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コラム:自分戦略を考えるヒント(14)
“転機”がきたときに考える自分戦略


堀内浩二
2004/11/5

 @IT自分戦略研究所はご存じのとおり「スキルとキャリアをじっくり考える」ことが中心テーマです。しかしそうはいっても、普段はなかなか自分戦略などは考えませんよね。では、いつ考えるかというと、それは「転機」に差し掛かったときです。

 今回お話を伺ったのは佐藤さん(仮名・28歳・男性)です。転職を考えるようになって「自分ナビWorkshop」に参加してくださいました。終了時のアンケートに「未来は過去の延長にはない、ということが分かりました」という言葉を寄せてくださったことがとても印象に残りましたのでインタビューをお願いしました。「転機に考えた自分戦略」の事例として、参考にしてほしいと思います。

幅広い経験を目指して転職を考えた

堀内 佐藤さんが転職を考えるようになったきっかけから聞かせてください。

佐藤 大学を卒業後、大手のシステムインテグレータ(SIer)に入社しました。特定業界向けのパッケージソフトの導入プロジェクトに配属となり、そこで3年ほど過ごしました。僕はシステム開発の経験がなかったのでとてもいい経験になりましたが、やはり仕事が特定のソフトウェアに固定されてしまいます。しかもプロジェクトのサイクルが長いんですね。2つ目のプロジェクトが終わった時点で上司に異動を申し出たのですが無視されまして……。

堀内 まったくの無視ですか?

佐藤 そういうことではないのですが、電子メールを出しても返事がないし、評価ミーティングで話しても、その後何も起きませんでした。若いうちになるべく多くの経験を積みたいと思っていたので、ちょっと焦ってきまして、転職活動を始めようと考えました。

堀内 なぜそのタイミングで「自分ナビWorkshop」に参加しようと思ったんですか?

佐藤 何というか、転職してもいいのかどうか、分からなかったんです。自分の目的を明確にしたいなと思っていたのと、オンラインでもOKだということだったので……。

堀内 「転職してもいいのかどうか」といわれましたが、それは面白いですね。転職するかどうかは佐藤さんの自由なのに、誰かに許可をもらうみたいないい方ですね(笑)。

佐藤 そうなんですが……(笑)。やっぱりどちらの選択が得なんだろうとか、そういうことを考えると、「転職しちゃっていいのか?」といういい方になってしまいますね。

堀内 なるほど。転職するかしないかを決断するうえでの基準を考えたかった、ということですね。

佐藤 そうです。ただ、始めてみるとだいぶ予想と違う方向にいってしまいました(笑)。

棚卸しだけではうまくいかなかった

堀内 というと?

佐藤 単純に損得では測れないなということに気が付いたんですが……。まず転職しようと思った時点で、職務経歴書と棚卸しシートを作ってみました。就職するときにも棚卸しをしたことがあったので。

堀内 充実感を得られた瞬間をリストしたり、自分の強みを考えたりすることですね。

佐藤 そうですね。そこから自分のやりたい仕事を考えようとしたんですが、あまりワクワクしなかったんですね。考えてみると、いままでも別にやりたい仕事ばかりやってきたわけじゃないのに、「これまでやって楽しかったことイコールこれからもやりたいこと」ってホントかなあ、みたいな。

 ところが自分ナビWorkshopでは、そもそも棚卸しとかは一切しないんですよね。基本的に現在と将来しかない(笑)。

堀内 棚卸しは必要だと思いますよ。ただ、自分ナビWorkshopはビジョンづくりのために重要な機能に絞っています。

佐藤 逆に「転職して、幅広い技術をこなせるエンジニアになって、それで?」とか、「どうして幅広い技術?」とか、そういうことをたくさん考えさせられるので参りました。

堀内 そうですね。ビジョンづくりにおいては具体的な目標設定が重要といわれますが、IT業界のように変化の早い業界ですと、特定の技術でメシを食い続けようと考えるのは現実的でない面があります。

 Javaであってもここ10年の技術で、10年後にはどうなっているか分からない。ところがわれわれは40年以上働くわけですよ(笑)。

 それを踏まえ、なるべく外の環境に依存しない、ありたい自分のイメージを抽出して、それを目的に据えられるように考えました。そのうえで、その目的に近づくためのチャレンジとして、何でどうやってメシを食っていけばいいかを考えればいいのではないかと。それで、経歴+棚卸しから考えていたときと自分ナビWorkshopをやってみた後で、違いはありましたか。

佐藤 そうですね。やはり普通に考えると、転職先を探すときに「できそうなことをやる」「行けそうなところに行く」というモードに入ってしまいがちだと思うんですが、「いやそれだけじゃないぞ」という観点で考えることができるようになったかな。

自分ナビWorkshopで見つけたキーワード

堀内 具体的にいうと?

佐藤 えーと、僕の場合ですと、「いろいろ経験を積みたい」「いろんな状況で役に立てるエンジニアになりたい」といって転職先を探していたわけですが、これって「どんな仕事でもしますよ」ってことですよね。でも本当にどんな仕事でもいいかっていうとそうじゃないんです。

堀内 「いろいろ経験を」といいつつ、実はえり好みしたいと(笑)。

佐藤 ワガママですみません、みたいな話ですが。

堀内 いやいや、その「えり好み」の部分を理解して、表現できるって大事なことですよ。

佐藤 転職して、経験を積んで、自分がトップに立てる技術を見つけて、それで……? というふうに考えていくと、確かに「いろんな状況で役に立ちたい」んですが、「こういう人として役に立ちたい」というのがあるんですね。僕の場合、それは技術の何でも屋さんではないわけです。

堀内 だとすると、どんな人?

佐藤 使う人にとっての最善を忘れない人というか、何か議論になったときに「いや、使う人はそうは考えないよ」といえるような人ですね。

 その要素が仕事に入っていて、そういうスキルが伸ばせること、って、どんなスキルが必要なのかまだよく分からないんですけど、それが本当に重要なことで、いくら新しい言語やプラットフォームであっても、それがなければ、転職すべきではないと思っています。

堀内 「未来は過去の延長にはない」という名言(笑)はそういった学びから?

佐藤 そうですね。僕の場合、過去を延長していても分からなかったことが、ちょっと先の方から逆算してみることでクリアになってきたので。

堀内 ちなみに、この言葉は佐藤さんが自分で考えたんですか?

佐藤 どうでしょう、自分で思いついたつもりだったんですが、何かの小説に書いてあったのかも(笑)。

◆インタビューを終えて

 いろいろ経験を積みたい。けれど、どんな仕事でもいいというわけではない。うまくいえないけれど、そこには何か基準のようなものがある。

 これは多くの方に当てはまる状況ではないでしょうか。簡単なことではありませんが、その「基準のようなもの」を何とか言葉にできれば、転職相談時にもよいアドバイスが受けられるようになってきます。

 さて、佐藤さんはいまも同じ会社にいます。自分で見つけ出した「ユーザー最適」というキーワードで、社内でやれそうなことを探しています。転職もあきらめたわけではありませんが、「まだ社内にチャレンジが残っているから」、といっていました。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役、「起-動線 for atmarkIT」エバンジェリスト。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。

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