自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

コラム:自分戦略を考えるヒント(35)
ブログで育てる自分戦略

堀内浩二
2006/11/30

 こんにちは、堀内浩二です。先日、ちょっと変わった転職相談を受けました。「キャリアコンサルタントから、ブログを書くことを勧められた。その理由がよく分からなかったのだが、書くべきなのか?」というもの。

 勧めた方の意図は分かりませんが、わたしもブログを書くことには意義があると思います。そこで今回は、自分自身が5年ほどネット上に文章を載せ続けて学んだことを振り返り、「自分戦略作りに役立てるためのブログ術」について考えてみたいと思います。

メリット(なぜ書くべきなのか?)

 いま「ブログを書くことには意義があると思う」と書きました。わたしの感じた「意義」とは、テーマを決めてブログを書くことで、自分の興味と専門性を長期的に合致させていけそうだということです。

 「自分の興味と現在の仕事が乖離(かいり)していること」は、キャリアに関する悩みの中でも最大級のものでしょう。
  「○○の分野の経験はないが強い興味を持っている。学習意欲をアピールすれば大丈夫か?」

という転職相談がしばしばあります。仕事から学ぶ姿勢はもちろん重要です。しかし、これだけ情報を手に入れやすい時代です。興味がある分野であれば、いますでに何らかの学習をしていることが期待されるでしょう。学校で集中的に学ぶのもよいですが、時間的・経済的なことを考えると誰でもできる選択ではありません。

 ブログを少しずつ書いていくことで、「興味のある分野を追いたいと思っていても、なかなか手が付けられない」状態を回避できます。また後述するように、書き方を工夫すれば情報の蓄積と思考トレーニングにもなります。考えるだけでは仕事上の経験の代わりにはなりません。しかしさまざまな思考経験によって、単に言葉を知っている・読んだことがあるという以上の深みを、自分の言葉に持たせることができます。

 そのほか、ストレス解消効果もあります。やりたくないことが目の前にあるときほど、ほかのことをしたくなるもの。短い時間を自分のために使い、それが蓄積されていくのを見るのは励みになります。

テーマとポジションの選び方

 今回の目的(興味と専門性を合致させる)に沿って考えると、自分の興味をうまく包含しつつ、ある程度絞ったテーマがよいでしょうね。また、テーマの選択と同時に考えておきたいのが、ポジション(書くときの立場)です。ざっと下記のようなポジションがあるでしょう。

  • 「専門家」として主張する。
  • 「解説者」として解説する。
  • 「研究者」として考察する。
  • 「傍観者」として話す。

 もちろん複数のポジションを混在させて構いません。今回はこれから専門性を深めていきたい分野をテーマとすることを想定していますので、基本路線として「研究者」をお勧めしたいと思います。

 テーマとポジションが見えてきたところで、タイトルを考えてみます。実際にはブログのタイトルは、必ずしもテーマを表す必要はありません。

 ただ、前回の記事「これからのITエンジニア像を考える」で書いたように、自分のテーマを短い言葉で考えてみるのは職業観を養うよいトレーニングになります。ですので、現在ブログを持っている方も、タイトルを変えると仮定して考えてみてください。

「『Java屋(志望)のつぶやき』は? 狭いかな?」
「『OO開発方法論の先端を追いかけるブログ』は? 先端である必要はないか……」
「『オブジェクト指向で生産性100倍研究所』は? 技術志向(OO)と実践志向(生産性)が両方あるのがいいな。威勢もいい感じだし……」

などなど。自分の城ですので、夢のある名前にされるとよいと思います。

書き方(どうやって書くのか?)

 情報収集や文章術などテクニックの話は、今回は割愛します。わたしの経験からお勧めできるのは、「日記」と「週記」のコンビネーションです。日記は日々のメモ、週記はすこし腰を据えて書くコラムというイメージです。下に解説します。

日記のコツ:客観と主観をセットで、テーマに結び付けて

 見聞きしたことや考えたことをメモしていくだけでも、一定期間続ければ、自分の興味の所在や限界が見えてきて面白いものです。加えて、個人的に意識したいと思っていることを2つ紹介します。

 1つ目は、客観と主観のバランス。これは特に意識していなくても実践されている方が多いと思います。ブログを書きたくなるきっかけを乱暴にも2つに分けてしまうと、下記の2つでしょう。

