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「目的のない転職」をしてはいけない

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2008/7/4

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きっかけはネガティブでもいい。重要なのはその後

 もちろん、すべての転職を否定するわけではない。前にも述べたが、転職によって「より能力が発揮できる」「望んでいた環境に近づける」「希望どおりの収入が得られる」など、満足度が上がれば問題はないのだ。

 このような転職をするためには、まず自分自身が何に満足するのかを意識すること。そのうえで、転職の目的をはっきりさせることが必要だ。

 平岡氏が指摘したように、最初に転職を考える理由は、ネガティブなものであることが圧倒的に多い。仕事内容にも人間関係にも職場環境にも収入にも問題がなく、毎日楽しく働いているならば、転職する必要などないからだ。

 「スタートはネガティブな理由でいいんです」と平岡氏はいう。「上司が嫌だとか、仕事がつらいとかでいいんです。ネガティブな理由から出発して、どうすれば自分は満足するのか、現在の環境では本当に実現できないのかを、まず考えてほしい」

 大きくキャリアチェンジをするならともかく、例えばシステム開発会社からシステム開発会社に転職したとしても、劇的な変化が望めるわけではない。プロジェクト単位で動き、上司とメンバーがいてという環境も、使うテクノロジもそんなには変わらない。極端な話、隣の席の人が嫌だからといって転職しても、今度隣に座る人がいい人とは限らないのだ。

 例えば上司が嫌で転職を考えているなら、上司のどういうところが嫌なのか、理想の上司はどんな人なのかまで掘り下げておくべきなのだ。しかし、「そこまで考えて転職する人は本当に少ないのです」と平岡氏は指摘する。現状からの逃避が転職の最優先事項になってしまうケースが多いそうだ。

 「何が不満で、それを改善するにはどうしたらいいのか、具体的にどう行動すればいいのか。それが分かっていれば、ふさわしい環境は自分で探せるはず。逆にそれがはっきりしていないと、ジャッジができません。人材紹介会社に行っても、求人サイトを見ても、スカウトサービスに登録しても、どこに転職すればいいのか、そもそも転職していいのかのジャッジができないのです」

後悔しない転職までの3ステップ

 ネガティブな理由から出発してもいい。それをどう改善すれば自分は満足するのか、本当にいまの会社では改善できないかを考える。

 この作業は、できれば自分1人で行うことが望ましいと平岡氏は説明する。1人で考えても答えが出ない場合は、内容にもよるが上司、もしくは気心の知れた同僚に相談してみるのもいいという。

 例えば仕事の内容に不満がある場合。「転職すれば変わるかもしれない」と思って行動する前に、社内で解決する方法を考える。ほかの仕事に挑戦する機会が見つかるかもしれないし、上司に相談することで、なぜその仕事が重要なのかが分かり、気が晴れるかもしれない。

 人間関係なら、人事部に相談することで、部署異動できる可能性がある。

 大企業であればキャリアカウンセラーが常駐していることもあるので、利用してみるのもいい。

 平岡氏は、「絶対に避けるべきなのが、特に親しくない普通の同僚に相談することです」と付け加える。「同僚にとってあなたの悩みは『人ごと』です。相談してもポジティブな意見がもらえず、よりネガティブになることが多いので、参考にならないと思った方がいいでしょう」。不利なうわさが立つ可能性もある。危険なので、よほど気心の知れた相手でない限り、同僚にはいわない方がいい。

1.ネガティブな部分を掘り下げて、どう変えれば自分が満足するかを整理する

2.現在の環境で変える方法を考える。1人で解決できない場合、上司や人事部に相談するのも可

3.どうしても変えられない場合、目的を明確にしたうえで、転職など次のアクションを考える

目的を明確にすれば、望む環境が得られる

 最後に、ネガティブな理由から目的を明確にし、満足できる転職を果たしたITエンジニアの事例を平岡氏に聞いた。

事例1:汎用機のサポートをしていたAさん

  Aさんは社員300人ほどのシステム開発会社で汎用機のサポートをしていたITエンジニア。新しい技術がどんどん出てくる中、「なぜ自分だけ、いつまでも汎用機のサポートを?」という漠然とした不満を抱くようになった。

  上司に部署異動を願い出たが、聞き入れられなかった。理由は「汎用機の仕事は会社の売り上げの基幹部分。Aさんにはそこで活躍してほしいから」

  Aさんは自分が会社から評価されていると感じ、うれしいと思ったが、やはり同じ仕事を続けたくはなかった。そこで不満を掘り下げ、「常に新しいことに挑戦できるITエンジニアでありたい。挑戦できる環境に身を置きたい」と考えた。

  人材紹介会社に相談に行ったが、「そんな環境はそうそうない。新しいテクノロジが出たら、それをずっと使い続けるのが通常のIT企業。常に新しいことに挑戦できるところなどない」と諭された。

  アドバイスを受けて、Aさんは自分の不満と目的を考え直した。「常に新しいテクノロジにかかわれなくてもいい。汎用機のようにすでに浸透しているものではなく、これから普及するものにチャレンジしたい」

  目的を明確にしたAさんはSaaSのベンダに転職し、いまも活躍している。

事例2:大手メーカーの社内SEだったBさん

  BさんはITコンサルタントから大手メーカーの社内SEに転身した経歴を持つITエンジニア。非常に優秀で年収も満足のいくものだったが、2つの不満を持っていた。「大会社はしがらみが多く、動きづらい」「社内にしか目を向けられないのは嫌だ」

  その不満を掘り下げ、「やはりお客さまに提案できる仕事に戻りたい」「しがらみがなく、思い切り実力を発揮できる環境に移りたい」「収入は下がってもいい」と目標を定めた。

  結果、Bさんはあるベンチャー企業に転職。収入は下がったが、希望どおり実力を発揮できる環境を得て、以前にも増して生き生きと働いている。

 平岡氏は、「転職で環境ががらっと変化することはありません」と繰り返す。「転職は目的を達成するための手段に過ぎません」。だからこそ、転職する際には目的を明確にすることが必須なのだ。「目的があいまいなままならば、その転職はやめた方がいい」とアドバイスする。

 

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