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第5回 いるだけで価値があるエンジニアになってほしい

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2008/3/27

オープンソースコミュニティなどのコミュニティや、そこに入り積極的に活動をするITエンジニア。企業はそうしたコミュニティやITエンジニアをどうとらえているのだろうか。

 ITエンジニア個人が社外のコミュニティで活動する際、その多くは会社には特に知らせずに活動を行い、企業の側としても特に詮索はせずに業務と切り分けて活動すればよいと考えるケースが多い。しかし、コミュニティ活動をするに当たり、自分の活動を所属企業からバックアップを受けることができれば、仕事とコミュニティ活動の両方に対して、モチベーションを上げることができるのではないだろうか。

 Linuxディストリビューションのサポートや「サイオスOSSよろず相談室」など、オープンソースソフトウェア(OSS)をビジネスの1つの軸として考えているサイオステクノロジー(サイオス)では、コミュニティ活動をするITエンジニアに対してどのような取り組みを行っているのか。執行役員 CTO 国内事業統括補佐 兼 OSSテクノロジーセンター長 山ア靖之氏に話を聞いた。

コミュニティ活動に対する3つのかかわり方

 
  サイオステクノロジー 執行役員 CTO 国内事業統括補佐 兼 OSSテクノロジーセンター長 山ア靖之氏

 山ア氏はコミュニティ活動に対する会社のかかわり方として、大きく分けて3種類あるという。1つ目は、活動自体を個人の自由に任せ、会社として特に関与しないというスタ ンス。所属しているITエンジニアの活動を伝え聞く程度、あるいはそもそもそういった活動をしていることを会社が知らないというケースもあり、会社としてかかわることがない。

 2つ目は会社がその個人の活動を認識、その活動に対して価値を感じ、活動を推奨するというもの。例えば、サイオスでは業務時間の一部をコミュニティ活動のために使ってもいいと認められているITエンジニアがいるという。

 「どのくらいの時間を使っていいのかは、人によってまちまちです。例えば、ある人は業務時間の半分を自分が行っている活動に当ててもいいといっていますし、それを前提として入社しています」

 3つ目は業務活動として、自らが希望する開発だけを行い、会社がそれを完全にバックアップするというもの。最大4人のプロジェクトに対して、1年半にわたりバックアップしたという。現在は、そのプロダクトが形になってきたため、完全バックアップという形をいったんストップしている。

 「3つ目は特殊な例ですが、エンジニアが『こういうものを作りたい』と提案をしてきたのが、きっかけです。会社としてプロプライエタリな形での開発という手段もありましたが、OSSコミュニティで動いている人たちの口コミで広がっていくことを試してみたら面白いんじゃないかというかなり思い切った試みだと思っています。このようなケースのバックアップはまたやるかもしれません」と山ア氏。一番多い取り組みは2つ目のかかわり方。現在、数名のITエンジニアがこうしたバックアップを受けている

 ITエンジニアの活動を知る手段もさまざま。入社以前や入社する段階で知ることもあれば、メディアなどを通じて知ることもあるという。

バックアップの背景

 こうした取り組みを行うその背景にあるものは何か。

 「OSSは誰でもソースコードを見たり、開発に参加できます。普段からソースコードを読んだり、書いたりしている人は、やはりOSSに詳しいです。高いスキルを持っている人は会社にとっても宝ですので、少しでもエンジニアの育成に取り組んでいこうと思っています」と山ア氏は話す。

 また、サイオスのビジネス自体が、OSのテクニカルサポートやそのほかのミドルウェアなどのサポートサービスをやっていることがあり、OSSと深くかかわっている。企業の持つ土壌も理由の1つに挙げられる。
 
  「私たち自身のビジネス、事業の主軸に近いところにOSSの技術があり、その分野に力を入れることが非常に重要だと思っています。技術がないと、自分たちのいってることとやっていることが違ってしまう」

 会社設立当初から、OSSへの取り組みは行ってきたが、ITエンジニア個人に対するバックアップやコミュニティそのものに対してのバックアップは、4〜5年ほど前から行うようになったという

 「設立当時といまを比べると、やはり対応の仕方や考え方は変化してきています。多かれ少なかれ、会社ができたころからそういう潮流はあったと思います」

コミュニティ活動をするITエンジニアの共通点と期待すること

 コミュニティ活動をするITエンジニアに共通する特徴というものはあるのだろうか。山ア氏は次のように話す。

 「積極的にネットワークを通じたコミュニケーションを行い、そしてそのコミュニケーションが上手。慣れているということもあるでしょうが、非常にうまいと思います。あとは純粋にソフトウェアに対して強い興味を持っていることです。もしかしたら、趣味と仕事の境目がないかもしれないと感じています。技術に対する情報量が豊富だし、リサーチ能力が郡を抜いて高いと思います」

 高いスキルを持っているITエンジニアは、コミュニティ活動やリサーチを通じて、積極的に自分自身の能力を高めている。積極的に知識を得ていく様子は、ほかのエンジニアにとっても刺激となる。山ア氏は、会社がバックアップするITエンジニアに対して期待することの1つとして、そうした影響力を挙げる。

 「もちろん、技術力という点から考えて、培った技術を使って会社の仕事に還元してもらいたいと考えていますが、もう1つ大きいのは影響力。会社にとって、その人がいるだけで価値がある存在になってほしいと思っています。そういう影響力を会社にもたらしてほしいと思いますし、実際にもたらしてもらっていると思います」

 ベテランのITエンジニアが、コミュニティ活動を通じて技術力を高めている様子を若いエンジニアたちが見る。それはきっと尊敬の対象になりえる。若いエンジニアにとって、自分もそうなりたいと思う存在。そうしたITエンジニアに対して、今後も積極的なバックアップを行うことだろう。

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