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第3回 開発者が語るMonaのこれから

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/11/15

無数にある開発コミュ二ティやユーザー会といった組織。一体どんなことをしているのか。そこではどんな人たちが活動しているのだろうか……気になっている人も多いだろう。コミュニティのメンバーに話を聞き、その実像を探る。

 Monaプロジェクトは、ひげぽん氏が2ちゃんねるに立てたスレッド「OSを作ろう」をきっかけとして立ち上がったプロジェクト。現在はWikiを中心に情報交換や共有を行い、開発を進めている。今回はプロジェクトリーダーのひげぽん氏とコミュニティの中心メンバーの1人で、wiki.osdev.infoという主にOS開発に関する情報を提供するWebサイトを管理している奥村氏に話を聞き、Monaの現状と目指すべき未来について語ってもらった。

コミュニティが形成されるまでの過程

――2002年6月にスレッドが立ち、その1年後の2003年7月にWikiを立ち上げ、Monaの開発を進められてきたと思いますが、コミュニティが現在の形になるまでにどのような変遷をたどられてきたのでしょうか。Wikiを立ち上げた時点でのメンバーはどういう状況だったのでしょうか。

奥村 「2ちゃんねるでアクティブに書き込む人がsouceforgeの方にコミットしてくれるということはありました。あと、メンバーの半数は#osdev-jというOS開発をしようとしている人が集まる場があって、そこのIRCにいた方たちだったと思います。IRCは早く(OSを作ろうpart4)から人が集まっていましたね」

ひげぽん 「コアな部分の人たちは2003年の時点で固まっていたように思います。それから新規で入ってきた人というと少ないですね」

――奥村さんはどういう経緯でプロジェクトに参加するようになったのでしょうか

奥村 「スレッドを知ったきっかけは覚えてないのですが、割と早い時点からレスをしていました」

ひげぽん 「奥村さんは自分でもOSというか、OSを含めて上から下まで何でも作ることをしていて、僕よりも知識や経験があるんですよ。なので、最初のころは『こんなことも知らないの?』という感じでいろいろと教わりました」

奥村 「割り込みベクタとかね。そういう彼でも立派なコードを書けるようになりましたというのが、このプロジェクトのすごいところです」

――IRCではどんな話題が出ていたのでしょうか

ひげぽん 「コンピュータサイエンスにも詳しくて、OSを作っている、あるいは作ったことがあるという人が多かったので、初めのころは、僕が『こういうCPU命令のときにうまく動かないんですけど』というコアな質問を投げかけて、それに誰かがぽんと返してくれるという形でした」

奥村  「話の内容は、当時の2ちゃんねるのスレッドとあまり変わらなかったですね」

ひげぽん  「いまは仲良しグループという感じですけど、そのころは2ちゃんねるで質問するような内容を書き込んで、IRCにいる優秀な人からアドバイスをもらっていました」

現在のメンバーの状況

――現在は何人くらいの人が開発に関わっているのですか

 
   ひげぽん氏

ひげぽん 「コミッタは、僕を含めて3〜4人。後は、Wikiで活発に議論をしてくれる人や、過去にアクティブに活動していて、いまはちょっと休んでいるという人を含めるともう少しいます。全体で10人くらいでしょうか」

奥村 「基本的にMonaはまだカーネルしかない状態なので、Monaに参加するというよりは自分でカーネルを作ってしまうとか、『30日でできる! OS自作入門』といった本を見て自分なりにOS開発の勉強をする方が人気です。でも、それは結構Monaにとっても有益で、ハードを直接叩かないといけない環境でのプログラミングを学ぶ機会があれば、そこで得たノウハウをMonaに生かしてもらうこともあるかと思います。そういう経験を積んだ人がこの自作OSの界隈に増えてくるといいことだと思っています」

