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特集:SIerの未来、エンジニアの未来

第5回 ひがやすを「SIerは顧客の良きパートナーとなれ」


岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2009/12/22

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従来型大規模SIerとパートナー型SIerに二極分化する

―― SIという業態は現在、日本のIT業界の中で大きな売り上げ規模を占めています。今後、同じように続いていくのでしょうか。

ひが 大きなプレーヤーに集約されていくと思います。規模が大きすぎて、変化することがリスクになるようなお客さまは変わらず存在します。そういうお客さまに「安全で安心なサービス」を提供することが最優先されるビジネスはなくなりません。何億円、何十億円という規模の世界です。逆にいえば、従来型のSIビジネスはそこに特化していくしかないと思います。

 それとは逆の方向に、お客さまの「良きパートナー」になるというスタンスがあります。はっきりと二極化していくでしょう。

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―― そうなると、SIerで働くITエンジニアも、大規模な方向に進む人と、パートナーの方向に進む人に分かれそうですね。どちらの道を進むか、自分で明確に決めておいた方がよいのでしょうか。

ひが そうですね。エンジニアを突き詰めるより、大きなプロジェクトを成功させることにモチベーションを感じるのであれば、大規模な方向に進むといいと思います。

 逆に、エンジニアとしての自分を大切にしたい人は、大規模な方向には進まない方がいいでしょう。あんまり規模が大きくなってしまうと、エンジニアではいられません。マネージャになってしまいます。もちろん、それも重要な仕事なのですが。

 エンジニアリングが好きなら、お客さまの良きパートナーになる方向を選んだ方が幸せになれると思います。

―― よく「プログラマ35歳定年説」なんていわれて、ずっとエンジニアを続けたいのにマネージャをやらされてしまうケースがあったと思います。これからは、お客さまの良きパートナーとなることで、エンジニアとして突き詰められる可能性がありそうですね。

ひが そのとおりです。経験豊富なエンジニアが高く売れる時代になると思います。昔のことも最近のことも知っているというのは強い。新しい技術であっても、すべてが変わっているわけではなく、昔に戻っている部分があるのです。経験が生きるケースが少なくありません。

 これまでは高く売れず、マネージャになるしかなかった経験豊富なエンジニアが、その経験を生かして高く売れるようになっていくと思います。そうなれば、会社はその人にマネージャをやらせなくてもよいわけです。

若い人ほどクラウドをやるべき

―― クラウドについてお聞かせください。昨年までバズワードのような扱いだったものが、今年1年でようやく地に足が着いてきたように思います。SIerに勤めるITエンジニアもクラウドへの取り組みを行っていくべきなのでしょうか。

ひが もしクラウドという言葉が気になっていながら手を付けていない人がいるとしたら、センスがないと思います。失敗するかもしれないけど、やってみないとチャンスはつかめません。ビジネスの場合は「なんでもやってみよう」とはいきませんが、個人であれば、どんどん挑戦してみるべきです。

 仮に勉強した技術がはやらなかったとしても損はしません。そこで得たスキルは必ず生きます。ある技術について、内部まで突き詰めてちゃんと勉強すれば、そこから得るものは大きい。必ずその人を成長させます。

 いまクラウドをやらないのは損です。特に、若い人ほどクラウドをやってほしい。クラウドという言葉自体は以前からありましたが、「ちゃんとビジネスになるかも」といわれ始めたのが2009年で、ビジネスが実際に動き始めるのが2010年だと思います。つまり、クラウドの世界にはまだ歴史がほとんどなく、確立されたものがありません。しかも、みんなスタートラインに立ったばかりで、スキルに差がそれほどありません。だから、若い人にもチャンスがあるのです。

 例えば、RDBMSの世界ではSQL職人のような人がいて、若い人が彼らに勝つのは難しい。経験がものをいうからです。いろいろな案件を経験して、実践の中で培われた技術を持っている人には、若い人はどうしてもかなわない。

 クラウドの世界には積み重ねがありません。年齢や経験に関係なく、全員が同じスタートライン。だから、少しでも早くスタートすればその分、有利になります。早く始めた方が得です。

―― ひがさんはかなり早くから「Google App Engine」での開発を行っていますね。

ひが 人が「そろそろはやるだろうね」と思うころになると、みんなやり始めるんです。だから差別化を図るなら、「はやるだろうね」と思われる前からやっていないといけない。そこは「目利き」が必要な「賭けの世界」でしょう。時間には限りがあるので、何でもやるわけにはいかない。「この技術は来るだろう」と信じたものに賭ける。最初に始めないと勝てません。

2010年、Azureでクラウドへの移行は一気に進む?

―― もうすぐ2010年です。ひがさんは2010年をどんな年にしようと考えていますか。

ひが 多分、ずっとクラウドをやっていると思います。

 今年、クラウドでの開発を始めてしばらくは、「確かに技術的な先進性はあるし、安いし、スケールするアプリケーションが作れる。でも、多くのユーザーがクラウドの技術を使ってビジネスをやっていくのは敷居が高いだろう」と思っていました。

 でも半年以上続けた結果、ビジネスになりそうだという感触がつかめてきました。2010年はクラウドにおける実ビジネスが加速すると思います。

 思っていたよりもクラウドへの移行は早いと思います。きっと、「緩やかに移行するだろう」と誰もが思っているんじゃないでしょうか。意外と急に進むとわたしは思っています。

―― その根拠は。

ひが マイクロソフトの「Windows Azure Platform」が2010年1月1日から正式にサービスを開始します。11月にロサンゼルスで開催された「Professional Developers Conference 2009(PDC 2009)」というマイクロソフトのイベントに行ってきて、そこでAzureについていろいろ話を聞いてきました。

 Azureの環境だと、既存のお客さまが既存のモデルをそのまま移行しやすいんです。.NETで開発してあれば、ほぼ修正せずにAzureに乗ります。移行の敷居が低いんです。

 もちろん、スケールはしません。スケールするためのアプリケーションが必要なら、クラウド向けに書き換えないといけません。でも世の中には、別にスケールしなくてもいいアプリケーションはたくさんあって、安くなるに越したことはないと思っている人はいっぱいいます。そういう人たちがどんどんAzure環境に移行していくのではないでしょうか。

 Google App Engineはスケールするアプリケーションが必要な人向けで、敷居が高いので、一気に普及するとは思いません。でも、既存のユーザーがそのまま置き換えやすいという点で、Azureは一気に利用されるようになるんじゃないかなと予想しています。

■□■

 SIerとエンジニアの未来について、ひが氏の言葉を通じて、少しでもヒントがつかめただろうか。

 不況があり、内製化の流れがあり、そしてクラウドがある。日本のSIerは分岐点に差し掛かっている。何が変わるのかを見極め、今後の行動の指針としてほしい。

 2010年のあなたの「自分戦略」が良きものとなることを願っている。

 

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