  • 書きたくなるネタを見つけた(ネタ系=情報重視)
  • 書きたくなる何かを考えついた(つぶやき系=主張重視)

 ネタ系ブログも、情報の切り取り方によって主張が出せます。つぶやき系ブログであっても発端は何かのネタです。ですから客観的な情報のみ、主観的な主張のみという文章は実際にはほとんどありません。ただしブログを見ていると、人によってどちらかに偏ってしまう傾向はあります。ネタ(情報)の蓄積は自分用のデータベースに、つぶやき(主張)は思考トレーニングに、それぞれなります。意識して両者のセットを書くことで、研究も進むと思います。ネタには考察を、つぶやきには根拠を、それぞれ添えてみましょう。

 2つ目は、何でもテーマに関連付けてみること。これは創造性を養うトレーニングにもなります。個人的には非常にお勧めしたい方法。

 例えばテーマがネットワークなら、文芸書の感想を書くときにも「ネットワーキングという観点からいえばこの本は……」と、無理やり書けないか考えてみる、ということです(日記では、無理してまで書く必要はありません。テーマにつなげようと挑戦してみることが重要)。

 関連付けて考える癖がつくと、直接関係ない経験からも教訓を引き出せるようになります。また理解が多面的になり、結果として話す内容が深くなります。

●週記:ちょっと背伸びをして

 日記は徐々に「日々雑感」になってしまうかもしれません。しかし時々はコラムを書くつもりでテーマに向き合ってみましょう。ブログのカテゴリに「週末コラム」などのタイトルを付けておくとよいと思います。

 これは仕入れた情報を再度眺め、自分なりの見解をまとめる非常に良いトレーニングです。かなり興味があったり、知っているつもりの分野でも、半年くらい(コラム26本)書くと、かなり書き尽くし感を感じると思います。重要なのは、蓄積を吐き出したその先も継続すること。ネタがなくてもとにかく書くことを自分に課していくことで、情報収集や学習への意欲を維持することができます。

 わたしは、この4年で約200本の週記を書いてきました。ほぼ毎週末、1つのテーマ(社会人個人の意志決定)について、その週に会った人や読んだ本からの学びをまとめます。恥ずかしい出来のものもあれば、以前に考えたことを忘れて「再発見」してしまったものもあります。しかし総じていえば、確実に学びを深めていけていると感じており、資料集としても重宝しています。

FAQ(受けそうな質問を先回りして)

●で、結局転職に役立ちますか?

 ブログを見て回って声を掛けているスカウトの方もいます。すでに「専門家」として書ける方は、そういう読まれ方を意識してもいいですね。ただ今回は「研究者」として書くブログですから、長期的に自分の興味を仕事に結び付けるための取り組みと考えた方がよいと思います。そういう意味で一番役に立つのは、直接経験を補うための思考経験を積めるということでしょうか。

●結構大変そうに思えるんですが?

 そうですね。常に一定の時間を本業以外に割くこと自体が大きなコミットメントですし、同じテーマで長く続けるのもそれなりに大変だと思います。

 ただ、今回の目的(経験のなさを補って、仕事を自分の興味のある分野に引き寄せる)を考えれば、細切れでできることなので、努力に見合ったやりがいがあるのではないでしょうか。また、これはわたしの経験でもあるのですが、長く続けられないことによって、実はそれほど強い興味を持っていなかったことが分かるという効果も期待できます。

●そもそもテーマが見つからないのですが?

 長く続けても嫌にならないテーマが見つかるまで、あれこれと試してみてはどうでしょうか。逆説的ですが、やってみないとやりたいことなのかどうか分からないものだと思います。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役、グロービス経営大学院 客員助教授。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。シリコンバレーに移り、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。帰国後、ベンチャー企業の技術および事業開発責任者を経て独立。現在は企業向けにビジネスリテラシー研修を提供するほか、社会人個人の意志決定支援にも注力している。


関連記事 Index
スキルアップの基本はどんな技術も同じ
「外側の尺度」に振り回されない自分を持て
失敗する戦略の原因とは!?
1人ひとりの「戦略」立案、その手順とは?
「問題解決力」を高める思考スキル
GTDのそこが知りたい (ITmedia Biz.ID)
自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。