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コラム:自分戦略を考えるヒント(11)
マンネリ仕事にやる気を見いだす方法

〜「可能性に基づいた選択」を探してみよう!〜

堀内浩二
2004/6/3

こんにちは、堀内です。今年のゴールデンウイークは最長11連休でした。それから1カ月。休みが長いと反動も大きいのか、今日の起-動線ランチでも、また「やる気」についての話となりました。お相手はSE出身で、現在は長期プロジェクトのリーダーをしている安田祐一さん(仮名・33歳)。

仕事の7割がルーチン業務で、やる気ダウン

安田 昨夏のコラム「『やる気』がわいてこないときの対処法」は面白かったですよ。

堀内 ありがとうございます。昨年いちばん読まれたんじゃなかったかな。

安田 あのコラムは、「動いてみることで、自然にやる気がわいてくるよ」という話ですが、いつもいつも「動ける」ってわけでもないですよね。

 僕はいま長期プロジェクトのチームリーダーをやっていますが、正直いって仕事が結構ルーチン化してきているのです。頑張って自動化のツールを作り込むと、そのおかげで人が減らされてしまう。いまのプロジェクトについてはかなりいいパフォーマンスで働いていると思うが、仕事の7割くらいがルーチン業務のように感じて……。

堀内 仕事にやる気が出ない(笑)と。

安田 そうかといって、転職理由は見当たらない。そこそこ忙しくて、そこそこ安定している会社ですけど、「これでいいのか」みたいな焦りを感じるのです。そういう気持ちでルーチン業務をやっていると、ますますモチベーションが下がっちゃうのですよ。

堀内 その場にとどまっているのも不安だし、挑戦するのもおっくうという感じでしょうか。じゃあ、話を2つに分けましょう。1つは、「いまの仕事にモチベーションの高い状態で取り組むにはどうしたらいいか」、もう1つは、「新しいことに挑戦するモチベーションをどうやって上げるか」。

マンネリ化した仕事にモチベーションを見いだすには?

堀内 例えば、プロ野球のバッターって、仕事として考えると、かなり単調ですよね。年間140回も同じようなゲームを何十年もやりますけど、彼らはどうしてその繰り返しに飽きないんでしょうか。バットで球を打つだけじゃないですか。打率だって、毎年5分ずつベースアップしていくものではありません。

安田 そんなこと考えたことなかったなあ(笑)。でも、あれはゲームだから、仕事とはちょっと違うんじゃないですか。筋書きのないドラマっていうくらいですからね。

堀内 もちろん同じとはいいませんけど、1人1人のバッターの仕事はルーチンですよね。よく選手が「目の前の打席に集中して」なんていうじゃないですか。仮に打率3割を目標に据えたとして、「ああ、4打席ノーヒットだから残り6打席の打率を5割に上げよう」とは、考えないですよね。

安田 そんなことができるんだったら5割打ってますよ(笑)。

堀内 100打席、200打席と同じ作業を必死に積み上げていった結果、ようやく1年で何打数何安打という打率(成績)が残ります。一発逆転はありません。かなり単調で根気の要る仕事だと思いませんか。

安田 まあ、そういう意味に限れば同じ作業を積み重ねていく仕事ですね。

堀内 ただ、スポーツはその場で結果が出ることの積み重ねです。すぐに結果が出るから、練習をする甲斐がある。イメージどおりにいかなかったのはなぜかを考え、次回に挑戦することができる。改善なり成長なりの手応えが目に見えてくれば、モチベーションも上がってくるでしょう。

安田 なるほど。「逆も真なり」ですね。ただ、結果がシビアに出るから、悪循環にはまるとモチベーションが下がってしまう。

堀内 そう。だから自己管理、特にモチベーションの管理が重要だといわれるんじゃないでしょうか。ルーチン業務が多いのと、モチベーション管理が重要であることから、プロスポーツの仕事はほかの一般的な仕事に生かせるヒントがありそうですね。安田さんの仕事を野球に例えると、1ゲームは何でしょうかね?

