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第2回 外の世界での活動は個人の自主性に任せる

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/8/30

オープンソースコミュニティなどのコミュニティや、そこに入り積極的に活動をするITエンジニア。企業はそうしたコミュニティやITエンジニアをどうとらえているのだろうか。

 今回、話を聞いたのはライブドア メディア事業部 開発部 執行役員CTO 池邉智洋氏だ。PerlやApacheなどのオープンソースソフトウェアを使って、さまざまな開発を行っている同社。ライブドアでは会社と社員のコミュニティ活動についてどのように見ているのだろうか。

外の世界を見る重要性

ライブドア メディア事業部 開発部 執行役員CTO 池邉智洋氏

 現在、ライブドアでは30人弱のITエンジニアのうち、積極的にかかわっている5〜6人を含め、およそ10人ほどが、Perlを中心に勉強会などのイベント参加やモジュールの作成など、何らかのコミュニティ活動をしている。

 「会社としてはコミュニティについて、特に働きかけていることはそれほどありません」と池邉氏は話す。その一方でYAPC(Yet Another Perl Conference)などのイベントスポンサーに関しては、積極的に協賛していくという。

 ITエンジニアがコミュニティ活動に参加することのよい点として、池邉氏は「外との情報交換」を挙げる。イベントに参加したり、あるいはほかの企業に勤めるITエンジニアと交流することで、さまざまなことが見えてくる。

 「勉強会とか飲み会などで、いち早く情報が得られるということがあります。それから、同業他社の人と話す中で、互いに似たような仕事をしていると、『やっぱりそのやり方で合っているよね』と自分たちの仕事のやり方について、確認できるということもあります。また、若いエンジニアだと外を見ることで、業界内のスキル的な指標と現在の自分の状況が見えてきます。それは非常によいことで有意義だと思います」

 コミュニティに参加するITエンジニアとそうでないITエンジニアの違いについて、「スキル的にはそう差はない」と池邉氏は話す。ただ、コミュニティに参加している人の方が新しい情報を知っているという。ライブドア社内でも外に出て行く人が、情報を仕入れて、社内のIRC(Internet Relay Chat)などで紹介することがあるという。

コードを書く仲間と出会える

 池邉氏自身、CPAN(Comprehensive Perl Archive Network)モジュールやApacheモジュールの開発を行っているが、コミュニティに参加する中で、コミュニティが持つフラットな部分によさを感じているという。「われわれがやっているのは単にコードを書く仲間が欲しいという感じ」と池邉氏は話す。

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 大きなプロジェクトの場合、ボードメンバーを置き、サブプロジェクトを作り、チームを分けるというように、いくつか階層を作りながら大きな組織を形成することもある。そういった組織体が必要な場合もあるが、日本のPerlコミュニティなどはあまり「階層」のようなものはないという。

 「気になることがあるとIRCなどで気軽に聞けることが結構いいですね。同業他社の人ともコアな部分だけはビジネスのマナーとして聞かないようにして、協力しながらフェアに競争できていければいいのかなと思っています」

 また、自分たちが作ったものを公開することで、広くレスポンスが得られることもいい点だ。オープンソースの世界では、英語でドキュメントを書くと英語圏の人からレスポンスがあるという。こうしたことは「個人のスキルを伸ばすという意味では非常にいいこと」と池邉氏は話す。

ライブドア発「何か」の可能性

 2006年11月に、ライブドア メディア事業部 開発部 システム開発グループ マネージャー 谷口公一氏にインタビューした際、「オープンソースへの貢献」について次のように述べている。

また「オープンソースへの貢献」については、「個人的にも大事」と前置きしたうえで「会社としてみても重要だと思います。ライブドアの根底にあるのはオープンソースです。オープンソースがあったから、ライブドアはここまで発展したといえます。ここしばらくは、オープンソースを使う側でしたが、今後はライブドアから派生するような新しい何かを出していきたいと思います」

  この「ライブドアから派生するような新しい何か」について、池邉氏は次のように話す。

 「Apacheのモジュールなど、弊社内部のコードの依存度が低い部分を汎用化して作るということもあります。あるいは、弊社で提供しているサービスをインストールして使用できる、個人ユースのプロダクトとして組み直し、配布するということも考えられるだろうと思っています」

コミュニティ活動に参加するITエンジニアに対する会社の目

 ライブドアは2007年4月からCPAN Authorに情報処理技術者試験などの資格の取得と同様に資格手当の支給を始めた。この制度の狙いを池邉氏は次のように話す。

 「ORACLE MASTERや情報処理技術者試験といった資格にも、手当を出しているのですが、業務をする中でそういった資格を『持っていてよかった』という感想はそれほど聞きません。実際、制度としてもあまり使われていないので、もう少し現実的に業務にもメリットがある制度をつくれるといいねと。そういう視点で考えたとき、CPAN Authorを制度に含めるといいのではと思いました」

 資格試験だけではなく、業務の中で使うスキルの習得に手当を支給するということだ。この制度を導入後、「社内のモジュールを書いてても、英語のドキュメント整備やバージョン管理をしていなかったITエンジニアもそういったことをやるようになったので、これはいい点だと思います」といった効果も出てきている。
 
  今後、Perlだけではなくほかのテクノロジにもこうした手当が出せないか考えているという。

 また、勉強会やイベントにスタッフとして参加するITエンジニアもいるが、そうしたイベントの準備を業務の合間に行う場合、時間の使い方など難しい部分もある。業務とコミュニティ活動の切り分けについて会社としてはどう見ているのだろうか。

 池邉氏は「個人の自主性に任せている」という。「『イベントの準備があるから、今日は早めに帰る』ということがあっても、納期など問題がなければ特に何もいいません。それぞれがそれなりにちゃんとONとOFFの切り替えて仕事をしてくれています」と話した。

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