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コラム:自分戦略を考えるヒント(6)
SEとコンサルタントの大きな違い

〜求められるスキルとマインドはこんなに違った!〜

堀内浩二
2003/11/20

こんにちは、堀内です。今回は、先日相談に乗ったITエンジニアの矢木浩一郎氏(仮名・28歳)との会話から紹介します。彼は、@IT自分戦略研究所のコンテンツでも取り上げられる「コンサルタント」という職種に興味があるとのことでした。

SEの先にはどんなキャリアがあるのか

矢木 突然ですが、エンジニアとコンサルタントの違いって何ですか。堀内さんはSEとコンサルタント、両方の職種の経験がありますよね。

堀内 どうしてまた急に? なにかきっかけがあったのですか。

矢木 大学卒業後、社会人を5年間やってきて、「このプラットフォームの詳細設計と開発だったら、かなり質の高いモノが作れる」という自信みたいなものがついてきました。今後のキャリアを考えると、SEから一歩抜け出してコンサルタントを目指すべきなのかと思いまして……。いまの会社では、「もう少し上流の設計を覚えてからプロジェクトマネージャへ」というのが標準的なキャリアパス。特にコンサルタントという肩書きを持つ職種はありません。

堀内 このままシステム開発のプロとしてキャリアを積んでいくと、一般的にその延長にはコンサルタントがあるのか、あるいはまったく異なるキャリアがあるのか、ということを知りたいのですね?

矢木 そのとおりです。いままではSEとしてスキルアップすることしか考えていなかったので……。

ITスキル標準で定義するコンサルタント

堀内 うーん、コンサルタントは、一種のはやり言葉でもあります。「ITスキル標準」は見ましたか。経済産業省がIT業界で仕事をする人のスキルレベルを職種別に定義したものです。基本的にはITエンジニアの教育に携わる組織向けのものですが、当事者のITエンジニアも目を通しておくといいですよ。自分のスキルレベルがどの程度にあるのかを、客観的に知る1つのモノサシになりますからね。ITスキル標準は経済産業省のホームページで見ることができます。いろいろと職種はありますが、矢木さんの場合は「ソフトウエアデベロップメント」になりますね。

矢木 かなり細かく定義分けされていますね……。

堀内 まずは、細かいところは省き、最初の「職種の概要」をじっくり読んでください。

☆「ソフトウエアデベロップメント」とは〜ITスキル標準より引用
市場ニーズに基づくソフトウエア製品の企画、仕様設定、設計、プログラミング及びテストを実施する。また、上位レベルにおいては、ソフトウエア製品に関連したビジネス戦略の立案や適用コンサルテーションを実施する。

矢木 あれ、職種の説明欄に「コンサルテーション」が入っていますよ。レベルごとの達成度指標には「コンサル」という文字は見当たりませんが……。

堀内 ええ、およそ助言や提案を含む仕事は、コンサルテーションに含まれるものですからね。開発したソフトウエアを顧客に導入することになれば、自然とコンサルテーションは必要になります。矢木さんの会社でも、コンサルタントの肩書きなしに、コンサルテーションの仕事をしている方は少なからずいるはずですよ。

 では比較のために、コンサルタントの「職種の説明」を見てみましょうか。

☆「コンサルタント」とは〜ITスキル標準より引用
ビジネス上の課題に対して解決のための助言、提案及びカウンセリングを実施する。IT投資の局面においては、経営戦略策定(目標及びビジョンの策定、ビジネス戦略策定)及び戦略的情報化企画(課題整理及び分析、ビジネス及びIT)を主な活動領域として以下を実施する……。

スキルに加えて「マインドセット」が異なる

矢木 うーん、なんだか難しそうだなあ……。

堀内 難しい、易しいというよりも、まず職種の違いを見てください。職種が違うと、何が変わってくると思いますか。

矢木 仕事の内容はまず違いますよね。それと求められるスキルの違いですか?

堀内 そうですね。ITスキル標準は、職種別の「仕事の内容」と「スキル」の“辞書”を作ろうとしているわけです。

矢木 なるほど。もしコンサルタントを目指すのであれば、このスキル標準をチェックリストにして、足りないスキルを埋めていけばいいのですね。

堀内 スキルの観点ではそうですが、職種の違いを考えるときには、もう1つ別の観点から考える必要があります。それは「マインドセット」という言葉が妥当ですかね。

矢木 マインドセットですか。心構えみたいなものでしょうか。

堀内 「何を目当てに仕事をするか」「仕事の報酬は何か」という方が近いかな。もちろん仕事はお金を得るための手段なのですが、それ以外にも無形の仕事の喜びってありますよね。

矢木 ヤリガイやダイゴ味ですか。

堀内 ええ。あまり紋切り型のことをいうつもりはありませんが、エンジニアリングのダイゴ味は、仮説を立てて検証していく問題解決のプロセスや、実践的に(工学的に)何かを作り上げることだったりしますよね。

 それに比べると、コンサルティングのダイゴ味は、「顧客の成功を分かち合う」といったソフトな喜び、人に関係する喜びが多いと思います。仮に、「職種の説明」にあるように「コンサルティング・メソドロジ」なるものを学び、「経営戦略策定」に必要な知識を身につけたとしましょう。しかし、いざコンサルタントになってみると、ちっとも面白くないかもしれない。

やりたい仕事のイメージを明確に持つ

矢木 そういうことは、ITスキル標準を読んでも分かりませんよね。

堀内 ITスキル標準はあくまで「スキルの標準」ですから。文書の性格としては間違っていません。しかし、業務を遂行するのは人です。職種が違えば、その仕事から得られる喜びの種類も異なることを考えておいた方がいいのではないでしょうか。

 ソフトウエアデベロップメントという職種でコンサルテーション業務をすることと、ITスキル標準で定義されているようなコンサルタントの仕事には、そういう意味で違いがあると思います。

矢木 うーん、そうはいっても、なにしろやったことがない仕事ですからねえ……。自分の適性にマッチする面白い仕事かどうかなんて想像できないのではないでしょうか。

堀内 そのとおりです。わたしがいいたいのは、「期待値を明確に持って仕事に臨もうよ」ということ。例えば、エンジニアリングであれば実験の前に仮説を立てますよね。

矢木 なるほど。で、期待値を明確に持つにはどうすればいいのですか?

堀内 月並みですが、まずは矢木さんがやりたいと思うような仕事をすでにしている人の話を聞いたり、本を読んだりしてイメージを膨らませてみることではないでしょうか。

コンサルタントの適性とは

矢木 では、堀内さんが考えるコンサルタント像とは何ですか?

堀内 そうきましたか。わたしの経験は非常に限られていますし、ここに定義されているような格好いい仕事ではなかったような気がします(笑)。ただ、コンサルタントに求められるものは何かを、コンサルティング企業を離れてからもいろいろ考えました……。大ざっぱにいえば3つあります。

・顧客以上に顧客の成功にコミットすること
・堂々と正論を述べること
・無知を認めること。その代わりに「学びの速さ」を武器にすること

 こういうことができて、しかもそのプロセスに喜びを見いだせる人は、コンサルタントの適性があると思います。

矢木 うーむ、あまり自分には合わない仕事かも(笑)。僕はどちらかといえば、いいモノを作るというところでお客さんに喜んでもらいたいなあ。

堀内 いろいろな人に聞いてください。ITスキル標準を眺めていると、コンサルタントという独立した職種がありますが、世の中の仕事がすべてITスキル標準のとおりに分類されているわけではないですから。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。

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