現在と未来の「ギャップ」が原動力になる

安田 いまの仕事でいえば、日々の仕事があって、毎週火曜日に進ちょく報告会をやりますから、1週間が1ゲームかな。

堀内 1週間単位で「練習→本番→反省」みたいなサイクルは作れますか。

安田 一応報告会ですから、生産性とか開発品質の指標は出してますよ。

堀内 でもその指標は、ゲームの点数みたいに興奮を呼ぶ数字ではないということですよね。チームで共有できる目標値があれば、もちろん望ましいのですが、まずは安田さんが自分のためにワクワクできるような数字を探すことでしょうね。

 ここで簡単にまとめてみましょう。「モチベーションを上げたい!」と正面切って考えていてもなかなか難しいものです。モチベーションとは、ある意味現在と未来の「ギャップ」が原動力になりますよね。スポーツは結果が分かりやすく、すぐにフィードバックされるので、現在(実力)と未来(イメージ)のギャップが見える。だから頑張れる。とすると、仕事にも意図的にギャップを作り出し、それを埋めるサイクルを作ってみたらどうでしょうか。

安田 なるほどね。どんな目標だったらいいのかな……。

堀内 ゲームの勝負のように具体的な結果が見えるもの。モチベーションアップが目的なわけですから、「実際に到達できそうなもの」でしょうね。あとはできれば複数あるといいんじゃないですか。「あれはダメでもこれはできた!」といえるように。

☆「正のフィードバックループ」とは?
 われわれの仕事では「フィードバック」は欠かせない要素です。ところが往々にして、それが「過去の過ちの指摘」にとどまり、「どうやって改善するか」まで発展していないことがあります。

 
例えば、あなたは最近仕事の現場でどのようなフィードバックを経験しましたか。仕事のミスばかりを指摘されたりしませんでしたか。そのとき、どんな気持ちになりましたか。人間関係が改善しましたか、ハッとするような学びがありましたか。

 
自分の成長に役立つと思えばこそ、周囲からの“痛い指摘”を甘んじて受けることができます。問題解決にも、その後の創造にもつながらないのであれば、それは「フィードバック」ではなく、単なる批判にすぎません。

 そもそもフィードバックには、次の3点が不可欠だと思います。

(1) 過去の行動に関する指摘を受ける
(2) 改善点・解決策を探す
(3) 次の行動に生かす


 上記のような“ループ”を形成して初めて、フィードバックは意味を持つのです。ところが、上司が「ちょっと、この間の仕事のフィードバックをしたいんだけど……」というとき、往々にしてステップ(1)でとどまり、(2)と(3)が受け手(部下)に任されてしまいます。

 部下にアドバイスをするときには、“正のフィードバックループ”を意識して、一歩踏み込んだ提案やヒントを添えてみるのもいいでしょう。

新しいことに挑戦するモチベーションを見いだす

堀内 ただ、これだけでは応急処置です。「フィードバックサイクル」を回して成長する。そして、自分はどこに向かいたいのかを考え、もう一段上位のモチベーションの支えがないと、ゲーム自体が空しくなりそうですよね。

安田 それが2つ目の「新しいことに挑戦するモチベーション」ということですか。

堀内 そうですね。いままで考えていたのは、既知の仕事を改善していくモチベーションですが、今度は未知の世界に飛び込むモチベーションです。わたしも安田さんも、あれ(例えば社内異動への応募)をやってみようとか、これ(転職活動)はまだ早いとか、いろいろ決断していますよね。

安田 僕の場合は、なし崩し的に現状維持ですが……。

堀内 受動的であっても、そちらの道を選んでいるわけですよね。最近読んだコラムで面白かったのは、「決断を下す前に自分にこう聞いてみろ!」というのです。「それは、恐れに基づいて下した決断か、可能性に基づいて下した決断か?」と。例えば、いままでにせっかく申し込んだセミナーを直前でキャンセルしたことないですか。

安田 あります(笑)。キャンセルというか、ちょっと仕事が立て込み、結果的に行かなかっただけなんですけど。

堀内 わたしもやりますよ(笑)。でもそういうときって、何か新たに人に会うのがおっくうだったりするときじゃないですか。本当に行きたいイベントだったらどうにかして仕事をやりくりして行きますよね。

安田 確かに、仕事がしたくて仕方がないから行かなかった、というわけじゃありませんでした(笑)。

「可能性に基づいた選択」を探してみよう!

堀内 では、可能性に基づいて下した決断は?

安田 チーム体制の変更を提案したときかな。もう半年前ですけど(笑)。まあ、決断といっても提案しただけですし、結局立ち消えになりました。

堀内 でも提案書を書くという行動があったわけですよね。たぶん、もっと小さいレベルまで含めれば、可能性に基づいた決断もたくさんしていると思いますよ。恐れに基づいて選んだ道には、危険は少ないですがモチベーションを上げる材料もありません可能性に基づいて選んだ道には、リスクは高いですが高いモチベーションで進めます

 日ごろは意識していませんが、1週間の終わりにでも「今週の決断」を振り返って、可能性に基づいた決断をリストアップしてみると、「モチベーションが持てるチャレンジの種」を見つけることができるのではないでしょうか。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。

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