ストレスと上手に付き合うために
ITエンジニアにも重要な心の健康
第13回 突然襲うバーンアウト(燃え尽き)症候群
ピースマインド
カウンセラー 谷地森久美子
2005/1/20
エンジニアにとっても人ごとではないのが心の健康だ。ピースマインドのカウンセラーが、毎回関連した話題を分かりやすくお届けする。危険信号を見逃さず、常に心の健康を維持していこう。 |
■バーンアウト症候群と事例
バーンアウト(burnout)はストレスと並んで、読者も耳にしたことが多い言葉であろう。日本においては「燃え尽き(症候群)」という表現が一般的である。
ここでは事例を通して、バーンアウトを具体的に考えてみよう。
システムエンジニアのAさん(32歳)の1日は次のような感じで過ぎる。早朝に目が覚めると、習慣からパソコンのスイッチを入れる。前日やり残した仕事のチェックをするためだ。コーヒーを飲みつつ、1日の予定を頭の中でイメージする。
どうやったら、手早く作業を進められるか、途中ミスはなかったかなど。自宅で仕事モードに頭を切り替えているため、職場に着くとほかの同僚たちがタバコで一服しているあいだに、早々に仕事に取り掛かる。そしてそのまま、勢いに乗って夜10時近くまでペースを崩さず作業を進めていく――。
Aさんいわく、「1つの仕事を任されると、納期が迫っているかどうかに関係なく、とにかく素早く仕上げたいのです。ある特定の仕事に割く時間が長引けば長引くほど、次第に飽きて嫌になってしまうので」。
Aさんの話を聞いているだけでも、こちらも疲れてしまうような仕事の仕方である。休日でも同様に、TOFELや資格取得のための準備に余念がないようだ。同僚が、「たまに突然疲れることはないの、無理してない?」と尋ねてみても、「いいえ、忙しくしている方が体調がいいんです」とAさんはさらっと答えるのであった。
ところが――。ある大きな仕事がひと山越え、数カ月ほど経過すると、Aさんは突然、仕事もプライベートも何もする気が起きなくなってしまった。まるでガソリンが切れた自動車のように。
疲れ知らずのAさんにとって、この状態は理解しがたく、混乱の中、筆者を訪れたのである。
バーンアウトを一言で説明すると「ある日突然、意欲が燃え尽きてしまうこと」である。元気で働いている人ほど、バーンアウトに陥りやすく、これまでの意欲まんまんの様子と、その後の落ち込みの落差が非常に激しいという特徴がある。
■バーンアウト症候群の特徴は
田尾雅夫氏などの報告(『バーンアウトの理論と実際』田尾雅夫・久保真人著、誠信書房)を参考にまとめると、バーンアウトとは以下のとおりである。
(1)消耗感または疲労
バーンアウトに陥った際に最も典型とされる症状。例えると弾力のあったゴムが疲弊し伸びきったような、単に体が疲れ果てたということにとどまらず、もう何もする気力がなくなったという意味で情緒的な消耗感である。
(2)人と距離を置く姿勢
上記のような消耗感から自分を守るために人との接触を制限し、場合によっては突き放すような態度を取ったりする。個人を十把ひとからげにし、人をモノのように扱う。一方、“人とのやりとりのわずらわしさ”から逃れるために事務処理に集中することも特徴の1つである。
(3)個人的達成感の後退
するべきことを成し遂げたという気分が実感できず、あるいは実感できそうもないと予期することで、なおのこと達成感が得られないという傾向である。マイヤー(1983)は環境と個人の相互作用に着目し、個人の頑張りは特に称賛されず、一方で失敗すると自己の責任が問われるという“割の合わなさ”が意欲を乏しくすることを示唆している。
バーンアウトの状態は、個人の性格に加えて環境との相互作用で生じるものである。そのため、読者1人ひとりに合った対処法を紹介することは難しい。
ただし、Aさんのように“時すでに遅し”となる前に、「バーンアウト」のことを知識として頭に入れておくことが大切である。知識があれば、“いつもの自分と違う感じ”(体や心のSOS)をキャッチし、速やかに対応できるからだ。
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