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第3回 コミュニティの成果をエンタープライズ領域へ

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/10/26

オープンソースコミュニティなどのコミュニティや、そこに入り積極的に活動をするITエンジニア。企業はそうしたコミュニティやITエンジニアをどうとらえているのだろうか。

 今回、話を聞いたのは電通国際情報サービス(ISID) 事業推進本部 開発技術センター部長 渥美俊英氏と金融ソリューション事業部 金融事業企画部長 飯田哲夫氏。同社には比嘉康雄氏をはじめ、Seasar2のコミッタが在籍し、会社としてその活動をサポートしている。また、Seasar2の商用サポートの提供など、コミュニティの成果をエンタープライズ領域に導入することに力を入れている。システムインテグレータ(SIer)として、コミュニティ、あるいはそこで活動するITエンジニアをどのようにとらえているのだろうか。

会社とコミュニティのかかわりの歴史

電通国際情報サービス 事業推進本部 開発技術センター部長 渥美俊英氏

 現在、ISIDのSeasar2技術推進グループに在籍しているコミッタは4人。元から社員として在籍していたのは、比嘉氏のみ。ほかの3人はSeasar2に対して支援を行うようになってからISIDが採用した形だ。また、会社として何か支援をしているわけではないが、開発技法やプロジェクトマネジメントの勉強会のコミュニティといったものに参加している人もいるという。

 ISIDがSeasar2のコミュニティの支援をするようになったのは、2004年から2005年にかけてのこと。「このころ、DIコンテナ(当時は未だIoCコンテナと呼ばれていた)とかAOPといった、ソフトウェア工学最前線の技術について、それを日本発のオープンソースで実装したのが自社の社員だったということに驚きました」と渥美氏は当時を振り返る。

 ISIDでは、比嘉氏の外部での活動を業務の一部と認め、Seasar2の商用サポートを開始した。「2005年には、Seasar2コミュニティ初の公式イベントをISID社屋で開催しました。また、Seasar2の関連書籍を出したり、ビジネスの企画として何かコミュニティの活動支援をできないかということを考え始めたのがこの時期でした」と渥美氏。

 それから2006年にかけて、現メンバーを採用して体制を整えた。この体制は、Seasar2というコミュニティに対して、SIerとしてどのように支援できるかという点から、考えているのだという。

 「それをほかのコミュニティまで広げるかというとそうではありません。ただ、同様の動きが出てきたら、そのときはまたあらためて考えるという形です」と渥美氏はいう。

会社としてコミュニティをどう支援するか

 では、会社としてコミュニティに対してどんな支援策を行っているのか、具体的に聞いた。まずは業務中に一定の時間数をコミッタとしての活動に充ててもよいとしている。その活動の内容に関しては、特に会社がタッチすることはないのだという。また、コミッタメンバの社員により、Seasar2の商用サポートと技術支援コンサルティングを業務として行っている。

 「エンタープライズ領域での利用が活発化することで、間接的にコミュニティが盛り上がるということがあると思います」(渥美氏)

 SIerとして、商用サポートなどコミュニティの成果物のエンタープライズ利用を推進するという点が、1つ大きな特徴だといえる。オープンソースの場合、商用サポートがないと、なかなかエンタープライズでの利用が進まない。

 「ISIDが携わったSeasar2の開発事例を、積極的にセミナーやプレス発表するようにしています。コミュニティベースでは、こうした事例の発表は難しいですから、間接的にマーケティング活動の役に立てられていると思います」と飯田氏は話す。

新しいビジネスへのチャレンジ

 こうした支援策は同社にとっても未知の領域に飛び込む挑戦だ。

 「われわれ自身もSIerとしてSeasar2にかかわっていく中、ビジネスのやり方が変わるかどうかということがあります」と渥美氏。しかし、オープンソースソフトウェアをエンタープライズ領域まで推進していくことは、簡単なことではない。

 社内のほかのエンジニアとしても、導入事例が少ないと採用しにくく、その先にいる顧客に向けてそのシステムを提案しにくい。そのため、社内的にも技術支援やマーケティングが必要になってくる。

 「案件の中には顧客側のエンジニアが興味を持ったことがきっかけとなって、システムを導入したケースもあります」と飯田氏。ただ、技術者だけではなく、その上にいる経営層にまで、そのメリットを説明することも併せて求められるという。


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