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組み込みエンジニアは何を見るか

第8回 組み込み開発は、パッケージ開発とここが違う!

三浦優子
2007/12/13

最近注目されている組み込みエンジニア。彼ら、彼女らは、どんな製品にかかわっているのだろうか。

 携帯電話やゲーム機など、さまざまな製品に組み込まれているATOKのプロダクトオーナーを務めるジャストシステム ATOK製品開発部関郁仁氏。1995年、大学を卒業後に同社に入社し、今年で13年目のエンジニアだ。

 「大学では、情報工学部制御システム工学科に在籍していました。制御システム工学科という学科は、ソフトウェアというよりはハードウェア開発に近い分野を勉強する学科です。卒業後はハードウェア開発の仕事に就く人が多いのは事実ですが、私自身は、学生時代からソフト開発に興味を持っていました。先輩でジャストシステムに入社した人がいた縁もあって、ソフト開発をしたいという希望を持って入社を決めました」(関氏)

 入社後は望みどおり、ジャストシステムでパッケージソフトの開発を担当。その後、1998年、現在所属する組み込み向けシステム専任の部隊の前身で、Windows CE版のATOKの開発にかかわる。それ以来、さまざまなプラットフォーム向けのATOKの開発にかかわってきた。

プラットフォームごとに大きく異なる開発環境

 ジャストシステムは、「一太郎」をはじめとするパッケージソフトの開発・販売を主業務とする企業だが、同じソフト開発といっても、システム開発を主業務とする会社と比べると、その体制は大きく異なる。

 ジャストシステムでは、通常各プロダクトは「プロダクトオーナー」という開発責任者の下、社内で開発が進められる。パッケージ製品は、企業向けシステムを開発するのとは異なり、特定の利用者を想定しているわけではない。そのため、基本的な仕様などは社内で決定していくことになる。

 ところが、さまざまな機器に組み込んで提供されるATOKについては、「プラットフォームや仕様は、搭載する機器によって大きく異なります。そのため、当社のほかの開発部隊とは異なり、まずお客さまの元に出向くことが、開発の第一歩となります」(関氏)

 同じATOKで比較しても、パッケージ製品であるATOKの開発部隊が外部に出向いて仕事をする機会は多くない。ところが、組み込み用のATOK開発は、搭載する機器の開発元に出向き、仕様を確認する作業をしなければ始まらない。

やっぱり重要なコミュニケーション力

ジャストシステム ATOK製品開発部の関郁仁氏

 「当社の通常製品のプロダクトオーナーの役割は、開発責任者ということになりますが、私自身の仕事はプログラム自体よりも、プロジェクトをうまく進めるために、お客さまときちんとコミュニケーションを取っていくことが、重要な仕事になっているように思います」(関氏)

 つまり、開発者としての能力とともに協業相手と円滑に作業を進めるためのコミュニケーション能力と、関氏のようなプロジェクト責任者には、プロジェクト推進力が必要ということになる。

 「同じ開発職といっても、会社によって使われている用語が違ったりします。そういう差異をどう埋めていくかといったことについては、経験してみなければ分からないものではないかと思いますね」(関氏)という。

 使われるプラットフォームやコンパイラなど開発環境も、機器によって大きく異なってくる。

 「例えば携帯電話は、昔は端末メーカーごとに違うコンパイラが使われていました。最近はメーカーごとの差異も減ってきてはいますが、当然ほかの機器、例えば携帯電話とカーナビではまた開発環境が違う。メモリリソースの割り当ても、パソコンと比べると圧倒的に少ないです。ただ、メモリが少ないから何もできないではなく、その中でできることを探していかないといけないんです」(関氏)

 機器ごとに限定された環境の中で、いかに作業をこなしていくか――そのために欠かせないのが、メーカー側とのコミュニケーションということだ。

 関氏はコミュニケーションとともに組み込み開発に欠かせない要素として、「実はとっても重要な要素が、ビジネスマナーだったりします。社内のスタッフだけで仕事をしているのとは違いますから」と打ち明けてくれた。仕事をする相手を意識した行動が欠かせないのが、組み込み開発ということではないか。

ATOKのブランドを守ったり、メモリの割り当て増を狙ったり  

 

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