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こっそり教える組み込みエンジニアの転職事情

第19回 「採用ニーズ減」=「転職できない」という誤解

大石直也(パソナキャリア)
2008/12/19

「したいことをするため」「条件のいい仕事に就くため」など、人はさまざまな理由で転職する。組み込み業界も例外ではない。同業界を舞台にした転職活動の喜怒哀楽を、キャリアコンサルタントがこっそり教える。

 製造業の厳しい状況が報じられる昨今、組み込みエンジニアに対するニーズの変化を感じていませんか。今回は転職市場における採用の現状をお伝えするとともに、業界動向を意識した転職における注意点をご紹介します。

製造業、採用意欲が低下?

 「とにかく人が足りない」といわれ続けていた組み込みエンジニアですが、最近は経営者の不足感が「そこまででもなくなった」「一段落」という調査結果があります。単に頭数さえ増やせばよい、という状況から、スキルが重要になってきた、というニーズの変化が感じられます。

 さらに、顕著な変化があります。組み込みエンジニアに限らず、製造業のほとんどの職種に対して「採用意欲が低下している」のです。円高をはじめ厳しい状況下において、人材採用にも影響が出始めているのでしょう。

 「採用が積極的ではない」→「転職できる可能性が減る」→「転職活動を見合わせようか?」

 このように考える人がいるかもしれません。しかし、企業単位だけではなく、各部署・各部門のニーズと関連するのが転職というもの。業界全体の動きだけで転職活動をする/しないを判断するのは、実は問題があるのです。

気になる「業界動向」

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 転職活動中の人は、よく「求人は多い状況ですか?」「企業のニーズは高いですか?」という質問をします。キャリアカウンセリングにおいて最も多く聞かれる質問、といっても過言ではありません。

 もちろん、全体的な転職マーケットの状況や、業界における採用意欲、職種別のニーズの高低は存在します。

 業界全体で人材の不足感がある場合は、採用の基準が下がります。具体的には、経験のない人が採用されやすくなる、あるいは、転職回数の多い人を敬遠する会社が、それにもかかわらず(優秀な人であれば)転職回数が多い人を採用する、などです。また、年収の提示額が上がるケースも、人材の不足感がある時期に多く見受けられます。

 転職活動をするのなら、経験がなくても採用される可能性が高く、年収アップの可能性が高い時期に――そう考えるのが自然です。では、積極的に採用を行っている時期を待って転職するのが「賢い転職活動」なのでしょうか。

キャリアは日々積み上げられていく

 キャリアは日々積み重ねられていくものです。企業が積極的に採用を行うまでの間、だらだらと仕事をしていても、新しい技術や領域にチャレンジしていても、同じ時間が過ぎていきます。

 一方、採用に当たっては、「年齢に応じたスキルを得ているか」を見る企業が少なくありません。ずっと仕様書を基にコーディングばかりしていた人と、応募する前の1年でも仕様策定にかかわった人。2人が同年代だったとしたら、企業はどちらを採用するでしょうか。

 採用が積極的になる時期を予測するのは、経済の状況を予測するのと同様、容易なことではありません。いまのキャリアの発展に限界を感じた場合、転職に限らず、職場や業務を変えるよう試みることが重要といえるでしょう。

各部門の採用状況は細かなことで変化する

 業界全体で採用が積極的か否かとは別に、中途社員の採用については、所属している社員とのバランスを見て、人員の採用計画を立てることになります。事業部や部門で採用を行っている場合は、その傾向が特に顕著です。

 企業の募集要件は、例えば次のように変化します。

  • 当初はリーダークラスの人材を採用しようとしていたが、偶然、マネージャクラスの優秀な人材の応募があったので、採用することになった。今度は実際に手を動かして活躍できるエンジニアが欲しい

  • 社内の事情で異動してくる人材が見つかったので、採用をストップすることにした

 このようにたった1人の採用によって、応募要件を変えたり、採用活動を停止したりすることがあるのです。

 そもそも、自分のキャリアに合っていて、さらに社風や職場の雰囲気なども合っている企業は、それほど多くないかもしれません。あなたに合った企業が見つかったとしても、採用活動を行っているか否かは、(業界の大きな動向の影響はゼロではないとはいえ)それぞれの企業の戦略、さらには各部門の人員状況によって左右されるのです。

 転職が厳しいといわれる時期でも、転職を成功させる人は大勢います。提示される年収の「平均額」は上下しますが、不況といわれていた時期でも、転職をすることで年収が100万円以上アップするケースも少なからず存在します。

 「転職しやすいとき」「転職したいとき」「転職できるとき」――あなたにとって「本当の転職時期」はいつですか?

筆者プロフィール
大石直也(パソナキャリア)●大学で材料工学を専攻。卒業後、工業用計測器業界および自動車部品業界にてエンジニアとして経験を積む。その後、パソナキャレント(現:パソナキャリア)に入社。電気・電子・機械などのメーカー系人材の転職のサポートを行っている。


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