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勉強会参加のススメ

積極的な発言が勉強会を盛り上げる

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/12/27

 さまざまな開発コミュニティやユーザー会が行う勉強会やイベント。果たしてそこではどんなトピックが話されているのだろうか。興味はあるけど、スケジュールや開催場所の関係で参加の都合がつかないという人もいるだろう。そこで、勉強会やイベントに参加し、そのもようを伝える。

  コミュニティが開催する勉強会とはいったいどのようなものだろうか。そう思い参加させてもらったのは、「東京エリアDebian勉強会」。LinuxディストリビューションであるDebianに関するさまざまな情報を交換する場として、Debian JP Projectのメンバーである上川純一氏が主催する勉強会だ。2005年1月から月1回のペースで開催されている。11月18日に開催された第34回東京エリアDebian勉強会の中で話されたいくつかのトピックを紹介する。

サーバ運用で期待すること

 東京エリアDebian勉強会では参加の際に、事前に課題を提出する必要がある。今回の課題は「『DebianのLive CDってこんなふうに使っています』もしくは『ノートPCやデスクトップPCではなく、サーバ機器でのDebianに期待するものって何?』というタイトルで200〜800文字程度の文章を書く」というもの。普段からDebianでシステムを構築、運用をしている人が多いのか、「文字数制限ぎりぎりまで書く人が多かった」と上川氏がいうように、Debianをサーバで使用することのメリットを含めて多くの「期待」が寄せられた。

 Debianの強みとしてまず挙げられたのが、最小構成でのインストーラが用意されているという点。やはりサーバとして運用する場合、必要最低限のアプリケーションで運用し、必要に応じてさまざまなパッケージを追加していくといった使い方をする人が多いだろう。「ほかのディストリビューションだと使わないパッケージが多く、消そうと思っても依存関係で消せないこともある」といった意見が参加者から挙げられた。それと併せて「aptでのパッケージ管理が魅力」という声もあり、最小構成でインストールが可能で、その後のパッケージの追加が容易という点を評価する人が多い。

 とはいいつつも、「より簡単にセットアップができるといい」や「シェルスクリプトを書かずに管理したい」といった意見も寄せられ、よりシンプルなシステム構築や運用への期待も大きい。

 また、Debianに期待することとして挙げられたのは、安定性と長期間のサポート。安定性では、非安定版、テスト版、安定版という開発体制とリリースサイクルが支持される一方、サポート面では現状、Debian Projectでは旧バージョンのセキュリティアップデートは、新バージョンのリリース後、1年間または最新版ディストリビューションが置き換えられるまで提供されるが、それでも十分ではないこともあるという意見が挙がった。

kernel patch パッケージを作ってみる

 
  勉強会の様子

 この日の最後のセッションは、山根氏による、TOMOYO Linux 用カーネルパッチパッケージとツールパッケージの作成について体験談を紹介した。TOMOYO LinuxはNTTデータが開発をするセキュアOS。既存のLinuxカーネルのパッチとユーザー空間のツール群として実装されている。ポリシーの学習機能を持つといった特徴があり、「使いこなせて安全なLinuxを目指す」という目標を掲げて開発が進められている。

 今回山根氏が作成したのはカーネルパッチのパッケージとユーザーランドのツールのパッケージの2つ。「カーネルパッチのパッケージを作るのは初めてだった」という山根氏だったが、ほかの開発者が作成した別のカーネルパッチを参考に、dh-kpatchesというツールを使うことでそれほど苦労せずにパッケージが作成できたという。

 しかし、実際に作成する際に「困った」ということもあったという。TOMOYO LinuxではTOMOYO本体のソースとvanillaカーネルに対するパッチが分かれているのだが、Debianでのカーネルパッチパッケージは1つのdiffとして提供するので、2つをマージする必要があるのに暫く気付かなかった事や、ライセンスや作者情報の明示、manページがソースには含まれていなかったこと、ユーザーランドのツールについては通常とは違うディレクトリにバイナリが置かれているので違和感があるという点などだ。山根氏はTOMOYO Linuxの開発チームと連絡を取り、要望を伝えているという(その結果、本稿時点でmanページの追加やディレクトリ配置などの問題はほぼ解決している)。

パッチの制作者はどこまでパッチの品質を保証すべきか

 ここで参加者の中から、「複数のカーネルパッチを組み合わせたとき、パッチを適用する順によって動く場合と動かない場合が出て、そこが問題になりそうな気がする。ほかのパッチと合わせて適用できるか確認するべきでは」という声が起こった。

 パッケージとして作るのであれば、すべてのユーザーに対して、なるべく余計なことを考えずにパッチが適用できる環境を提供すべきだという趣旨の発言だ。ユーザー側から考えれば、カーネルパッチが適用できることが保証されていればありがたいが、そもそもカーネルパッチは個別に開発されているので、それらを組み合わせて動作確認することはなかなか難しい。

 これに対して、報告者である山根氏は「やった方がいいかもしれないが、『するべき』とまでいわれてしまうと納得がいかない。確認にかかる手間とそれによって得られる結果を考えたときにそこまで手を掛ける必要はないと思う」と反論。白熱した議論が展開された。

単なる仲がいい人の集まりではない

 勉強会に参加するからには何らかを得たいと誰もが思うだろう。今回、勉強会に参加して印象に残ったのは、個々の発表や報告に関して活発に質疑応答を行うことでより多くの知見が得られるということだ。

 ただ、発表を聞くだけでは面白い情報、自分が求めている情報に出合えない。積極的に発表者に突っ込むことによって自分が欲しい情報や思いもよらなかったことが見えてくる。勉強会に参加する際にはぜひとも心掛けたい。

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