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IT業界の冒険者たち

第24回 インターネットで広がったアドベンチャー

脇英世
2009/6/17

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本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、IT業界を切り開いた117人の先駆者たちの姿を紹介します。普段は触れる機会の少ないIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の冒険者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

ウィル・クローサー(Will Crowther)
ドン・ウッズ(Don Woods)――
アドベンチャーゲーム開発者

 インターネットの黎明期について書いたカティー・ハフナーとマシュー・リオンという人の『Where Wizards Stay Up Late』という本を読んだ。この本の中で「アドベンチャー」ゲームを作り出したウィル・クローサーやドン・ウッズの記述に出合った。「アドベンチャー」というゲームについて書くのもいいなと思った。

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 「アドベンチャー」ともなれば、懐かしいスティーブン・レビーの名著『ハッカーズ』(古橋芳恵・松田信子訳、工学社刊)が読みたくなって本棚を探した。翻訳はすぐ見つかったが、英語版のペーパーバックがなかなか見つからない。翻訳には索引が付いていないから危険なのである。索引が付いていないと最初から全部読むしかない。そのうちに原稿を書くことなど忘れて読むこと自体が自己目的化してしまう。わたしは「アドベンチャー」のウィル・クローサーやドン・ウッズについて書かねばならず、心を鬼にして索引を頼りに事実確認に必要なだけの拾い読みをしなければならないのだ。従って索引なしの翻訳は困る。

 「アドベンチャー」はロールプレイングゲーム(RPG)の始祖と呼ばれている。現在のゲームの原型を作ったといってよいだろう。ただしオリジナルの「アドベンチャー」はいまの人にはあまり面白いものではないと思う。昔はゲームにグラフィックスがなかった。だからゲームが始まると英語の文字ばかりが画面に現れる。最初から最後まで英語だけでゲームをさせられることになり、よほど英語に堪能でないとつらい。

 わたしが最初に「アドベンチャー」を見たのは、たぶん1970年代後半たまたま用事で出掛けた南カリフォルニア大学のコンピュータセンターであったと記憶しているが、正直あまり面白いとは思わなかった。字ばかり画面に出てくる変なゲームと思ったものだ。

 例えば当時の様子を伝える『ハッカーズ』によれば、こんな感じである。

 ゲームが始まると、コンピュータの画面には次のように表示される。

 「YOU ARE STANDING AT THE END OF A ROAD BEFORE A SMALL BRICK BUILDING. AROUND YOU IS A FOREST. A SMALL STREAM FLOWS OUT OF THE BUILDING AND DOWN GULLY.(あなたは道路の突き当たりにある小さなれんがの建物の前に立っています。あなたの周りは森です。小さな一筋の水が建物から流れ出して渓谷へと流れ落ちていきます)」

 そこで「GO SOUTH(南へ行きなさい)」と指示すると、コンピュータは次のように答える。

 「YOU ARE IN A VALLEY IN THE FOREST BESIDE STREAM TUMBLING ALONG A ROCKEY BED.(あなたは森の中の渓谷にいます。かたわらの流れは川床の岩に当たって音を立てています)」

 こうして対話型にゲームは進行していく。字ばかりでなく絵が入ればもっと楽なのだがと誰でも思う。実はそれを実行して成功するのがシエラ・オンラインであるが、それはずっと後の話である。

 「アドベンチャー」というゲームの始祖は、1973年TSR社から発表され1974年から市場に出た「ダンジョンズ&ドラゴンズ」である。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」という名前は長すぎるので「D&D」と略すのが普通である。この「D&D」というゲームはJ・R・R・トールキンのファンタジー小説に影響を受けている。

 トールキンは1892年に南アフリカのオレンジ自由市に生まれた。3歳のとき英国に戻り、オックスフォード大学を卒業した。語学に堪能で辞書の編集者、大学の教員などいろいろな仕事に就いたが、彼を最も有名にしたのはファンタジー小説だろう。トールキンは1937年に『Hobbit』(邦題『ホビットの冒険』、岩波書店刊)、1954年に『The Lord of the Rings』(邦題『指輪物語』、評論社刊)を書いた。ホビットとは小人のことである。『Hobbit』は次のような有名な書き出しで始まる散文詩である。

 「In a hole in the ground there lived a hobbit.(大地の穴に小人が住んでいた)」

 『Hobbit』の続編が『The Lord of the Rings』である。一体その後ホビットはどうなったのだという人が多くて、トールキンは続編を3部書いた。

 『Hobbit』は3500万部、『The Lord of the Rings』は2000万部も売れ、ファンタジー小説としては20世紀で最大級の売り上げを記録した。これらの本の表紙やイラストや地図が、ゲームに格好の題材と空想力を提供した。初期のロールプレイングゲームで画面に文字しか出なくとも、ユーザーはトールキンのファンタジー小説の影響を受けて、想像力を働かせてイメージを膨らませていったのである。トールキンや「D&D」の話もつい脱線したくなる面白い話題だ。

本連載は、2002年 ソフトバンク パブリッシング(現ソフトバンク クリエイティブ)刊行の書籍『IT業界の冒険者たち』を、著者である脇英世氏の許可を得て転載しており、内容は当時のものです。

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