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コラム:自分戦略を考えるヒント(43)
転職コンサルタントはITエンジニアのブログを読むか

堀内浩二
2007/7/18

 こんにちは、堀内浩二です。以前「ブログで育てる自分戦略」というタイトルでブログの効用について書きました。今回は、潜在的な読み手である転職コンサルタントの方からお話を伺うことができました。有山義也さんはワークス・アンド・アソシエイツの転職コンサルタントとして日々ITエンジニアと接しておられ、転職希望者のブログからも有益な情報を得ているとのこと。自分のブログは転職時にどのように活用できるのでしょうか……。

転職コンサルタントはブログからパーソナリティを読む

堀内 まず、ITエンジニアの書くブログをどのように読まれているかを教えていただけますか。

有山義也氏は、ワークス・アンド・アソシエイツのシニアコンサルタント。これまで多くのITエンジニアの転職を支援してきた

有山 私は大きく2種類の目的で読んでいます。1つは業界や技術の動向を知るため。これは日々の情報収集の一部ですね。もう1つが、今回お尋ねのあった、キャンディデイト(有山さんがご担当されている転職希望者)の方をよく知るためです。

堀内 担当したITエンジニアの方がブログを書いていて、そのアドレスを教えてくれたら、必ず見るそうですが、有山さんはキャリアカウンセラーの資格もお持ちですよね。ですので、対面でもかなりその方の人となりをつかめると思います。では、具体的には何を期待してブログを見に行かれるのでしょうか。対面では分からない、ブログで初めて分かるようなこともありますか。

有山 ブログは対面でのキャリアカウンセリングに代わるものではありませんが、直接会ってお話しできる時間は限られています。ですから、一番大きな目的はその方のパーソナリティを少しでも深く知ることですね。例えば会ったときはおとなしい印象の方でも、ブログでは冗舌で、かなりユーモアのセンスもある方だったりします。こういう一面は、対面では分からないとまではいいませんが、ブログを読むことでよく理解できます。そのほか、興味のあるテーマ、バーチャルな世界での社交性、文章の内容、論理的な表現と情緒的な表現のバランスなどなど、参考になりそうなものは多いですね。

堀内 内容や表現から、その人の能力を見定めるということですか。

有山 いえ、やはりパーソナリティ、つまりその人の持っている特質をよく理解するということです。

自分をよく分かってもらう、2つのメリット

堀内 転職者側からすると、自分をよく見せたい心理も働きそうですが、パーソナリティをよく知ってもらうことは、転職する側にとってどんなメリットがあるのでしょう?

有山 大きく2つあります。1つ目は、その方により適した求人案件を紹介できる可能性が高まることです。例えば、会社の社風とその方の個性が合うかどうかという点。「この方は技術を突き詰めたいタイプなんだな」ということがよく分かれば、社風的にもポジション的にも、突き詰めることを是とする求人案件をなるべく優先して紹介することができます。

筆者の堀内浩二氏

堀内 なるほど。個人のそういう特性を踏まえて企業と個人をマッチできるところが、御社のような紹介事業の付加価値ということですね(笑)。

有山 ありがとうございます(笑)。2つ目は、もし面接にまで進んだ場合、その方のパーソナリティと面接官との相性に応じたアドバイスをすることができます。面接でアガってしまいそうな人、面接を軽く見ている人、実績を大げさにいう傾向のある人など、いろいろなタイプがありますよね。一方面接官の方にも、意図的に強面を崩さない方、逆にソフトに接してくる方など、いろいろなタイプがいます。

 そこで、本質的でないところでお互いの理解が損なわれないよう、われわれは転職希望者に事前に情報を入れておきます。例えば面接でアガってしまいそうな人であれば、「2次面接に出てくる○○部長は、たぶん仏頂面をしていると思うけど、それはあなたへの評価とは関係ない。落ち着いて話せば大丈夫」とか。

堀内 自分のパーソナリティをよく知ってもらえば、受けられるアドバイスの精度が高まるということですね。

 ブログは主にパーソナリティを知るために読むとのことでしたが、仕事や技術のことも書いてあったら参考になりますか。

有山 そもそも転職コンサルタントに読ませるためだけにブログを書く人もいないと思いますが(笑)、そういったことは気にせず、思ったことや興味のあることを書いていただければと思います。仕事や技術の話は、あればあったで歓迎します。例えば「この技術にこれだけの思い入れがあったんだ」という形で、対面でお伺いしたことをより深く知るきっかけになったりしますので。

多様化しながら広がっていく、Webと転職

堀内 ブログの書き手に転職コンサルタントから声が掛かってくるケースもあるそうですが、ブログは今後そのようなツールとして使われるようになるでしょうか。

有山 いまのところ、私はブログを接点とすることに積極的ではありません。ブログを書いている人は、それぞれブログに対する世界観のようなものを持っていると思います。そういった場でいきなり転職への興味を尋ねても、歓迎されるとは思えないからです。

 コメントをばらまいていけば、転職希望をお持ちの方に出会えるかもしれませんが、やはり転職というキャリア上の一大事をお手伝いする仕事ですから、そのような形では出会いたくないとも思っています。

堀内 「書き手の世界観を尊重する」。なるほど、いい言葉ですね。では今後、ブログのような個人の情報発信ツールと転職の関係は、どうなっていくと思われますか。あいまいな質問ですみません……。

有山 Web関係の仕事、例えばWebディレクターであれば、経歴書の8割には何らかのURLが記載されています。かかわったWebサイトのURLや、仕事のポートフォリオをまとめたURLです。彼らは仕事の成果がWebサイトなので当然ですが、そうでなくても、今後いろんな形で転職プロセスにWebが活用されることは間違いないと思います。

 ブログはパーソナルなものなので、転職ツールとしていま以上に活用されるようになるとは思っていません。ただし、個人でドメインを取られて情報発信をされている方がいらっしゃいますよね。相手先企業にもよりますが、アピールとしては有効だと思います。

堀内 企業に出す経歴書には、ブログあるいは自分のWebページのURLを付けるべきだと思いますか。

有山 うーん、それはケースバイケースでしょうね。ブログの内容にもよりますし、企業にも好みがあります。そういうツールの使いこなし方を含めて評価してくれる企業もあれば、情報は指定の書式に落として持ってきてほしいという企業もあります。その辺はぜひご相談ください(笑)。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役、グロービス経営大学院 客員助教授。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。シリコンバレーに移り、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。帰国後、ベンチャー企業の技術および事業開発責任者を経て独立。現在は企業向けにビジネスリテラシー研修を提供するほか、社会人個人の意志決定支援にも注力している。

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