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コラム:自分戦略を考えるヒント(48)
バカ社長、バカ上司、バカ部下を何とかする

堀内浩二
2007/12/27

 こんにちは、堀内浩二です。「うちのバカ社長が変わらない限り、何も変わらない」。転職相談でよく聞くフレーズです。今回はこの難問を考えてみたいと思います。転職活動を考える前に、どうせですから「バカ○○」をまとめて何とかすることに挑戦しましょう。

「相手が変わってくれれば、自分の問題は解決する」という幻想を捨てる

 もし「相手が変わってくれれば、自分の問題は解決する」という前提を持っているならば、それは一度棚上げしておきましょう。相手を変えることができるなら、問題は解決しているはず。バカ呼ばわりしたくなるということは、すでに何らかのトライをして、失敗をしているということでしょう。ここでは、自分の状況を相手と共有したり、相手に真摯(しんし)に語りかけたりといった努力は、すでになさったものと仮定します。

 「相手が変わってくれれば……」式の発想がうまくいきそうにないことは、逆の状況を考えてみても分かります。わたしもあなたも、誰かには「あの人さえ変わってくれれば……」といわれていることでしょう。表立ってはいわれていないとしても、陰ではそう思われているかもしれません。だからといって、誰かに何かいわれるたびに自分の考えや信念を変えたいでしょうか。答えはNOでしょう。もちろん、わたしもあなたも、基本的にはオープンな人間であって、他者からのアドバイスを謙虚に受け入れる用意はあります。それでもなお、譲れないラインはあります。

 相手は、というよりわれわれは一般に、そう簡単には変わりません。変わらない相手に自分の問題解決を依存してしまうと、いつまでも解決できないことになってしまいます。

相手のものの見方・考え方を理解する

 こちらが変わってくれとお願いしたところで、相手は変わらない。その前提で状況を打開するには、大きく2つの方向がありそうです。

 1つ目は、「相手にとっての自分の位置付けを変える」こと。2つ目は、「相手が自発的に自身を変えたくなるような発見を促す」こと。1つずつ考えてみましょう。

 まず、「相手にとっての自分の位置付けを変える」こと。例えば「自分の出世しか考えないバカ上司なので聞く耳を持ってくれない」のであれば、上司の出世のために役に立つ存在になるということです。相手のものの見方・考え方(パラダイム)を変えずに聞く耳を持ってもらおうとしているのですから、まずは上司にとって耳を傾けるべき存在にならなければなりません。

 こう書くといかにも迎合主義的な感じがしますが、上司がAをしろといったらAをしろと提案しているわけではありません。Bという対案を出してもいいのですが、そこに「Bの方が上司にとってもメリットになる」というタイプの理由付けをするということです。

 上司にとって耳を傾けるべき存在になるためには、上司の上司、上司のライバルの目に留まるように努力することが、功を奏する場合もあるかもしれません。逆に失敗するかもしれません。

 要は、相手のものの見方・考え方をよく理解するということです。バカと呼ぶほどの相手ですから好きか嫌いかといえば嫌いなはず。嫌いな人のものの見方・考え方をよく理解するというのは、かなりエネルギーを消耗します。しかし相手の立場に立って、相手の考え方を理解しようと努めることで、違った風景が見えてくるかもしれません。

 次に、「相手が自発的に自身を変えたくなるような発見を促す」こと。人は自分で発見したことにしか本当には納得しないといいます。そこで相手が自発的に「そういうことか!」と思えるような体験を用意するということです。上司に対して部下がそういう体験を演出するのは難しいですね。しかし、あなたのバカ部下に対してであれば、方法があるかもしれません。例えば、部下に部下を付けてあげる、成果に対して責任を持ってもらうという体験を通じて、視野を広げてもらうということです。

 これも、こうやって書くのは簡単ですが、実施は容易ではありません。上司の気持ちを知れとばかりに放置してしまえば、逆恨みを買うのがオチでしょう。「どうだ分かったか」と言ってしまえば、相手が自分で発見したことにはなりません。従って納得は得られません。ここでもやはり、相手のものの見方・考え方を理解したうえで、どのような体験を通じてどのような発見を期待するのかを予測する必要があると思います。

自分でコントロールできることに集中する

 「相手のものの見方・考え方をよく理解する」ことで、もしかしたら「バカは自分だった!」という発見があるかもしれません。それはそれで喜ばしいことです。上で述べた2つの方向性には、もう1つ共通点があります。相手に依存せず、自分でコントロールできることに集中すること。このことについて印象的な記事を読みましたので紹介させてください。いじめられていた少年を、祖父が木登りに誘ったシーンから。

木の上でほしいものを聞かれ「友達」と答えた。すると祖父が「作るのは簡単だ」という。「そんなことはない。僕はみんなに合わせてがんばっているのに」。反抗した私に祖父が投げかけた言葉は「自分が面白いと思うことをやることだ。そうすれば友達は寄ってくるよ」。
木の上のツリーハウス造りが始まった。しばらくすると、私をいじめていた友達が下から興味深そうに眺めている。「登ってもいい?」とたえかねたように聞く友達に私は「登ったら意地悪しちゃだめだよ」とルールを作った。

ジョン・ギャスライト、「海渡り“本立て”の国へ」、日本経済新聞(夕刊) 2007年12月7日より

 自分は好きなことに没頭しているだけなのに、周囲に影響を与えている。作為的にはできませんが、こういう影響の与え方もありますね。

 上で考えたような方向で、必ず良い結果になるとは保証できませんが、少なくとも「相手が変わってくれないから、自分の問題は解決しない」という思考停止モードには陥らずに済みます。なお、具体的な交渉の設計については、当コラムの第13回「上司がダメで転職を。が、その前に……」も参考にしてみてください。

何ごとにも限度はある

 「そんなテクニックは、うちのバカ○○には通用しない」と思う方もあるかもしれません。実際にそうかもしれません。相手と自分のどちらがバカにせよ、「バカにつける薬はない」という諺(ことわざ)があるのも、故なきことではないでしょう。

 どこまで頑張ったらあきらめるかの線引きは難しいですが、「相手のものの見方・考え方をよく理解する」というところにヒントがあるように思います。相手のものの見方・考え方がどうしても理解できないならば、(どちらが正しいかは別にして)上のアプローチは通用しないことになります。世の中には、法律違反と知っていてそれを強いる会社だってありますからね。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役、グロービス経営大学院 客員准教授。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。シリコンバレーに移り、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。帰国後、ベンチャー企業の技術および事業開発責任者を経て独立。現在は企業向けにビジネスリテラシー研修を提供するほか、社会人個人の意志決定支援にも注力している。

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