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コラム:自分戦略を考えるヒント(42)
仕事の「縦」と「横」を考える

堀内浩二
2007/6/28

仕事の「縦」と「横」

 こんにちは、堀内浩二です。キャリア雑談をする中でよく聞くのが、仕事と年齢のアンマッチに対する不安です。自分の年齢であればもっと高いスキルが要求されるのではないか、あるいは同じ仕事で転職するには、自分は年齢が高すぎるのではないか。特に転職を意識されている方からそういうご相談を受けます。

 個々のご相談はさておき、仕事の幅をどう広げていくかというテーマは、専門性の高い仕事をしているエンジニアの皆さんには興味のあるところではないでしょうか。

 田坂広志さんの『プロフェッショナル進化論 「個人シンクタンク」の時代が始まる』という本(PHP研究所)には、仕事の幅(プロフェッショナル・フィールド)を広げる方法として印象的な言葉がありました。

「自分の仕事を『縦』でなく、『横』にしてみる。」

 ここで「縦」というのは仕事のテーマであり、「横」というのは仕事の方法です。ネットワークエンジニアであればネットワーク技術が「縦」、仕事をこなす自分なりの方法論(調査・分析のアプローチや問題解決のやり方など)が「横」に当たります。

「縦」と「横」、どちらが重要?

 わたしの限られた経験からではありますが、エンジニアを含むスペシャリストの方は往々にして自分の「横」のスキルを過小評価している方が少なくないと感じます。以前の会話を思い出してみると、こんな発言がありました。

「重要なのは『成果』ですよね。それをどうやって出すかはプロならば個人個人で考えるべきことでしょう」
「『コミュニケーション力を生かす』といっても、資格があるわけじゃないしなあ(笑)」

 あくまでも「縦」が主であり、「横」は従であるかのようにとらえられています。確かに「横」だけでは仕事にならないし、「横」のスキルは資格の対象になるようなものではないと思います。しかし仕事の幅を広げる、つまり仕事のテーマ(「縦」)の方を変える際には、仕事の「横」、つまり自分なりの仕事の方法をどれだけ生かせるかが非常に重要になってきます。

 自分の「横」の強みを理解していなければ、新しい「縦」に挑戦する勇気がわかなくなってしまいます。専門家の方が往々にして自分のフィールドから出たがらないのは、「縦」が強すぎるがゆえに自分の「横」スキルがどこまで通用するかを考えたことがなく、不安を感じるという側面があるのではないでしょうか。

 自分の仕事のテーマ(「縦」)がどのような方法(「横」)によって支えられているのか。実はこれ、なかなか気が付くチャンスがありません。仕事の方法は、「縦」の仕事をこなすうえで必要なスキルとして学校や職場で少しずつ教わってきたことですし、ほかの職種と比較する機会もなかなかありませんから。

他流試合で仕事の「横」を発見する

 わたしは現在ビジネススクールの講師も務めていますので、さまざまな業界・職種・職位の方にお目に掛かる機会があります。そのような場で参加者の方が一様に驚かれるのは、いかに自分が、帰属する「世界」の思考パターンに染まっているかということ。個人差もありますが、長年携わってきた仕事の違いが顕著に出てきます。自分のものの見方・考え方が偏っていたことに気付く機会でもありますが、実は自分の培ってきたものの強さに気付ける機会でもあります。

 エンジニアの参加者は、数は多くないものの、おしなべてある特徴を持っています。それは問題分析に強いこと。エンジニアであれば多くの方が(それとは知らずに)身に付けている工学的な問題解決のアプローチが、ほかの職種の人から「そこまで考えるのですか!」と驚かれる光景をしばしば見掛けます。ITとは異なるテーマ(例えば経営分析)であっても、分析的なアプローチはかなり使えるのです。

 以前、このコラム欄で「強みとは相対的なもの」と書きました(「強みの上に自らを築け」)。上記のような「他流試合」によって、自分のいまの環境では分からない「強み」に気が付けたとしたら、これは貴重な発見ですね。

 では、そのような発見の機会をどこに求めたらよいか。ビジネススクールでも、非営利組織の運営や手伝いでも、何でも構わないと思います。要するに自分の「縦」が通用しないような世界で時間を過ごしてみること。そうすれば、おのずと自分の持っている仕事の方法(「横」)が分かってくるのではないでしょうか。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役、グロービス経営大学院 客員助教授。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。シリコンバレーに移り、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。帰国後、ベンチャー企業の技術および事業開発責任者を経て独立。現在は企業向けにビジネスリテラシー研修を提供するほか、社会人個人の意志決定支援にも注力している。

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