第10回 横田聡――ブログから始まった巨大コミュニティ「FxUG」
岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2009/2/19
エンジニアにとって仲間とはどういう存在なのだろうか。極端なことをいえば、自分1人で作業が完結できてしまうエンジニアにとって、仲間とのコミュニケーションにはどんな意味があるのか。エンジニア同士のネットワークを通じて、エンジニアにとっての仲間とは何かを探る。 |
コミュニティで活躍するエンジニアたちに迫る本連載もついに第10回を迎えた。2009年最初の「エンジニアの輪」は、前回の新藤愛大(よしひろ)氏(参考:新藤愛大――「Spark projectは生活の一部」)から紹介されたクラスメソッド 代表取締役の横田聡氏だ。
日々、日本中で勉強会を開催している「Flex User Group」(FxUG)の代表を務める横田氏。一企業の代表でありながら、同時に巨大なユーザーグループの代表を兼任する秘けつとは何か。東京・高田馬場にある同社の開発室で話を聞いた。
■それはブログから始まった
2004年にクラスメソッドを起業した横田氏。その翌年、2005年3月から、Flexに関する情報をブログで公開し始めた。当時のエントリにはこう書いている。
Macromedia Flexって去年の10月からハマッています。気になったこと書くつもり。 Cairngorm RIA Microarchicture っていうFlexのフレームワークがありまして、プロジェクトで使っています。デザイナとデベロッパの作業分担ができて○。 Flex本書いているStevenWebsterがリーダーとなって作っているので期待大です。FlexCodersでも意見がやり取りされている。バージョンは0.9で、もうすぐ1.0が出ます。 Flex - Flex Coder |
Flexの思想が好きだった、と横田氏は語る。これ以降、横田氏はブログ上でFlexに関する情報を公開し続ける。当時、まだ日本ではFlexがそれほど認知されていなかったので、海外の記事を紹介するなどが主な活動だった。
クラスメソッド 代表取締役 横田聡氏 FxUGの代表も務める。 |
「同じような(Flexの)ことを書いている人が5人くらいいたんです。みんな、ネタを競い合うようになっていきましたね」
ブログ上でトラックバックを飛ばし合い、ニッチなネタでブログ同士、議論を交わす。やがて、「ユーザーグループをつくったらどうだろう」という声が誰ともなく上がった。
当初、横田氏はユーザーグループに対してネガティブなイメージを持っていたという。
「もし立ち上げたら『管理者』になってしまう。プレーヤーでいた方がいい」
そう思いつつも話は盛り上がり、Webサイトを立ち上げて、勉強会を始めた。活動方針は4つ。「個人の活動の延長とする」「お金をなるべく使わない」「底辺を広げる」「Flexに閉じない」。
■世界初の大規模Flexユーザーグループ
当時、まだ日本ではFlexに関するナレッジが流通していなかった。だが、Flexを使うに当たって、同じ課題を持っている人が実はいる、ということに横田氏は気付く。その最大の解決方法は何か。横田氏は「使う人を増やす」ことに見いだした。使う人が増えれば、共有されるナレッジは拡大し、自分の課題解決にもきっと役に立つ。
「常に新しい人を迎え入れる間口を広げておこう、と考えました。よくコミュニティのメーリングリスト(ML)で新入りが質問をすると、『過去ログを読め』なんて返されますよね。あの文化はやめよう、と。質問には何度でも優しく答える、優しいコミュニティにしたかったんです」
かくして「Flex人口を増やす」ことを目指したFxUGは拡大を始める。最初は、MLでの質問に知っているメンバーが積極的に答えよう、という暗黙の了解があった。だが、1年ほど経過すると、自分たちより詳しい人が勝手に答え始めるようになった。PHPなどの周辺領域も扱うようになり、2年後には1日に20から40件ほどのやりとりが交わされるまでになった。
「実はこのときまで、世界的に見てもここまでの規模のFlexユーザーグループは存在しなかったんです。だから、インドの方が翻訳サイトで日本語に訳した文章の投稿をしてきたり、日本人がした質問に中国の方が日本語で答えたり、なんてことが起き始めました」
ほかのコミュニティとの交流も増え始め、FxUGは拡大を続けた。
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