コラム:自分戦略を考えるヒント(28)
「仕事の好循環」に必要なもの
堀内浩二
2006/3/31
■キャリアにも「流れ」がある?
先日、「流れに乗るために大企業に入りたいのだが、どうすればよいのか?」という相談を受けました。「流れに乗る」という言葉が印象的でしたのでじっくり話をお伺いしたところ、こういうことでした。
一流のSE(システムエンジニア)には大企業出身が多い気がする。おそらく、大企業に勤めていることで「いい仕事」をすることができ、それによって「高い給料」がもらえ、さらに企業内での職位が上がっていい仕事が……、というような「流れ」があるのではないか。一流のSEになるために、実力だけでなくそういう「流れ」に乗ることが必要だとすれば、大企業に勤めた方がいいことになる。
つまり図1のような「好循環」があるのではないかということです。
図1 大企業に入ると、このような「流れ」がつかめるのか? |
そういう「好循環」があるかないかといえば、ある程度は「ある」と思います。好循環のきっかけになるものは「大企業」でなくてもよく、例えば「経験」「専門的な資格」のような能力、さらには「親のコネ」のような環境要因に置き換えても、同じようなことはいえるでしょう。
ただし、そういうきっかけさえあれば半自動的に流れに乗れるというものでもありません。そこで今回は、「仕事の好循環」について考えてみます。
■仕事の好循環
「仕事の好循環」について、わたしは図2のようなイメージを持っています。
図2 堀内氏の持つ「仕事の好循環」のイメージ |
・まず何らかのチャンスがあって、仕事をします。社会人としての最初のチャンスは就職なり契約なりということになります。
・仕事をすると、何らかの成果が挙がります。仕事そのものによってスキルや経験が自分に蓄積されます。
・成果は他者からの評判や自分への自信となり、新たなチャンスの源になります。
図1にあった「高い給料」はどのように表されるべきでしょうか。給料は成果に対する金銭的な報酬ですので、金銭以外の報酬(例えば「自分のスタイルで仕事ができるようになる」ことを目指す人もいるでしょう)も含めて「仕事の報酬」としたうえで、この輪の大きさとして理解したらよいと思います。
つまり仕事における好循環とは、この輪を回しながら、自分で定義した基準において輪を大きくしていくということです。
輪を大きくしたい、社会に価値を提供して精神的にも金銭的にも充実したいと思うかどうか、思うとしてもどのくらいのスピードを望むかは人それぞれです。ここから先は、相談者のように「流れに乗りたい」「好循環の輪を大きくしたい」と願う人を念頭において書いていきます。
■チャンス・ジェネレータで好循環を加速
相談にあった「大企業」や「資格」というものは、成果を補ってチャンスを創出してくれる、いわば「チャンス・ジェネレータ」で、図3のように表現できます。
図3 チャンス作りで高速化 |
チャンス作りといっても、「専門的な資格」のように自己投資できるものから、「上司との相性」「親のコネ」のように、自分ではコントロールしがたいものもありますが、とにかく努力も運も総動員して、使えるものは使って輪を大きくしていけばいいわけです。
しかし、この考え方だけでは限界があります。年収でいえば、400万円を600万円にはできても1200万円にできる方法ではないと思います。年収が自分の3倍ある人が、自分の3倍ツイているとか、3倍能力があるというのはちょっと信じられませんよね(中にはそのくらいすごい人もいますが……)。
■真に必要なのは、チャレンジをする勇気
好循環の輪を大きく広げるには、ある種の「勇気」が必要です。
資格の勉強をするにはあまり勇気はいりません。1人でできますし、誰からもとがめられることもありませんが、ただそれだけに、(少々大げさにいえば)誰でもできることです。いくらチャンス作りに励んでも、ただ待っているだけでは十分ではありません。もし輪を広げようと思うならば、チャンスを意図的に仕事に結びつけていく努力が必要になります。
わたしはそれを「チャレンジ」と呼んでいます(図4)。
図4 好循環の輪を広げるにはチャレンジが必要 |
チャレンジは、好循環の輪を広げるためのチャンスを作り出すことと、それを実際に行動に移してみることとのセットです。
チャレンジをすることは、自分をストレッチすることであり、従って相対的なものです。仕事でよい機会をもらえないと感じる人ならば、独学でスキルを磨くだけでなく、上司に訴えることがチャレンジになるかもしれません。そこまでやっているとしたら、自ら顧客にインタビューして提案余地を見いだし、上司の上司に提案することがチャレンジになるかもしれません。
チャレンジは、その定義上、必ずリスクを伴います。上記のようなことをしたら上司からは叱責を受けるかもしれません。自分の能力を超える仕事に挑戦したら失敗するかもしれません。新しい価値を提供したつもりでも、無視されるかもしれません。
目の前にリスクがあれば、誰でも不安を感じます。叱責や失敗、拒否や無視といった結果に終わるかもしれないという恐怖は大きなものです。しかし、長期的に見て自分の輪を大きく広げる結果につながると判断できるなら、ある程度の失敗は必要なこととして受け入れていこう。好循環の輪を広げるための「勇気」とはそういう意味です。
筆者紹介 |
堀内浩ニ●アーキット代表取締役。早稲田大学大学院理工学研究科(高分子化学専攻)修了。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。1998年より米国カリフォルニア州パロアルトにてITベンチャーの技術評価プロジェクトに携わった後、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。2000年に帰国、ソフトバンクと米国VerticalNet社との合弁事業において技術および事業開発を担当。 |
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