エンジニアライフ コラムニストに聞く(1)
後藤和彦――「下流から見たIT業界」
岑康貴
2009/1/13
本音が語れるエンジニア参加型メディア「エンジニアライフ」。執筆しているエンジニアたちはどんな人物なのか。執筆したコラムの紹介とともに、コラムニストたちの内面に迫る |
2008年9月10日にスタートした「エンジニアライフ」。日々、多くのITエンジニアがコラムニストとして、さまざまなコラムを公開している。
そんな中、エンジニアライフ開設当初からひときわアクセスを集めたコラムニストがいた。「下流から見たIT業界」を執筆する、後藤和彦氏である。
「IT業界のシュールな現実」「SEとPG、どっちが頭がいい?」「反アウトソーシング」など、日本のIT業界の病理を抉(えぐ)り出すような刺激的なコラムを公開し、話題を集めた。
コラムニストたちにインタビューする新連載。第1回は、IT業界を憂える下流工程プログラマに迫る。
■IT業界の構造的な問題を世に知らしめたい
「IT業界には構造的な問題がある。それを広く知ってもらわなければいけない」
後藤氏は1985年、COBOLプログラマとしてキャリアをスタートさせた。もともと「ケーブルテレビの仕事がしたかった」という後藤氏は、コンピュータの業務経験が生きるだろうという考えから、プログラマを選んだという。
その後、一度会社を退職し、テレビ放送関連の専門学校に通学。ついにケーブルテレビ会社に入社するが、1年と続かずに退職してしまった。「上層部とまったく意見が合わなかった」と後藤氏は振り返る。
後藤和彦氏 |
その後、プログラマとしての経験を生かして再度IT業界の門をたたく。この十数年は個人事業主として働いている。使用言語はCOBOL、C言語、VB、Java、Ruby。エンジニアというよりも、「プログラマ」と自称する。
後藤氏は、IT業界に構造的な問題があることを実感していたという。10年以上、個人事業主として働いてきたことで、多くのシステム・インテグレータ(SIer)に共通する「構造的な問題」が見えてきた。
アメリカのサブプライムローンに端を発する不況が重なり、仕事が安定しなくなった。IT業界の構造的な問題を世に知らしめ、個人事業主が働きやすい業界を実現しなければ――という思いが日々募っていった。
エンジニアライフという「場」と出合い、そこで執筆するようになったのは、そうした背景があった。
■技術者を評価できない管理者たち
「下流から見たIT業界」で指摘してきた問題は、組織の内的要因と外的要因によるものと後藤氏は語る。
「内的要因としては、ソフトウェアには形がなく、品質の評価が極めて困難なことが大きい。管理者側が技術者を正しく評価できていない」
後藤氏は技術の分からないマネージャがいかに多いか、と嘆く。ソフトウェアの品質や技術者の評価などできるはずがない。かくして下流工程のプログラマは「単純労働者」と見なされてしまう。
「さらに、外的要因として経済的な問題が絡みます。企業は銀行から資金を借りるために、固定費よりも変動費を増やし、損益分岐点を低くする『安定経営』を志向します。人件費は固定費。こうして、プログラマはアウトソーシングされます」
技術は空洞化し、下流工程のプログラマの立場はどんどん低くなる。IT業界の問題を解決するにはどうしたらよいのか。そして、技術者はどう生き残っていくべきなのだろうか。
後藤氏は、これから管理者側へと進んでいく技術者に、こうした問題を認識していてほしいと語る。「上から変えていかなければ問題の根本的な解決はできないでしょう」
また、一技術者としては「常に技術動向に目を光らせ、プログラミングし続けること」が重要だという。特に、Web系の動向は「もはやSIerと同じIT業界とはいえない」というほどに、従来のIT業界とは異なる独自の進化を遂げている。そうした流れを見極めるのが大切だ。
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