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IT業界の冒険者たち

第9回 人生に3回勝負を挑む男

脇英世
2009/5/22

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本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、IT業界を切り開いた117人の先駆者たちの姿を紹介します。普段は触れる機会の少ないIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の冒険者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

ラルフ・アンガーマン(Ralph Ungermann)――
ザイログ、アンガーマン・バス創設者

 IT業界には、謎に包まれた経歴を持つ人物が数多く存在しているが、ラルフ・アンガーマンもそのうちの1人だ。有名な男でありながら不明な点が多い。1942年に南カリフォルニアで生まれたことは分かっているが、正確な出生地や誕生日は明かされていない。文献やインタビューはかなり残されているが、どのような少年時代を過ごしたのか、どのような青年であったのか、知りたいことには手が届かないといったありさまだ。

 記録によると、ラルフ・アンガーマンは、カリフォルニア州立大学バークレー校で通信工学を学んだ後、同大学のアーバイン校でコンピュータアーキテクチャについて学んだという。つまり、サンフランシスコ近郊からロサンゼルスの近郊に移ったわけである。ちなみに英語の原文によると、「卒業」でなく「学んだ」という表現が用いられている。この場合は、必ずしも学位の取得を意味していない。この辺の事実関係は微妙だ。

 大学以降の経歴では、1960年代がすっぽり抜け落ちてしまっている。1970年代初頭には、ウエスタンデジタルに勤めていたという説や、コリンズ・ラジオという無線機の会社に勤めていたという説がある。ウエスタンデジタルは現在でこそハードディスクの生産で有名だが、1970年の創立当初はユーザーからの注文を受けて論理チップをカスタム生産していた。ウエスタンデジタルがハードディスクを手掛けるようになったのは、1988年からのことだ。ラルフ・アンガーマンに、仮にウエスタンデジタルでの職務経験があるとしたら、1970年もしくは1971年ということになる。一方、コリンズ・ラジオはアマチュア無線をかじったことのある人はご存じかと思うが、アマチュア無線機の名門であった。同社は、後にロックウェル・インターナショナルに買収されている。もし、コリンズ・ラジオに勤めていたのが本当であれば、以後の行動は説明しやすくなる。

 これは推測になってしまうが、ともかくラルフ・アンガーマンは青年時代、いろいろなところで、散々苦労した経験があるのだと予想される。そうでなければ、彼の持つ並外れた挑戦性は説明しにくいからだ。

 謎の多い経歴の中、確かな足取りがつかめるのは1971年に入ってからで、この年にはインテルに入社している。当時29歳であったラルフ・アンガーマンは、フェデリコ・ファジンの下、自動販売機に利用されるコイン識別チップを製造する部門に配属された。本人としては、マイクロプロセッサの設計に携わりたかったらしく、この配属は不本意であったようだが、人生何が幸いするか分からない。当時の上役フェデリコ・ファジンは、インテル4004、8080といったマイクロプロセッサの設計開発に参加したことで知られており、ラルフ・アンガーマンを大いに気に入ったようだ。

 ラルフ・アンガーマンは、インテルに勤務しながらサイドビジネスを手掛け、1973年には新品のポルシェを買ったという。インテルでの仕事はさほど責任の重いものを与えられず、ラルフ・アンガーマンは高学歴でなかったために、この会社では偉くはなれないと感じていたらしい。確かにインテルには物理帝国主義的な色彩が見られるが、ラルフ・アンガーマン本人も、あまり感心できる社員とはいえなかったようだ。もっとも、ラルフ・アンガーマンにとって不幸であったのは、1974年にインテル株のストックオプションの権利を行使した際、ありがちなサクセスストーリーとは違って2万ドルの損失を出してしまったことだ。こうしたこともあり、結局はインテルを退社している。

 さらに、ラルフ・アンガーマンとともに会社を創設する約束をしていたフェデリコ・ファジンも、後を追ってインテルを去った。退職するとき、アンドリュー・グローブにはだいぶ脅(おど)かされたらしい。

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の冒険者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

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