職のメリットとして、「いま置かれている状態をリセットすることができる」ことを挙げる。しかし、これは同時にデメリットでもあるという。

 「卵からかえったヒナが初めて見たものを親だと思うように、社会人になって初めてお世話になった会社は社会に出たときの親だと思います。立派な親ばかりじゃないのは本当の社会と同じですが、自分の失敗や成長、隠せない本性などを含めて全部を会社の人は見ています。つまり、その後に行くどの会社よりも、自分のことを分かってくれている理解者が多数いるということです。ところが、転職先で即戦力として頼られる状況では理解者はなかなか得られません。どうしても対等の付き合いになりますので、新人時代ではできた甘え方ができません」

 「環境をリセットすることはいまいる理解者を自分の手で捨てることになる」。そうきたみ氏は話す。もし、新卒で入った会社で社会人人生を全うできるならば、それに越したことはないという。

 しかし、きたみ氏は自身が転職したことを後悔していない。それどころか「もっと早く辞めた方がよかったかもしれません」という。「あくまで理想は理想で、そのとおりにできない状況があることは重々承知です。ただ、実際に転職を考えるうえで、そういった理解者を捨ててしまうことを自問自答してほしい」ときたみ氏は繰り返した。

60歳の自分を考える

 「転職はギャンブル的な要素が強い」ときたみ氏はいう。転職するといっても会社の雰囲気や同僚の様子、仕事内容など、実際に転職して働いてみないと分からないことが多い。転職のミスマッチを防ぐため、面接で積極的に質問する、あるいは内定後、現場のITエンジニアにヒアリングする場を設けてもらうなど、情報を収集することが必要だが、それ以上に重要なのが会社に対する姿勢だ。

 「『会社に○○してもらえる』という考え方の場合、ギャンブルでいうところの胴元のやりたい放題になってしまいます。転職に当たって、自分が『何をしたい』のか考えて、そのために何ができるのかを考えて頑張るという姿勢でいることが必要です」

 つまり、会社に対して受け身の姿勢ではなく、「自分がしたいこと」を踏まえて行動する能動的な態度が重要になるのだ。注意したいのは、ここでいう「したいこと」とは、ちょっとやってみたいことではなく、これから先の社会人人生で、長く続けたいこと、成し遂げたいことということだ。

「転職をする前に60歳の自分を想像し、そして、いまの自分の選択が60歳の自分にどう影響するかを考えてみてほしいと思います。同時に60歳になったとき、自分がどういうふうになっていれば満足なのかということも考えてみてください」

 中には「したいこと」「やりたいこと」がなかなか見つからない人もいるだろう。そんなときも60歳の自分を考えるといいという。「なりたい60歳の姿といまの自分を比べて何が足りないか。足りないものをどう補うのかを考えると、違った答えが出せると思います」ときたみ氏は話す。

自分の足で立ち、そして自分で決めた道を歩く

 この「したいこと」を重点に置き、考えるようになると会社への依存が小さくなり、より自分のこと――自分がどうなりたいか、何をしたいかを考えられるようになるという。

 「あくまでも自分が主役でその舞台として会社があるだけで、そこに精神的に依存すること、会社が自分をどう見ているか気にするということは小さくなると思います」

 そう考えれば、きたみ氏がいう「いま置かれている状態をリセットすること」は、よりメリットとしての側面が大きくなる。自分が甘えられる環境、依存できる環境は得にくいが、それらをリセットするからこそ、自分が自分自身のために何をしなければいけないのか見えてくる。

 「この先、多くの人が転職を考えることもあると思いますが、自分が主役なのだということを忘れずに自分が気に入る景色を生み出してもらいたいと思います」ときたみ氏は話した。

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