ひげぽん 「そもそもOSを自分で作れるくらいの人は自分で作っちゃうというジレンマがあって(笑)、人材発掘とか人材育成とかってなかなか難しいですよね」

奥村 「たまに辻コミットといえるケースがあります。実際にいきなり.NETフレームワークでブートローダを書いてくれるなんてすごい人もいて、そういった動きを受け入れる素地があった方が広がるのでいいとは思っていますけど」

ひげぽん 「瞬発力と持久力が共存している感じですね。僕の場合は、その場にずっといて開発を続ける持久力型ですけど、たまに神のような人が瞬発力でぱっとコードを書いて、すぐに去っていくというサイクルはあります」

――2ちゃんねるのスレッドの方はどういった状況なんでしょうか

ひげぽん 「いまは昔に比べると、技術的なトピックが書き込まれる頻度が減ってきました。2ちゃんねるで有用な情報をくれる人や、『こういうことをやってみたい』という人はWikiに誘導したり、IRCに誘ったりしたので、2ちゃんねるオンリーという人は少なくなったんじゃないかと思います」

メンバーの情報共有はWikiとIRCで

――メンバー同士の情報共有はどういった形で行っているのでしょうか。

奥村氏

ひげぽん 「基本はWikiを使っています。例えば今度APIをどうしましょうとか、普通のコミュニティだとメーリングリスト(ML)でやるような議論を全部Wikiでやっています。後はIRCですね」

――Monaの場合、Wikiへの書き込みが非常に多いような印象を受けます。

奥村 「開発に関係する議論は、ほとんどWikiでやっています。そして、Wikiに書く前のアイデアを流す場所としてIRCを使っています。MLではなく、WikiとIRCを使って開発を進めるというのは珍しいかもしれないですね」

ひげぽん 「Wikiを立ち上げた時期は、僕が新しいテクノロジ好きだった時期で、ちょうどそのころ、Wikiがはやりだした時期だったんです。それで『これにいろんなメモを張ればいいんじゃないか』と思いだして……」

奥村 「そういう話がIRCで出て、それで僕が立ち上げたというのがWikiを立ち上げたきっかけです」

――Wikiを使うことのメリットというのはどの辺にあるのでしょうか

奥村 「Wikiはトピックごとにページを作成でき、MLよりも議論しやすいインターフェイスを持っているという点をみんな気に入っているんじゃないかと思います」

ひげぽん 「WikiはMLよりも参加の障壁が低く、気軽にコメントを書いてくれる人がいます。あと、過去の議論の経緯をオープンに参照できることは、コミュニティにとって重要なことだと思っていて、Wikiの場合、過去にどういう議論が行われて、その結論になったかという流れを分かりやすくまとめることができます。なので、IRCで重要なことが決まりそうであれば、そこで議論をいったん止めて、Wikiにその決定に至るまでの経緯を書くようにしています」

奥村 「それから、IRCの雑談の中からぽろっといいアイデアがでることもまれにあって、議論をより深めるために話題をWikiに移して続きをするといったこともあります」

ひげぽん 「Wikiはアイデアをまとめるのにも適していて、ぽっとでたアイデアをほかの人にも分かりやすく記述して、みんなに見てもらう過程で、自分の考えが整理して、足りない部分について考えるようになることが大きいですね」

奥村 「誰かほかの人が書いた情報でもひげぽんがWikiにまとめることもあります」

ひげぽん 「Monaに関する情報が集積する場所としてWikiをとらえていて、いま、Monaにコンパイラを移植しようという人がいるのですが、その人はブログの方でやっていて、その情報がすごく有用なのでWikiにコピペして、経緯を残して、またそこで見つかったバグはWiki上で直すということをしています。でも、そろそろWikiの次を考えたいですね」

奥村 「それはありますね。例えば、ブログからコピーして、Wikiに情報を掲載するけど、そのブログのコメントまで常に反映できるかというとそうでもない」

ひげぽん 「WikiはMLに比べると大分議論しやすいですが、議論のためのシステムではないので、編集の衝突とか新着が分かりにくいとか、細かいことをいうとまだまだ改良の余地はあると思っています」


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