自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

第5回 組織の枠を超えたコラボが魅力 XMLコンソーシアム

加山恵美
2008/3/3

無数にある開発コミュ二ティやユーザー会といった組織。一体どんなことをしているのか。そこではどんな人たちが活動しているのだろうか……気になっている人も多いだろう。コミュニティのメンバーに話を聞き、その実像を探る。

  「XMLコンソーシアム」は、日本におけるXMLの利活用を促進させるべく、XMLをはじめその関連技術の普及啓発やXMLボキャブラリーの標準化を支援する非営利団体である。活動は部会や勉強会を中心に、セミナー開催や外部団体との協業も行う。

個性豊かな部会活動、部会をまたいだ活動も

――まずはそれぞれの部会活動の紹介からお願いします

野村直之(Web 2.0部会リーダー) 「Web 2.0部会は前身に、テクノロジー部会Semantic Webワーキンググループ、ドキュメント・メタデータ活用部会などがありますが、Web 2.0としては2年目の活動となります。企業向けのWeb 2.0を前提にマッシュアップや企業内SNSなどを題材に研究しています。最近ではWebサービス実証部会やXMLDB部会との共同プロジェクトも始めたところです」

松山憲和(Webサービス実証部会リーダー) 「Webサービス実証部会はXML、およびWebサービス関連の実証実験を行っています。実際に動くシステムを作ることを通して、新しい技術情報の収集や、話題の最新技術が本当に使いものになるのかを検証しています。特に企業内ではビジネスプランの観点から採用されないような企画やシステムでも、ここではあえて挑戦しています。活動開始時点ではSOAPやWSDLなどが研究対象でしたが、数年前からRESTやJSON(JavaScript Object Notation)などのより軽量なシステム連携技術や、WebOSやマッシュアップ技術を対象に活動しています。新しもの好きやモノ作りが好きという人が集まっています」

藤原隆弘(クロスメディア・パブリッシング部会リーダー) 「XMLコンソーシアムには印刷業関係からの参加者もいるので、パブリッシングを中心にクロスメディアを研究しています。目標とするクロスメディアは、例えば朝の通勤電車では携帯電話でニュースを見て、昼は同じコンテンツの続きをパソコンで見るといったように、紙、Web、携帯など多様なメディアでコンテンツを配信したものを、横断できるようにするものです。当部会では、XMLコンソーシアムのアライアンス・パートナーである社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)と、定期的に交流会を持つなどしています」

松永豊(セキュリティ部会リーダー) 「部会はセキュリティがテーマなので『誰かがやらなくてはならないことだから』とちょっと奉仕と犠牲の精神に根ざしたところがあります(苦笑)。これは少し冗談ですが、メンバーにはまじめな人が集まっているということです。活動は数年前にOASISの標準規格を翻訳し、「Web Services Security 1.0 日本語訳」を公開しました。最近ではWeb上のサービスで必要となる一元認証技術の調査としてSAML、Card Space、OpenIDなどの調査、システムコントロールフェア2007(SCF2007)にて製造情報連携フォーラムによるデモシステム向けセキュリティ検討報告書の作成、WebOSの認証における課題の研究(Webサービス実証部会との共同プロジェクト)、さらに最近着手したものにXMLセキュリティのツールや製品についての調査があります」

村垣委久夫(XMLDB部会サブリーダー) 「XMLコンソーシアム活動にはTravelXMLの実証実験から参加しています。XMLDB部会はXMLDBの比較やXQueryの研究などをしています。最近では実践的なプロジェクトをWeb 2.0部会やWebサービス実証部会と共同で開始したところで、XMLコンソーシアムがこれまで蓄積したコンテンツをXMLDBに格納して有効活用できるようにしようというものです。XMLDB部会の人間ですとXMLDBを扱うのは得意ですが、アプリケーション開発はそんなに得意ではなかったりします。その点をWebサービス実証部会やWeb 2.0部会とコラボレーションすることで互いの良さを引き出せればと考えています」

今回話を伺ったXMLコンソーシアムのメンバー 上段左から野村氏、松山氏、藤原氏。下段左から松永氏、村垣氏

コラボレーションの鍵は人脈にあり

――部会間のコラボレーションはどんなきっかけでどのように進めていくのですか

松山 「最初は複数の部会に顔を出している人が橋渡しとなり、きっかけとなることが多いようです。最近Webサービス実証部会、Web 2.0部会、XMLDB部会のコラボレーションが始まったところで、当初は何人かが互いの部会にも顔を出していましたが、つい先日3部会が一堂に会して話し合ってみました」

野村  「総勢で30名ほどでしたっけ。すごい盛況でしたよね。驚いたのは部会ごとに文化が違うということです。一見してネクタイをする人の割合とか、メンバーの雰囲気からして違うんですね」

松山  「こうした合同部会をすると、最初苦労するのは目標設定です。それぞれ部会参加のスタンスも違い、共同プロジェクトに対する考え方や想定している担当範囲に微妙なずれが生じていたりします。それを擦り合わせ、役割分担や成果物の形を調整するところから始めます。普段とは違う部会とコラボレーションすることは苦労もありますが、互いに得意なところを引き出せるという利点や何より新しい仲間との出会いが大きな刺激になっています。有機的にくっついたり、離れたり柔軟に動けるところがXMLコンソーシアムのいいところだと思います」

野村  「タイミングというのがありますね。普段からいろいろと情報交換していると、互いに手を差し伸べ合って協力したりできます」

松山  「Webサービス実証部会が行う相互利用性の実証実験ですと、いざ事が始まるとベンダ各社が一斉に参加し、競業相手と合同でプロジェクトを進めたりします。普段の業務ですと競業相手の製品を購入して相互利用性の実験をするのは難しいですが、ここではそれが実現します。実証実験の過程では仕様や解釈の違いなどが原因で期待どおりに動かないこともありますが、それが製品にフィードバックされ、プロジェクト途中のバージョンアップで改善されて解決したということもありました」

――外部団体との連携についても教えてください

藤原 「外部団体と連携を取るときも部会間プロジェクトのように、橋渡しできるような人物がキーになります。当部会ならXMLコンソーシアムとJAGATの両方に通じている人、実はぼくになりますが(笑)、活動や講演の提案や依頼を持ちかけます。やはりきっかけは人ですね」

松永 「セキュリティ部会で連携しているのは製造業XML推進協議会です。製造業XML推進協議会はもともと立ち上げ当時から(先に活動をしていた)XMLコンソーシアムにいろいろと相談があり、そんな経緯もあって昔からアライアンスを組んでいます。昨年は製造情報連携フォーラムがSCF2007の出展を目指して開発した合同デモンストレーション用システムについて、セキュリティ上のリスクを分析し、対策を検討するという形でお手伝いをし、報告書をまとめました」


関連記事 Index
コミュニティ活動以上に面白い会社にしたい
オープンソースコミュニティとともに歩んで
アイデンティティはオープンソースプログラマ
スキル向上にオープンソースを活用せよ
自分を磨く場所は会社の中だけじゃない
コミュニティへの参加は、好きだからこそ続けられる
自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。