ITエンジニアが欲しいビジネス・ヒューマンスキル
@IT自分戦略研究所 編集部
2008/12/11
■ 次に狙うキャリアは中小企業診断士
図4は、ビジネス系資格の取得状況を聞いたグラフである。取得済み資格では、「TOEIC(600点以上)」が15.6%で最も高いものの、次点の「簿記検定(2級以上)」でも5.6%にすぎず、おおむねITエンジニアのビジネス系資格の取得状況は芳(かんば)しくない。
一方、今後取得を目指す資格は何か、との質問に対しては、「TOEIC」(25.1%)、「中小企業診断士」(13.9%)、「簿記検定(2級以上)」(13.8%)、「ファイナンシャルプランナー」(8.8%)に高い取得意欲が集まっている。
図4 資格取得状況:ビジネス系資格・認定 |
中小企業診断協会のホームページによると、中小企業診断士とは、「中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家」、つまり経営コンサルタントである。ITと経営が分かち難く結びついている昨今では、経営に強いITコンサルタント、さらにはITに強い経営コンサルタントといったキャリアを目指すITエンジニアにとって、魅力的な資格となってきているようだ。
■ スキルアップの場としての社会人大学院
ビジネス・ヒューマンスキルを獲得する場所の1つとして、社会人大学・大学院が考えられる。今回の調査では、回答者の8.1%が実際に社会人大学・大学院での就学経験があり、半数を超える53.6%が社会人大学・大学院への入学に興味を示している。
「@IT自分戦略研究所 エンジニアライフ」で「アーキテクトを目指して 社会人大学院生の挑戦」というコラムを書いている阿部聡氏は、「これまでの自分の引き出しだけでは足りないと思い、『なんらかの形で広い領域に対してのスキルアップをしなければ』という思いでしばらく焦り気味でした」とし、この焦りを解消するために社会人大学院への入学を決意したとする。
図5は、社会人大学・大学院での学習内容を聞いたグラフだ。
図5 社会人大学での学習内容 *MPA:行政修士(Master of Public Administration) |
社会人大学・大学院就学経験者のうち、「経営・ビジネス系」「IT・技術経営」コースに学ぶ(んだ)層はそれぞれ14.9%であり、経営に関心を示す層が少なくないことをうかがわせる結果となった。
また、社会人大学・大学院に行ったことがない層に興味があるコースを聞いても、「経営・ビジネス」(24.7%)、「IT・技術経営」(33.9%)という回答が多かった。
■ 技術分野以外で欲しいスキル
最後に、スキルアップについてフリーアンサー形式で聞いた結果を一部、紹介する(必要に応じて、文章を修正した)。
- 年齢を重ねるにつれ、法律や経営に関する知識(例えば財務表の見方など)が必要になってきていると実感している ■30代プロマネ_係長クラス
- 不定期にしか時間が取れないので、コツコツと1人で学習するしかありません。ほかの人がどのようにしているか興味がありますね ■40代プロマネ_課長・部長クラス
- 普遍的に通用するビジネススキルならびにヒューマンスキル ■30代トレーナー/教育担当_係長クラス
- 部下の指導力やマネジメントスキル ■20代システム分析設計/SE_一般社員/職員
- 米国公認会計士 ■30代ITアーキテクト_フリー/個人事業主
- 変化の激しい……ということで、1wayのセミナー形式よりも2wayの勉強会的なものが望ましい(純粋にテクニカルなものは除く) ■40代プロマネ_係長クラス
- 簿記2級の通信教育受講中 ■20代プログラミング/テスト_一般社員/職員
- 欲しいスキルは山ほどありますが、特定の職種で必要とされるスキルはそれぞれ異なります。今後は管理職、経営者として必要となるスキルを重点的に磨いていきたいと思っています。若いときは若いときなりに、年をとったら年をとったなりに必要となるスキルをまとめてもらえると参考にできるので助かります ■30代プログラミング/テスト_フリー/個人事業主
- 常日頃から書籍やオンライン上の記載を利用し、たえず自分自身でとことん考えていくしかないと考えています ■40代システム保守・運用・管理_一般社員/職員
- 個人情報保護のスキル ■20代テクサポ_一般社員/職員
- 後輩育成のためにも、コーチング・ティーチングが必要だと思っています。また語学(英語)も必要かな ■30代社内情シス_一般社員/職員
- 語学 ■30代そのほか_課長・部長クラス
- 語学だけで終わらない外国的な感覚 ■20代プログラミング/テスト_一般社員/職員
- 人事、労務、XBRL ■30代そのほか_課長・部長クラス
- 今後、IT業界が今までに体験したことのない「価値観の多様化」、つまり、各個人に合わせた要件の定義が必要な時代が来ると思います。その時代に合った自分の立ち位置を明確にできるようなスキルや教養を身に付けたい ■30代システム保守・運用・管理_係長クラス
- 仕事で役立てるのはもちろんだが、日常生活でも役立てられるようなスキル(交渉術とかアイディア発想とか)を身につけたい ■20代システム分析設計/SE_一般社員/職員
- 仕事に関係するテクノロジやスキルだけでなく、日常生活でも修得・吸収したい知識などがあるため、仕事のほうは実践で修得するしかないと思っている。担当業務に余裕ができた時にはインターネットで情報や実践サンプルを探し、直に触れて覚えてきたい ■30代プログラミング/テスト_一般社員/職員
- 企画立案や推進の仕事なので、それに対応するスキルを身につけたい。プレゼン、発想法、リーダーシップ、ロジカルシンキング、ファシリテートなど ■30代経営/経企_係長クラス
- 基本的な部分はWebや書籍で学習すればよいと考えますが、実践的な部分は交流会やセミナーへ参加することで学びたいと考えています。技術を活かせる場を広げるためにIT関係以外の知識を得ていきたいと考えています ■30代プロマネ_一般社員/職員
- 技術スキルよりもビジネス・ヒューマンスキル(メンタルヘルスケアや法律・法務など)を向上していきたいと思っています ■20代営業/マーケ_一般社員/職員
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以上、@IT自分戦略研究所の読者調査を参考に、ITエンジニアのビジネス・ヒューマンスキルに対する意識を考察した。現状、自分がビジネス・ヒューマンスキルに優れているとする層は少数派に属するが、将来展望の中に占める同スキルの重要性は高いものであることがうかがえた。
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■ 付属(技術スキル、資格の取得状況)
図6 保有している技術スキル、今後身に付けたい技術スキル |
図7 取得済みの技術資格、今後取得を目指す技術資格 |
図8 取得済みのベンダ資格、今後取得を目指すベンダ資格 |
過去の読者調査レポート記事 | |
グーグル大好きニッポンのプログラマ (@IT自分戦略研究所) | |
身に付けたいスキル、何ですか? (@IT自分戦略研究所) | |
いまITエンジニアに人気のスキルとは? (@IT自分戦略研究所) |
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