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第2回 勉強会の開催は「メリット>コスト」

よしおかひろたか
2008/8/27

エンジニアの開催する勉強会が増えている。本連載では、かつてシリコンバレーで「勉強会の文化」に身を置き、自らも長年にわたって勉強会を開催し続けている「生涯一プログラマ」のよしおかひろたか氏が、勉強会に参加し、開催するためのマインドとノウハウを紹介する。

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OSC2008名古屋に行ってきた

@IT自分戦略研究所カンファレンス
上級ITプロフェッショナルのスキルとキャリア 開催
日時:2008年9月27日(土)
11:00〜18:00(受付開始 10:30〜)
場所:秋葉原UDX 6F RoomA+B
詳しくは開催概要をご覧ください。

 先日開催された「オープンソースカンファレンス2008 Nagoya」(OSC2008)に参加した。「名古屋の勉強会大集合!」というセッションがあり、地域コミュニティの元気のよさを再確認した次第である。

 考えてみれば当たり前なのだが、コミュニティとはそもそも、地域という共通の属性を持つ人たちが自発的に集うことを基本としている。インターネットの時代になり、地域を超えたコラボレーションが可能になったとしても、最終的には人と人とのつながりであり、それはフェイストゥフェイスのコミュニケーションを主体とすることが基本である。特に勉強会という、何らかの形で1つの場所に集まることを必要とするようなコミュニティは、必然的に地域密着型になる。

 「IT勉強会カレンダー」で2008年7月の勉強会の統計を取ってみた。それによれば、329の勉強会が掲載されていて、開催地別に集計してみると下記のようになった。

順位 開催地 件数
1位
東京
174件
2位
名古屋
21件
2位
大阪
21件
4位
京都
13件
5位
福岡
11件
6位
札幌
10件
番外
オンライン
23件

 10件未満の開催都市は次のとおり。仙台(4)、松江(3)、横浜(5)、長崎(1)、鹿児島(1)、広島(4)、愛知(1)、新潟(1)、石川(2)、沖縄(5)、兵庫(1)、長野(2)、岩手(1)、栃木(1)、山形(3)、水戸(1)、釧路(2)、三重(1)、室蘭(1)、青森(2)、福島(6)、湘南(1)、鎌倉(1)、呉(1)、香川(1)、つくば(2)、秋田(1)、前橋(1)、大分(1)、(順不同)。

 毎日毎日、10件以上の勉強会が全国津々浦々どこかで開催されていることになる。また、オンラインの勉強会も23回開催されている。地域を超えた参加も可能になっている。

 OSC2008名古屋に参加されていたCSNAGOYAの松本哲氏によれば、以前OSC東京に参加したとき、「近所で勉強会が全然ない」という悩みを語ったところ、「じゃあ自分で開催してみたら」と誰かにいわれ、それがきっかけとなってCSNAGOYAを立ち上げたそうだ。その話を聞いて、「もし自分が同じ話を聞いたら、多分同じようなことを答えていたかもしれない」と思った。ひょっとするとその「誰か」というのは自分だったんじゃないかなどとも思ったのだが、私の記憶力は大変揮発性に富むので覚えていない。

 自分の地域で興味のある勉強会がなかったとする。そんなとき、自分で立ち上げるというのは、ちょっと大げさな気がしないでもない。それについて今回は考えてみよう。

今回扱う「勉強会」の定義

 ここでいう勉強会とは、企業が開催する有償セミナーやワークショップのたぐいではなく、個人が自主的に開催するものとする。費用も無償、または必要経費(例えば会場費、講師への謝礼など)分の実費負担など、商用ベースでないものを基本とする。

 開催の形式も仲間うちで開催するクローズドなものから、参加資格を問わないオープンなものまで、広く考えることとする。

 参加人数、規模については、数人のこぢんまりしたものから、数十人規模までを主なターゲットと考える。

 なお、「Ruby会議」「YAPC」「LL(Lightweight Language)イベント」「PHPカンファレンス」など、参加者が100人を超える技術カンファレンスも広義の勉強会といえるが、それについては別途考えることとする。

勉強会を開催する意義

 自分の行きたい勉強会がなければ自分で開催してしまえばいいではないか、という主張は、随分乱暴な主張に聞こえなくもない。そこで、勉強会を開催するメリット、デメリットについて考えてみる。

 勉強会を開催する意義は、大きく次の4つがあると考える。

  • 自分の勉強したいことが学べる

  • 1人では学ぶのが難しいことが学べる

  • 共通の興味を持った仲間が得られる

  • 勉強会の運営を通してさまざまなことが学べる

 自分は勉強をしたいのであって、勉強会を運営したいわけではない。勉強会の運営までしなければいけないとしたら本末転倒ではないか。そう思うかもしれない。

 だが、ここで私は次のような法則を提示する。

勉強会を開催するメリット>勉強会を開催するコスト(個人的な負担)
(よしおかの勉強会第一の法則)

 考えてみよう。自分に興味のある勉強会がない状態をゼロ。自分に興味のある勉強会が存在して、それに参加できるメリットを1とする。ゼロの状態から1に移行するコストが1以上であれば持ち出しである。上述した4つのメリットは、主催するコストよりもはるかに大きい、というのが私の主観であり実感である。

 実は、勉強会を開催することはそれほど難しくない。重要なのは、勉強したいネタが明確に存在することだ。自分に勉強したいネタがまったくない人は、勉強会を開催できない。当たり前の話である。

 1人で勉強するのはモチベーションをキープするのが難しい。できれば仲間が欲しい。1人より2人。相談相手が欲しい。――そのような状況にいま、いるとする。すると何が一番難しいか。勉強会の参加者を集めることだ。

 自習ではなく勉強会の仲間を探す、というのが勉強会の第一歩である。

 勉強会を開催する目的は、「1人で勉強するには、モチベーションを維持するのが難しいし、内容的にちょっと難しい」という内容に対して仲間を募り、それを一緒に勉強するというところにある。1人では乗り越えられないような山を、仲間と一緒に乗り越えようとするのである。

 1人での学習には限界があるし、とんでもないところに落ち込んでしまっていって、にっちもさっちもいかなくなって、1人ではそこから抜け出せなくなる可能性がある。それを仲間と一緒に乗り越えようとするのである。

 共通の興味を持った仲間が得られるというのは大変貴重なことだと思う。無条件に楽しいではないか。

 勉強会の運営を通してさまざまなことを学んだが、それに触れる前に、どのように開催するか、簡単にそのプロセスをまとめる。

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